Before/リバウンド時代とAfter/現在の松田リエ先生

 年齢を重ねるごとに増えていく体重と脂肪。お腹の肉をつまんでため息をつきながらも、運動する時間はないし、食べるのもガマンできない! 何よりちょっとやそっとの努力ではもう痩せない。そんなダイエット難民の救世主として今注目を集めているのが“食べ痩せ専門家”の松田リエ先生(39)。

脂肪肝が改善するなど健康面の改善も

ぽっちゃり体形がコンプレックスで小学校5年生から便秘ぎみ。ダイエットとリバウンドを繰り返してきた筋金入りのダイエッターでした。10代、20代のころは食べることに癒しを求めていましたね

 コーヒーショップでは生クリーム盛り盛りのドリンクを飲み、家には冷凍食品のカルボナーラを常にストック。

「朝はコンビニスイーツが定番。食べないダイエットやエステでは痩せず、アトピーや便秘の悩みも。食事を変えたらスルッと痩せて肌質もお通じも改善。驚きました!」(50代・目黒さん)

 看護師の職に就いてからは高額なエステやサプリを試したものの、痩せることなく髪や肌はボロボロで、いつもイライラ……。気がつけば身長153センチに対して体重は53キロになっていた。

 転機は予防医療専門の保健師に転職したことだった。

多くの人の食事指導を始めて身体と栄養の知識を深める中で、たどり着いたのが“3食しっかり食べるダイエット”でした。痩せたいのに食べるなんて不思議に思うかもしれませんが、1年間で体重が12キロ減って体脂肪率は10%落ちました。その後、2度の出産を経た現在まで10年以上理想の体形を維持しています」(松田先生、以下同)

 妊娠中に体重が10キロ増えたときも産後20日で9キロ減らして洋服を5号サイズに戻し、産後脱毛や肌の荒れ、くすみとも無縁だったというから驚く。

でも子育てと家事、仕事を両立しながら毎日ごはんを作るのは大変だと実感しました。私自身、キッチンに平均10分立っているのがやっと(苦笑)。忙しくても料理が苦手でも続けられる食事で、ダイエットと健康をキープしたいと思うようになりました

 こうした実体験から松田先生は、すぐ作れて、すぐ身につく食習慣“瞬食”を考案。効率的に痩せるためのたんぱく質とビタミンB群を組み合わせた時短・簡単・ずぼらレシピを数多く発信し、4000人以上をダイエット成功に導いてきた。

身体が栄養で満たされると脂肪が燃えやすくなって、食欲をコントロールできるようになり、自然と痩せてメンタルも安定します。それと同時に髪の毛が増える、シミが消えるなどの美容面、血圧が正常値になる、脂肪肝が改善するなど健康面の改善も期待できます

 運動も食事制限もなしで一生太らない痩せ体質になれる食事法は、ストレスフリーで何歳からでも始められる。痩せる仕組み、最強痩せ食材、身体と心を満たすレシピを詳しく解説!

筋肉量があれば基礎代謝も向上して脂肪が燃えやすい身体に

 ちょっと食べすぎても簡単に体重を戻せたころに比べ、大して食べていないのにどんどん太っていく摩訶不思議。そんな年齢に伴う体質変化はなぜ起こるのか。

原因は、女性特有の“痩せホルモンであるエストロゲン”の減少です。脂肪をため込みやすくなるほか、筋肉量が減って脂肪が燃焼しにくくなり、加齢とともに太りやすくなってしまうのです

代謝の割合

 エストロゲンは、脂肪の燃焼を促して内臓脂肪がつくのを防いでくれる。しかし、更年期に入ると、急激に分泌量が減るため、身体に脂肪を蓄積しやすくなる。同時に、食後の血糖値を下げるインスリンの働きを助ける作用も弱まるため、余った糖が体脂肪となり、増えていく要因に……。

さらに女性は30歳を過ぎると1年で1%ずつ筋肉が減っていくといわれていて、筋肉量が減ると“基礎代謝”も低下します。体温維持や呼吸などで自然に消費され、1日に消費するエネルギー全体の約60%を占める基礎代謝量。これが落ちるということは、脂肪がなかなか燃えずに居座ってしまうイメージです

 基礎代謝がダメなら、運動でカロリーを消費するのはどうだろう。痩せるためなら、ランニングやジムで思いっきり汗を流せば脂肪も一気に落とせそうだが。

「食事の量を減らしたら抜け毛、肌荒れ、便秘になり、体重は停滞。しっかり食べることを実践したら、3か月で5キロ減ってミセスコンテストの大会にも出場できました」(40代・遠藤さん)

