松田聖子

 1980年にデビューしてから45年、常に芸能界のトップを走り続けてきた歌手・松田聖子。老若男女、広い世代から支持を受け、今も彼女はステージに立ち続けている。そこで今回、全国の40代~70代の男女、300人にアンケートを実施。「あなたが最も好きな松田聖子のシングル曲」を調査、ランキングした。

45周年ツアー中の松田聖子

聖子としては初めての本格的な失恋ソングだった『瞳はダイアモンド』

「納得できる結果ですね。今年、聖子さんは45周年でちょうどツアー中ですけど、周年のアニバーサリーなので、初めてコンサートに行かれる方もかなり多いみたいです。そういう人たちからすると、この曲を歌われたらたまらない“宝物”のような曲たちが並んでいますね」

 こう語るのは松田聖子のものまねタレントとして人気の、まねだ聖子。自身も大ファンだと公言する彼女とともに、ランキングを見ていこう。

 まずは10位。『チェリーブラッサム』と『瞳はダイアモンド』が5票でランクイン。『チェリーブラッサム』には、

「《何もかもめざめてく新しい私》という歌詞が印象的」(大阪府・女性・49歳)

「歌唱力はもちろん、メロディーに惹かれます」(東京都・女性・60歳)

 という声が。

「'82年からの聖子さんは、いわゆる“聖子ちゃんカット”からショートカットに髪形が変わった時期。『チェリーブラッサム』はまだ“聖子ちゃんカット”で、男性人気のほうが高かった時期ですね。ショートカットになってから、女性人気も上がってきて、聖子さんは'85年までの間で、ショートカットでも4パターンくらい変わっているんです。

 その中でも『瞳はダイアモンド』のときが、私たちファンの中で超人気の髪形でした。ランクインした曲の中で、私個人としてならこの曲を1位に推します。私のステージでも、お客様からのリクエストで必ず入りますね」(まねだ)

 5位までは1票差で誰もが知っている曲が続く。6票で7位に並んだのは『白いパラソル』『夏の扉』『Rock'n Rouge』の3曲。『白いパラソル』に対して、

「青春時代が鮮やかに甦る。何より声が素晴らしい」(東京都・男性・59歳)

『夏の扉』については、

「歌がうまいのはもちろん、若いころテレビでこの曲を聴いては口ずさんでいた」(神奈川県・女性・60歳)

『Rock'n Rouge』には、

「気分を上げてくれる曲。声や歌唱の聴き心地がいい」(北海道・男性・58歳)

 といった声が届いた。そして6位には『渚のバルコニー』が7票でランクイン。

「元気はつらつな曲調が、当時の聖子ちゃんにマッチしていた」(東京都・男性・61歳)

 作詞をした松本隆は「馬鹿ね」という歌詞を聖子に歌わせることでクレームが来るかと思ったというが、聖子がやわらかく間延びした感じで歌ったことでファンに受け入れられたと思った、というエピソードがある。

5位は手でウィンク

天使と、恋に悩む女性の2つの視点で歌われている『天使のウィンク』

 そして5位は、8票を獲得した『天使のウィンク』。

「曲もいいですが、サビのところで手でウィンクをするところが可愛かった」(香川県・女性・53歳)

 この曲を発売後、聖子は神田正輝との結婚を発表し、歌手活動は休止になった。

「票数もほとんど変わりませんし、5位から10位に入った曲は、順位が入れ替わってもおかしくない曲たち。6位の『渚のバルコニー』、7位の『白いパラソル』や『夏の扉』もだけど、聖子さんの曲って、夏っぽい曲が多いんですよ。聴いていると海やリゾートに行きたくなったり、バカンスを楽しみたくなる気持ちにさせてくれる曲ですね。

 5位の『天使のウィンク』は曲のメロディーの入り方として、ちょっとバラード調から入って、アップテンポに急に上がります。この感じはそれまでの曲にはなかった“新しい聖子さん”ということで人気があるのかなと思います。私もすごく好きで、実は、自分のライブでは1曲目に歌わせていただいています(笑)」(まねだ)

 『天使のウィンク』は、それまで作詞を担当してきた松本に代わって、尾崎亜美が作曲も併せて担当した作品。作り手が代わったことで、聖子の歌う世界も広がったということだろう。

キャンディボイスという唯一無二の声

『風立ちぬ』は軽井沢の万平ホテルのカフェをイメージして書かれた

 4位に入ったのは25票を集めた『風立ちぬ』。

「耳に残るメロディーがいい。自分にとっての永遠のアイドルです」(岩手県・男性・58歳)

「どの曲も素晴らしいけれど、この曲がいちばん聖子さんに合っていると思う」(兵庫県・男性・70歳)

 大瀧詠一さん作曲の作品で、彼が作曲家として初めてチャート1位を記録した曲。

「この曲が発売されたときは、聖子さんといえばトップアイドルとして認知されて、いちばんノリにノッていた時期。この曲は聖子さん自身も出演した、ポッキーのCM曲にもなりました。この時期、聖子さんの声は、ハリがあり、パンチのある歌声から少しかすれた“キャンディボイス”と呼ばれる甘い声になってきたんです。声質が変わってきて、可愛らしさの中に“キャンディボイス”が加わり、誰もまねできない存在になりました」(まねだ)

