
東京都荒川区の保護犬カフェ『わんだん邸 南千住店』でチワワ3匹(時価合計10万円相当)が盗まれたのは、7月3日深夜から翌4日午前にかけてのこと。
チワワ1匹に逃げられて、2匹を盗み直す
泊まり込みのスタッフやボランティアが頻繁に出入りすることなどから、当夜は施錠していなかったという店の通用口から不法侵入。2度にわたって犬を連れ出す手口だった。
「容疑者は酒に酔っていたようです。最初は白いチワワ1匹を盗み、コンビニで買い物中に床に置いたところ逃げられてしまった。そこで、店に戻って今度は黒いチワワ2匹を盗むと、タクシーに乗せて台東区の飲食店へ。従業員らに見せびらかし、座布団をかぶせるなどして遊び、店の外で放置して結局3匹とも逃がしてしまっています」(全国紙社会部記者)
警視庁南千住署が8月13日、窃盗と建造物侵入の疑いで逮捕したのは台東区の無職・鈴木大輔容疑者(46)。
「酔っぱらっていてよく覚えていないが、犬とタクシーに乗った記憶はある」と容疑を認めている。
同店によると、盗まれたのはナウくん(白8歳、オス)と、まろちゃん(黒5歳、メス)、にこちゃん(黒6歳、メス)。ほかに、通用口を開けっぱなしにされたため、同じチワワのてつくん(黒5歳、オス)が逃げ出していた。
保護犬カフェでは、多頭飼育崩壊や虐待などで行き場をなくした犬が、殺処分を避けるため新しい飼い主(里親)を待っている。犯行時には雑種、プードル、ミニチュアシュナウザー、フレンチブルドッグ、ヨークシャーテリアなど約30匹がいたが、スタッフはすぐに4匹がいなくなっていることに気づいた。
「最初は逃げたと思い、盗まれたとは1ミリも想像できませんでした。夜中に酔っぱらいが侵入してゲートを壊し、通用口を閉めずに出ていったため、そこから逃げ出したのだろうと思ったんです。
店内には発泡スチロール製の弁当容器がレタスだけ残して捨てられており、酔っぱらいの食べ残しか、エサとして与えたように思えたのです」(同店の責任者)

店はすぐに“捜索ビラ”を作り、最寄り駅の駅前などで情報提供を呼びかけた。
オレが助け出してやった
「休みのスタッフも出てきて捜索に加わり、ボランティアや常連客も協力してくれました。遠方から駆けつけてくれた里親さんもおり、本当にありがたかったです。車の下などを懐中電灯で照らして捜してくれた人もいました」(同店の責任者)
やがて、4匹とも警察に無事保護されたことがわかり、引き取りに行った。周辺には交通量の多い道路が複数あり、事故に遭わなかったのが幸いだった。てつくんは内出血を起こしていたため病院に連れていき、治療などを経て回復したという。
鈴木容疑者の自宅周辺で聞き込み取材をすると「コンビニの前で何度か見かけた」(60代男性)などの目撃情報があり、共通するのは1人だったということ。
「うちの店には何度か来ており、直近は6月に来ました。いつも深夜0時直前に1人で来店し、すでに酔っていて、カラオケでわりと最近のJポップを歌い、30分くらい飲んで帰るんです。おとなしく飲んでいました」(荒川区内のパブの店主)
盗んだ犬をタクシーで連れていったのは、台東区にあるバーだった。事件当夜、店に居合わせた客が振り返る。
「黒いチワワ2匹を抱っこして店に現れ、お客さんたちから“カワイイ~”と、もてはやされていました。誰も盗んだ犬とは思いませんから、抱っこさせてもらったりして。不思議と犬はおとなしく、容疑者に懐いているようでした。いま振り返ると、午前0時を過ぎていましたから、犬は眠かったのかもしれません」
半袖シャツに牛柄の短パン姿。初対面でもタメ口でなれなれしかった。居合わせた客全員に社名と携帯番号のみを記した名刺を渡し「人材派遣やイベント企画を手がけている」と説明していた。そして、犬について語り始めた。
「“かわいそうな犬だから、オレが助け出してきた”と言い、座布団でくるんで寝かしつけようとしていました。“オレが大事にしてやっからな”と頭をなでたり、理由はわかりませんが“2匹一緒じゃないと絶対にダメなんだ”と話していました」(同・居合わせた客)
盗んだだけでなく“大事に”どころか結局、逃がして危険な目に遭わせたのだから言行不一致も甚だしい。

一方、保護犬カフェは二度と同じことが起こらないよう暗証番号と指紋認証のカギをつけ、防犯カメラを設置した。
クソ犬しかいねぇじゃねーか
犯行の8~9日後の昼間、鈴木容疑者らしきよく似た男が店に姿を見せた。
「店内に入るそぶりはなく、外で窓ガラス越しに犬をのぞきながらずっとタバコを吸っているんです。目が合うと“クソ犬しかいねぇじゃねーか”と吐き捨てました。片手に缶チューハイかなんかを持って、酔っているようでした。やがて道路の真ん中に出て寝てしまい、警察官がどんどん増えて最後は10人くらいに囲まれて連れていかれました」(前出の責任者、以下同)
逮捕後、容疑者から弁護士を通じて同店に示談の申し入れがあったというが「お金の問題ではないのでお断りしました」と言う。
「犯人を許せない気持ちです。犬は訳がわからず外に出され、知らない場所に連れていかれて怖かったはずです」
唯一の救いは事件後、まろちゃんの里親が見つかり、新しい家族と暮らし始めたということ。犯罪行為は言語道断、責任感なき容疑者に動物を飼う資格はない。