身体を動かすことで消費されるエネルギーは約30%、しかも運動で消費される量はさらに少ないんです。私も苦手な運動でダイエットしようとしましたが、一時的に体重が減っても汗で水分が抜けただけ。頑張ったごほうびに中華まんを食べて血糖値を急上昇させては、興奮状態になって食欲が加速。ハイカロリーなものを食べて栄養不足で太る、また運動する、食べる……を繰り返したことがあります

 苦しい運動で痩せないなんて、ストレスがたまるばかりの苦行でしかない。そこで人生中盤からの体重増と非効率なダイエットから抜け出すため、意識したいのが筋肉をキープする“貯筋”だという。

筋肉の材料になるたんぱく質をしっかりとって筋肉量を維持することが鉄則。女性は男性に比べて筋肉がつきにくいので、運動よりも食事からアプローチしましょう。筋肉量があれば、食後の体温が上がりやすくなりますし、基礎代謝も向上して脂肪が燃えやすい身体に変わります

 食事の後は自然と身体が熱くなる。これは体内で栄養素の消化吸収や代謝が行われる際に熱を生み出すためだ。消化器官や内臓が活発に活動することで、エネルギーが消費される。

流行しているからと飛びつくのは危険

 この現象は食事誘発性熱産生といわれ、1日に消費するエネルギーの約10%を占める。産生量を増やすには糖質や脂質よりもたんぱく質の量を増やすのが効果的で、筋肉量が多いほうが有利。

たんぱく質の必要量

「筋肉を維持するために意識すべきは1日3食に分けてたんぱく質をとること! 一度に代謝できるたんぱく質の量には限界があり、とりすぎると体脂肪として蓄積され、脂質過多にもつながります。1回に食べる量は“手のひらサイズ(片手)”を目安にすればOK。食事時間が6時間以上空くと筋肉の分解が始まるので、おやつにチーズや豆乳を取り入れるのもおすすめです

 松田先生に寄せられるお悩みで最近特に多いのが“糖質制限でメンタルが不安定になった、断食系ダイエットの反動で食欲が暴走した、カロリー制限で髪も肌もパッサパサになった”など、痩せる効果よりも、心身に不調を来たすものだという。

適正体重を目指したり、痩せておしゃれを楽しみたかったり、ダイエットの目的はさまざまだと思いますが、方法を間違えると健康に害を及ぼします。身体の仕組みを理解せず、流行しているからと飛びつくのは危険です

「43歳で出産後、体重が63.4キロまで増量。重度の脂肪肝になりジムやヨガを試しても痩せなくて。この食事法に変えたら体重がストンと減って脂肪肝も治りました!」(60代・田中さん)

 3大栄養素(たんぱく質・脂質・糖質)のひとつであり、生きていく上で必要不可欠なエネルギー源になる糖質を減らすダイエットは、リバウンドを招きやすいという。

もともとは糖尿病患者さんの血糖値を管理するための食事法でしたが、糖質を極端にカットすれば痩せると思っている人が多いです。やみくもに糖質を減らすと筋肉が分解されるので、基礎代謝の低下から太りやすさにつながり、低血糖で頭痛、イライラ、思考力の低下を感じることも。糖質制限を急にやめると、身体が飢餓状態から回復しようと糖質を過剰に吸収してリバウンドもしやすくなります

 糖質イコール炭水化物だと思ってお米を控えすぎるのは逆効果。おすすめは雑穀米で、ビタミンや食物繊維などの栄養素を多く含むため、血糖値を上昇させにくい。1回の食事で握りこぶしひとつ分(80~100グラム)が適量の目安になる。

 16時間、何も食べずに空腹状態をつくることで痩せる、アンチエイジング効果が期待できるというダイエット。最大のデメリットは筋肉が落ちることだ。

「たんぱく質は食べだめができないので、空腹が続くとどんどん筋肉が分解されていきます。筋肉が減って基礎代謝が落ちることで痩せにくくなり、たるんで老けて見えることも。一度の食事量が増える分、胃腸に負担がかかりますし、食べていい8時間で必要な栄養素を補わないと代謝や吸収、免疫力も低下します

 摂取カロリーを消費カロリーより抑えるダイエット。外食や惣菜、お弁当を買うとき、総カロリー数の表示を見て、選ぶ人も多いのでは?

