集団暴行事件が取り沙汰されている広陵高校野球部(部の公式インスタグラムより)

「自分はサッカーでしたけど、今回のような部内での“いじめ”は、野球の広陵高校だけの問題なんかじゃなく、言ってしまえば全国どこでもある話だと思います。特に強豪校といわれる高校で」

 そう話すのは、全国大会常連校サッカー部のOBだ。

カップ麺を食べたことで暴行

広陵は甲子園を途中辞退(公式インスタグラムより)

 夏の甲子園に出場した広島県の広陵高校野球部の問題が日々、取り沙汰されている。

「当時、1年生だった部員が、寮で禁止されていたカップ麺を食べたことから、上級生に暴行され、被害者となった1年生部員の親がSNSで告発。身体的な暴行だけでなく、金銭の要求もあったそうです」(スポーツ紙記者)

 告発が拡散され、事態が表面化。別の広陵高校OBも『週刊文春』で告発。その被害者によれば、先輩部員による暴行で右半身麻痺の診断を受けたという。

「広陵高校は今回の件を受けて、甲子園の出場を途中で辞退しましたが、甲子園よりひと足早く開催されたサッカーのインターハイには熊本県代表として大津高校が出場。準優勝という結果となりましたが、そんな同校では広陵とほぼほぼ同じ事件が起こっています」(サッカー部OB)

今年のインハイ準優勝の大津高校サッカー部。同校元部員はいじめ問題で裁判中(公式Xより)

 '22年1月、大津高校サッカー部の1年生は、“先輩にあだ名をつけた”として先輩部員に呼びつけられ、“全裸で土下座”を強要されたという。被害者は上級生に対し、精神的損害から転校を余儀なくされたとして損害賠償を求める訴えを起こした。この裁判は現在、係争中である(被告は「強要していない」、原告は「日常的なしごきがあった」と主張)。

「大津高校は全国優勝の経験こそないものの屈指の強豪校。部員数は200人を超えます。全校の男子生徒の半数ほどがサッカー部という環境。もちろん今いる部員に何か罪があるわけではないですが」(サッカー部OB)

 広陵高校の問題は、野球部だけでなく、予定していたオープンスクールが中止となるなど、全校的な問題となり、学校存続の危機とすらいわれている。

「野球部は、とりわけ歴史のある強豪校は特に監督の権力が異常だと思います」

 そう話すのは、自身は甲子園への出場経験はないが、強豪と呼ばれる野球部のOB。

「サッカーは時代が進んでいるように見えますが、野球はまだ“昭和”が残っているというか。監督、OB、応援している地域の人ですら、“ある程度のしごきは必要でしょ”と思っている節がある。

 表には出てこないですが、監督や部長が“部の運営”という名目で地元の企業やOBから金銭的な支援を受けたりしているのは出身校だけでなくちらほら聞く話です。もう小さな独裁国家みたいなもの。部員や親は監督に逆らえない」(野球部OB)

「自分の下の世代に全国大会で活躍して高校選抜に入るような選手がいましたが、コーチに死ぬほど詰められるのを苦に途中退部しました。有望だったのに。ちなみに総監督は不祥事で一度部を離れたけど、カムバックした人です。広陵も学校ぐるみで……とか言われていますが、強豪校って“そういうところ”なんです」(サッカー部OB)

 野球部もサッカー部もOBはいじめる上級生の“共通点”を次のように話す。

「いじめをする先輩は3軍とか、レギュラーじゃない人がするイメージ」(野球部OB)

「サッカーは強豪校であれば、トップチームだけでなく、Bチーム、Cチーム、大所帯ならその下でも公式戦がありますが、変なしごきをするような人はCチーム以下。もう上に上がれないことがわかってて、やることが下をいじめることくらいなのか……」(サッカー部OB)

 実力の世界なので、下級生がレギュラー選手として“上”に立つこともあるが、それによりヒエラルキーと実力の逆転が起こる。

「能力がなくて試合に出られないけど、威厳を保ちたいのか下級生に対して、より高圧的になる。部の悪しき伝統としていじめが“日常”になっているようなところはレギュラーでも下をいじめたりしますが」(野球部OB)

かつてしごかれた側上になり下をしごく

 強豪校であればたいていは部員数の多い大所帯。

「寮生活のところも多いですが、そのチームワークを高める共同生活という閉鎖的空間もいじめの温床だと思います。“逃げ場”がないので。かといって指導者側が助けてくれるかといえば、今回の広陵のように“おまえのせいで表沙汰になるのか”と逆に詰められたりする」(野球部OB)

 かつてしごかれた下級生がしごく側に回ることも。

「“自分がやられたから”という意識があるやつは少なくない。そんなことをしてるから試合に出られないんだよと思いますが、それを止めなかった自分にも罪はあると思います。ただ当時は自分のことだけで日々必死で、下級生を助ける余裕なんてありませんでした」(サッカー部OB)

 野球でもサッカーでも、理不尽なしごき、犯罪といえるような暴行を受けた者が、後にプロになっている。元野球選手の金本知憲は広陵OBだが、野球部時代に受けた暴行を自著で綴っている。

「最近は引退した選手が自身のユーチューブなどで当時先輩から受けたしごきについて、わりと面白おかしく取り上げるのも少々問題だといつも思っています。もちろん“当時の話ですよ!”“今は絶対ダメ!”と断りを入れていますが、そんな笑い話的に語るようなことなのか……。“あのときがあるから今がある”的な感じで、それは走りのメニューだったりキツい練習に対して言っているのかもしれませんが、それと先輩によるしごきを同列のように話したり。“ご指導”だとかごまかすような表現で」(サッカー部OB)

 しかし、生徒側にも問題があることも両者は触れる。

「強豪校に来るような選手は、小さいころからサッカーしかしてきていない。それも地域で“天才”といわれ、調子に乗っているやつも多い。全然しつけられて育っていないので、指導者側も大変だろうと思う部分もあります。

 サッカーしかできない身勝手なアホなんです。自分が出身だからあえて言いますが、強豪校のスポーツ部員ってたいてい学力が低い。学校自体は私立が多く特進クラスがあったりしますが。まぁスポーツ推薦で入るやつらは基本的に……」(サッカー部OB)

「強豪校の監督は“人間性も指導する”みたいなことを言う人がわりと多いですが、具体性がない。表面的に挨拶と整列をちゃんとさせるくらいで、人間性とかおかしくないですか? まぁそれすらちゃんとしていない野性児みたいな部員も多いですが」(野球部OB)

 強豪校には部の歴史が長い学校が多い。変化はしづらく、メスも入りづらいだろう。彼らが何より求めるのは“強さ”であり、強豪校ゆえそれはある種、達成されているために……。