老けを遠ざける究極の美肌みそ汁

 夏にたっぷり浴びた紫外線の影響が、じわじわと現れ始めるこの時季。ゴワつきやくすみなど、肌の不調が目立ち、そんな変化に「老けたかも……」と感じる人も少なくないはず。

 そんな抗(あらがえ)えない“老い”のスピードは、日々の食事によって遅らせることができるのだという。

見た目年齢は毎日の食事で変わる

「同じ年齢でも老け方に差が出るのは、食事の影響が大きいからです。運動や睡眠ももちろん大切ですが、近年の研究でも、毎日の食事がエイジングに与える影響は特に注目されています」

 そう話すのは、消化器内科医で美腸・美肌評論家の工藤あき先生。

「食事で老化を巻き戻すことは難しいですが、これからの老化のスピードを遅くすることは可能です。毎日30分以上運動をしてと言われるとハードルが高いですが、食事は毎日のことですので、自分でコントロールしやすいという利点もあります」(工藤先生、以下同)

 そんな工藤先生が、日頃から肌の健康を意識して取り入れているのが“飲む美容液”と語る“美肌みそ汁”

「胃や腸の調子が悪いと、どれだけ肌によい食事をしても栄養が吸収されにくい。だからこそ、腸活食材を日々の食事に取り入れて、胃腸の調子を整えておくことが何より大切。

 みそ汁は、ベースとなるみそが発酵食品で、腸内の善玉菌のエサになったり、肌の調子を整える乳酸菌も含まれていたりと、腸活にぴったり。そこに、肌悩みに応じた具材を入れれば、それだけでスペシャルケアに。忙しい毎日でも無理なく続けられる食事美容が、みそ汁なのです」

老けを遠ざける究極の美肌みそ汁

 気になるみそ汁の全容を紹介する前に、肌の老化に大きく関連する「酸化」「糖化」「胃腸の不調」についてまず知っておきたい。

「酸化とは、簡単にいうと“錆(さび)”のこと。呼吸で取り込んだ酸素の一部は、体内で活性酸素になりますが、これが過剰に発生すると細胞が酸化し、身体を錆びつかせてシワや肌のハリを失う原因になるのです

 喫煙や飲酒、過度な運動は酸化を加速させるので避けたほうがよい。

「次に身体の“焦げ”といわれる糖化。体内でエネルギーに変換できる以上の余分な糖が体内のタンパク質と結びついてAGEsという老化物質に変わることで、肌の黄ぐすみやたるみを招きます。

 このAGEsは、身体の酸化を防ぐ酵素の働きも邪魔するので、糖化すればするほど酸化も増進するという嫌な相乗効果もあるのです」

 酸化も糖化も見た目に加えて身体全体の老化も早め、糖尿病などの生活習慣病の原因にもなる。

 3つ目は、前述した「胃腸の調子」だ。

「便秘などで腸内環境が整っていない人や、胃もたれや胃の痛みが起こりやすい人は、肌の調子も崩れがち。食事でとった栄養をうまく吸収できず、肌のターンオーバーの乱れにもつながります

 また、夏の終わりは、冷たいもののとりすぎや夏バテによる内臓疲れが出やすく、胃腸が丈夫だと思っている人でも要注意だ。

美肌みそ汁習慣で栄養もチャージ!

 肌老化のカギを握る問題がわかったところで、次はそれらを解消する食事について教えてもらった。

「酸化反応をやわらげるには、抗酸化作用の強い食品がおすすめ。特に強力なのはポリフェノールで、ブルーベリーや緑茶など多様な食品に含まれます。色の鮮やかな緑黄色野菜や、ビタミンEが豊富なナッツ類、鮭に含まれるアスタキサンチンなどにも強い抗酸化作用があります」

 ポリフェノールは体内にためておけないので、こまめにとるのが鉄則。

 次に糖化の予防には、さまざまな方法がある。

「まず、糖質や炭水化物をとりすぎないこと。そして、糖化が起こりやすいのは食後1時間といわれるので、そば、玄米、全粒粉のパンやパスタ、葉物野菜、りんごなど、食後血糖値が上がりにくい『低GI値』の食品を選ぶことも有効。