そもそも正確にカロリー計算するのは至難の業。カロリーをとりすぎなければ痩せるのは事実ですが、脂肪ではなく筋肉を減らす失敗に陥りがち。低カロリーにしようと肉や魚を避ければ、筋肉はもちろん、同じくたんぱく質を原料とする肌や髪もつくれません

 ダイエットの理想は、筋肉を落とさずに体重を減らして美しく健康になること。それには“たんぱく質とビタミンB群”が最強の組み合わせになる。

筋肉量の維持にはたんぱく質、代謝アップにはビタミンB群が活躍します。3大栄養素の“たんぱく質・糖質・脂質”には身体をつくる、動かすといった役割がありますが、代謝が滞るとカロリーが余って体脂肪に変わってしまいます。そこで頼りになるのがビタミンB群。たんぱく質はビタミンB6、糖質はビタミンB1、脂質はビタミンB2を一緒にとることでそれぞれの代謝がスムーズに進みます

 ビタミンB群は水に溶けやすく、一度にたくさん摂取しても不要な分は尿で排泄されてしまう。体内にためておけないため、たんぱく質と同様に、毎食コンスタントに取り入れるのがポイントだ。

基礎代謝量が自然と上がる

特定の栄養素やカロリーを過度に減らすより、しっかり食べることで誰でも、何歳からでも、痩せ体質に変われます。人間の身体は約37兆個の細胞の集合体。栄養が行きわたれば、それぞれの細胞が活発に働き、基礎代謝量が自然と上がるのです

「家族が好む炭水化物や揚げものばかりの食事で洋服は17号サイズ、薬も飲んでいましたが、食事改善だけで体重が大幅ダウン。脂肪肝が改善し、血糖値も正常になりました!」(60代・丸山さん)

 筋肉維持の相棒になるたんぱく質は、肉、魚、大豆製品などからとれるが、いちばんダイエットに適しているのが鶏肉。理由は大きく3つある。

「まず、肉類はたんぱく質を構成するアミノ酸のうち、必須アミノ酸(ヒトの身体の中で合成できないアミノ酸)がバランスよく含まれている“良質なたんぱく質”であり、中でも鶏肉は豚肉や牛肉に比べて炭水化物が少ない特徴があります。

 なおかつ、ビタミンB6、B1やB2など数多くのビタミンB群を含むので、効率的にカロリーをエネルギーに変換してくれるのです

 2大痩せ栄養素が一度にとれるとは、まさにダイエット最強食材! さらにビタミンB群が豊富な野菜も加えると、より減量に拍車をかけられる。

次に、高たんぱく&低脂肪な部位が多いのも大きなメリットです。鶏肉には筋肉の材料になるたんぱく質が豊富で、筋肉の分解を抑制する、筋肉の合成を促すといった働きを持つBCAA(分岐鎖アミノ酸)が含まれています

 脂質をとりすぎることなく、筋肉の維持や筋肉量を増やす頼もしい味方になってくれるというわけ。

そして、価格の面でも優等生です。育ち盛りのお子さんがいるご家庭でも、食べ応えをキープしながら普段の食事に取り入れられます

 ほかにも牛肉や豚肉に比べて低脂質な部位が多く胃腸の負担を軽減できることから、赤身肉の食べすぎによるがんや病気のリスクを下げられる利点がある。

 ダイエット向きの鶏肉で思い浮かぶのはむね肉やささみなど、あっさりした部位に偏りがち。そこで注目してほしいのが部位ごとに違う味や栄養の特徴だ。疲労回復、骨の強化など部位によって有効な成分があるので、目的に合わせて選ぶのが◎。

 脂肪が少なく臭みが少ない。淡泊な味わいながらイノシン酸やグルタミン酸などのうまみ成分が豊富。疲労回復効果や活性酸素を抑えるイミダペプチドが最も多く含まれる部位なので、運動後のリカバリー、アンチエイジングに役立つ。

 やわらかくさっぱりとした味。糖質の代謝に関わるビタミンB1、糖質・脂質・たんぱく質の代謝を助けるビタミンB2、皮膚や粘膜の健康を維持するナイアシンが多く含まれている。低脂質、高たんぱくで消化に負担をかけたくない夕食に取り入れるとよい。

 うまみが強く、しっかりとした噛み応えがある。抗酸化作用や免疫細胞の機能を高める働きを持つセレン、赤血球の材料になる鉄を多く含む。皮をはぐことで100グラムあたり約100キロカロリー減らすことができ、脂質も大幅に抑えられる。活動量の多い昼食向き。

 皮にゼラチン質が多く含まれ、濃厚なうまみがある。骨の材料になるカルシウムが豊富で、酢を組み合わせると吸収しやすく、酸の力で肉がやわらかくなる。骨を丈夫にするビタミンK、免疫細胞の働きを活性化する亜鉛なども含まれている。

 程よい弾力があり、適度な脂肪でうまみもある。手羽先よりたんぱく質が多く、脂質は少ない。コラーゲンの効果を発揮するにはビタミンCが不可欠で一緒にとると吸収率がアップする。代謝をサポートするビタミンB6は水溶性のため、煮込んで汁ごと摂取するのがベター。