 ベスト3にいく前に、「その他の曲」として6票を集めた曲がある。それは『瑠璃色の地球』。シングル曲ではないということでランキングされていないが、

「これはもう“王道”ですね。私も必ずステージで歌わせていただいてますけど、テレビ番組のオファーをいただいたとき、バラードで必ずリクエストされるのは『瑠璃色の地球』です。この曲、小学校とかの音楽の教科書に合唱曲として載っているんです。
『SUPREME』という、聖子さんが休業しているときに発売されたアルバムに収録されていますが、このアルバムは、聖子さんのお腹の中に沙也加さんがいるときにレコーディングされたんです。そして、復帰した場、『紅白歌合戦』で歌ったのがこの曲でした。いろいろなことが重なって、ファンの中ではすごく人気がありますね」(まねだ)

3位は初のミリオンセラー作品

'80年、デビュー当時の聖子。ぶりっ子キャラで男性人気が爆発した

 そして3位は、33票で『あなたに逢いたくて~Missing You~』。

「'80年代アイドルは終わったと思われていた時期に、復活の大ヒットだったから」(埼玉県・男性・42歳)

「この曲は聖子さん自身の作詞作曲で、切ないメロディーながらもサビに向かって盛り上がっていく感じが好き。明るく、爽やかな曲もしっとりしたバラードも感情豊かに歌い上げる、表現力のある歌い手だと思います」(福島県・男性・51歳)

「会いたい人のために歌うのはちょっと照れるけれど、この歌だったら歌えそうな気がします。そんなふうに思わせてくれる歌詞です」(長野県・女性・47歳)

 日本レコード協会認定で聖子自身、初のミリオンセラー作品。

「今から約30年前、久しぶりに大ヒットした曲でした。40代の人にすると、この曲がヒットしたのが10代のとき。ちょうど思春期だった世代にとっては“聖子さんといえばこの曲”というイメージなのだと思います」(まねだ)

 アンケートの声にもあるが、この時期は“小室ファミリー”のような、テクノやダンス系の楽曲がランキングを占める中でのヒット。'88年発売の『旅立ちはフリージア』以来、8年ぶりにこの曲でオリコンシングルチャート1位を獲得した。

2位の『赤いスイートピー』。

 2位には57票を集めた『赤いスイートピー』がランクイン。

「ときめく歌詞が素敵できれいな声が劣化しない」(和歌山県・女性・41歳)

「世代じゃないけど、メロディーも可愛いし、聖子ちゃんの曲でいちばん好き」(鹿児島県・女性・42歳)

「聖子の歌の中で、もっとも優れている。一貫してアイドルであり続ける姿が素晴らしい」(岩手県・男性・54歳)

 松任谷由実が楽曲提供し、聖子自身も好きな曲、と公言しているが、サビの部分を春らしくしたい、と手直しをリクエストされた松任谷は、「提供した曲でダメ出しされたのは、後にも先にもこのときだけ」と話している。聖子本人いわく、この曲で女性ファンの比率が上がったという。

「若い男女が初めて告白して恋に落ちることを歌っていますが、うまく思いを伝えられない、歯がゆさという感情が込められた歌詞。だからこの曲の発売当時、思春期だった私世代には歌詞が突き刺さるというか、歌詞の世界観に入り込みやすいということがあると思います。

 それまでの聖子さんの曲が、わりと勢いで押してくる、可愛い聖子さん、みたいなところがあったけど、ヘアスタイルもショートにして、いろんな意味で聖子さんの転換期だった曲ではないかな、というイメージです」(まねだ)

時代を超えて人気。若い世代もカバー

1位の『青い珊瑚礁』昨今の昭和ブームで若い世代でも人気になった

 そして、1位に輝いたのは、65票で『青い珊瑚礁』。

「曲の情景が浮かび、聴いていてとても爽やかな感じがする。アイドルとして歌や髪形、衣装など当時の同年代の女性に大きな影響を与えた」(栃木県・男性・79歳)

「松田聖子を好きになったきっかけの曲。やっぱりこれでしょ、としか言いようがない」(神奈川県・男性・59歳)

「とにかく頭にこびりついている歌で、思わず口ずさんでしまう」(神奈川県・女性・47歳)

 聖子の代表曲ともいえるが、意外にもオリコンのランキングでは2位止まりで、トップにはなっていない。

「この曲は、時代が巡って令和の時代に旬が来たのでは、というくらい、今に合っているんだと思います。以前なら、2位の『赤いスイートピー』がダントツで一番人気だったんですよ。それが今では『青い珊瑚礁』が、韓国でもNewJeansのハニちゃんがカバーしたり、ほかの若いアイドルの方々も歌って話題になっています。曲もイントロを聴くだけでワクワクしてきますよね(笑)」(まねだ)

 聖子は'80年の『紅白歌合戦』に、この曲で初出場を果たしている。

「アンケートを聖子さんのファンに限って行ったら、また違った結果が出たかもしれません。1位から3位の曲は必ずランクインすると思いますが、そこから下はどの曲が入ってもおかしくない。今回はほとんどが'80年代の曲ですが、私は最近リリースされた曲も好きなんですよ。どれか1曲、といわれてもどの曲も好きすぎて、選びきれないですね(笑)」(まねだ)

デビュー45周年!松田聖子の好きな曲ランキングTOP10

<取材・文/蒔田 稔>