 さらに、ブロッコリースプラウトとレモンは糖化度を下げる食品なので、みそ汁はもちろん、サラダのトッピングに使うなど、上手に取り入れるといいですよ」

 また、調理法にも老けの原因が潜んでいるそう。

「揚げる、焼くといった高温での調理はAGEsが発生しやすくなります。なので、生で食べたり、蒸す、ゆでるといったAGEsが発生しにくい調理を意識してみるのもいいですね」

肌の全体的な不調に効く「美肌みそ汁」

 とはいえ、完璧な食生活を送るのはハードルが高い。

中高年の患者さんを診ていると、食事を簡単にすませてしまい、栄養が不足している方が多い印象です。酸化や糖化を防ぐための食材はもちろん、そもそも胃腸を元気に保つための基本的な栄養さえ足りていない。その結果、見た目年齢にも大きな差が出てしまうんです

 そんな中、先生自身が実践しているみそ汁習慣なら、手間をかけずに栄養を補えるうえ、ムリなく続けられそう。

「みそは腸内細菌を元気にする優秀な腸活食材ですが、原料に含まれる米麹には、セラミドを増やして水分量をアップする美肌効果もあります。

 みそ汁にすれば、どんな具材とも合わせやすく、肉や魚のタンパク質もとれて野菜不足も解消でき、肌のターンオーバーに必要なビタミンやミネラルも補いやすいのです。水に溶けやすい水溶性の栄養素も汁ごと飲めるので、栄養をムダなくとれます」

 ポイントは、毎日継続すること。

「私は毎日1~2回は飲んでいます。腸内環境は非常に繊細なため、腸活をやめるとすぐ元に戻ってしまうといわれているのでコツコツ続けることが大切です」

 肌の不調は身体の状態を知る重要なサイン。肌悩み別のおすすめ具材は、上記を参考にしてほしい。

「肌を玄関口にして身体の中から元気になると、見た目年齢にも良い影響が出てきます。毎日の習慣に、ぜひみそ汁を取り入れてくださいね」

美肌みそ汁のキホンとお悩み別具材

「みそは添加物を避けた、大豆、米、塩、麹菌のみを使っているシンプルな原材料のものを使っています。だしは、一からとるのはめんどうなので、だしパックを使って時短に。具材の栄養が溶け出た汁は、最強の飲む美容液です」(工藤先生、以下同)

・肌の全体的な不調

 美肌の基本は「腸活」。なんとなく肌の調子が悪いというときは、善玉菌のエサになる食物繊維が豊富な食材をとるのが○。先生がおすすめするのは水溶性食物繊維が豊富なわかめときのこの組み合わせ。

・紫外線ダメージ

 紫外線による肌の酸化には抗酸化作用のある食材を。ビタミンEよりすぐれた抗酸化作用がある鮭やカルシウム豊富な小松菜もおすすめ。飲む日焼け止めといわれるリコピンを含むトマトは加熱するとより効果的。

・シワ、肌の乾燥

 乾燥には肌の水分量を上げることが大事。水分を守るにはEPAやDHAなどの良質な脂を含むイワシやサバの水煮缶が最適。夏は冷や汁にしても。豆乳やこんにゃくのセラミドも肌の乾燥予防に。

・肌の弾力やハリ

 肌のハリの原料となるコラーゲンをとるのがベスト。手羽元や手羽先などの骨付きの鶏肉がぴったり。「酢を少量入れると骨からコラーゲンやカルシウムが溶けだし、効率よく栄養を摂取できます」

工藤あき先生●消化器内科医、美腸・美肌評論家。一般内科医として地域医療に貢献しつつ、腸活や菌活を生かした美肌やエイジングケア治療にも力を注ぐ。美肌ぶりから「むき卵肌ドクター」とも呼ばれ、各種メディアでも幅広く活躍。

教えてくれたのは……工藤あき先生●消化器内科医、美腸・美肌評論家。一般内科医として地域医療に貢献しつつ、腸活や菌活を生かした美肌やエイジングケア治療にも力を注ぐ。美肌ぶりから「むき卵肌ドクター」とも呼ばれ、各種メディアでも幅広く活躍。


取材・文/荒木睦美