 店頭に並ぶひき肉は、もも肉またはむね肉をひいたもの。よりカロリーを抑えたい場合は、鶏むね肉と表記されたものを選ぶのがおすすめ。

「それぞれのうまみを生かすと料理のバリエーションが広がり、飽きずにおいしく続けられます。鶏肉はお子さんやシニアでも食べやすいので、ダイエット中だからと自分だけ別の料理を作る手間も不要。

 同じメニューを食べるうちに、娘さんのニキビが改善したり、家族の花粉症が治ったなんて声も届いています。ダイエットに悩んできた人こそ、痩せ体質と健康を叶える食事を始めてほしいです

 食べ痩せ専門家・松田リエ先生イチオシ! “鶏肉”を使ったレシピを新刊『ずぼらやせ12kg!鶏たんぱくダイエット200』より3品ご紹介します。ダイエット感覚ゼロのボリュームと満足感を味わってみて♪

今日から取り入れたい鶏たんぱくレシピ

血糖値を上げにくい“はちみつ”を活用コク深い甘辛味が、ご飯にぴったり

刺さない焼き鳥 

刺さない焼き鳥

材料(2人分) 主菜

鶏もも肉 ……………… 200g
長ねぎ …………………… 1本
米油 ………………… 小さじ1
塩、こしょう ………… 各少々
  しょうゆ ……… 大さじ1
  みりん ………… 小さじ2
  酒 ……………… 小さじ1
  はちみつ …… 小さじ1/2

1・長ねぎは長さ3cm程度に切り、鶏肉はひと口大に切って塩、こしょうをふる。
2・フライパンに米油を弱めの中火で熱し、鶏肉の皮目を下にして4~5分ほど焼く。焼き色がついたら裏返して隙間に長ねぎを並べ、長ねぎ全体に軽く焼き色がつくまで4分ほど焼く。
3・Aを加えて、からめながら炒め合わせる。

血液サラサラ&血行を促すピーマンのピラジン、ワタや種も丸ごと食べて栄養を逃さない

鶏肉のレンチン甘酢炒め

鶏肉のレンチン甘酢炒め

材料(2人分) 主菜

鶏むね肉 …………………… 150g
ミニトマト …………………… 5個
ピーマン ……………………… 1個
ごま油 …………………… 小さじ2
  酢、しょうゆ …… 各大さじ2
  みりん ……………… 大さじ1
  片栗粉 ……………… 小さじ1
  こしょう ………………… 少々

1・ピーマンはひと口大の乱切り、ミニトマトは半分に切る。鶏肉はひと口大のそぎ切りにする。
2・耐熱容器に鶏肉を入れてAをよくもみ込み、ふんわりとラップをして電子レンジ(600W)で2分30秒加熱する。
3・取り出してピーマン、ミニトマト、ごま油を加えてサッと混ぜ、ラップをしてさらに電子レンジで2分加熱する。

小麦粉の代わりにおからパウダーをチョイス低糖質&不足しがちな食物繊維がとれる♪

手羽先のカレー焼き

手羽先のカレー焼き

材料(2人分) 主菜

鶏手羽先 ……………………… 4本
米油 ……………………… 大さじ1
  酒 …………………… 大さじ1
  しょうゆ ………… 大さじ1/2
  おからパウダー …… 大さじ1
  カレー粉 ………… 大さじ1/2
  塩、こしょう ………… 各少々


1・手羽先にAをもみ込む。食品用ポリ袋にBを入れて振り混ぜ、手羽先を加えてよくもみ込む。
2・フライパンに米油を中火で熱して手羽先の皮目を下にして焼く。焼き色がついたら裏返し、ふたをしてごく弱火で10分焼く。
3・ふたを取ってもう一度手羽先を裏返し、水けがなくなるまで2分ほど焼く。

『ずぼらやせ12kg!鶏たんぱくダイエット200』(主婦と生活社)

『ずぼらやせ12kg!鶏たんぱくダイエット200』(主婦と生活社)

最強痩せ食材・鶏肉が主役のダイエットレシピ集。献立の悩みを解消する部位別レシピで飽きることなく、家族全員同じメニューだからラクチン♪

松田リエ先生 看護師・保健師・ダイエット講師。Belle Lus株式会社代表取締役。Belle Life Style協会代表理事。1986年生まれ。食事改善だけで痩せた経験を生かし、食べ痩せダイエット専門講師として起業。著書『ずぼらやせ!瞬食ダイエット つくりおき&スピード10分おかず152』(主婦と生活社)が大好評を博し続編も刊行。SNS総フォロワー数約70万人超。