
8月31日の中日ドラゴンズ戦で7回を投げて無失点、9奪三振の快投で、横浜DeNAベイスターズ移籍後の初勝利を飾った藤浪晋太郎投手(31)。試合後、この日も左打者8人を並べた中日の“藤浪対策”を問われると、
「相手のオーダーに関しては自分のコントロールできるところではない。どう投げるかということだけなので特に気にしてないです」
前回の「勝手に嫌がってくれる分には、好きなだけ嫌がって」との挑発的な“藤浪節”から一転、冷静なコメントに務めてみせた。指揮官の三浦大輔監督(51)は次回登板を明言していないが、中日戦での好投ぶりから中6日のローテーションも問題なくこなせるように見える。
つまり有力視されるは9月7日、横浜スタジアムで行われる東京ヤクルトスワローズ戦。2位の読売ジャイアンツから5位の中日まで3ゲーム差(9月2日時点)と、熾烈なCS出場争いを繰り広げるセ・リーグだけに、取りこぼしたくない6位のヤクルト戦に藤浪を登板させる可能性は高い。
注目すべきは中日同様、ヤクルトも左打者中心のスターティングメンバーを並べるのかどうか。藤浪とヤクルトは、野球ファンの間では“因縁”深い顔合わせとして知られる。
死球で骨折、チームを離脱した谷内亮太
真っ先に思い出されるのが、2016年4月19日の甲子園での阪神タイガースとの一戦。阪神のマウンドに立った藤浪のストレートが、右バッターボックスに立った谷内亮太氏(34、現在は日本ハムファイターズコーチ)の左手首付近に直撃する。
開幕から好調を維持し、この日も7番・遊撃手でスタメン出場していた谷内だったが、死球によって左尺骨骨折が判明して4か月離脱する事態に。藤浪は5回を投げて4失点、4四死球を与えるも勝敗はつかず。試合は8対4で阪神が勝利している。
翌年の2017年4月4日に行われた阪神対ヤクルトでも、藤浪の制球難が試合中断を招いている。5回の表に6番・一塁の畠山和洋氏(42)に対して肩口への死球。あわや顔面直撃の危険な投球に激昂した畠山が、マウンド上の藤浪に詰め寄ったことをきっかけに両軍入り乱れる乱闘騒ぎに発展。
試合後、畠山は感情をコントロールできなかった理由について「去年、谷内がやられている」と語り、それでも3対1でのヤクルトの勝利に「勝ててよかった」と安堵。藤浪は5回2失点ながら、9四死球の大乱調で敗戦投手となっている。

他にも2021年4月16日の甲子園、やはり先発の藤浪が山田哲人選手(33)、塩見泰隆選手(32)の主軸に死球を投じ、他にも頭部付近に抜けるボールが見受けららた。そんなヤクルト選手にとって、藤浪はある意味“天敵”と言えそうだ。
その山田、2015年8月13日に配信された『週刊ベースボール・オンライン』記事で、チームメイトの川端慎吾選手(37)との対談で「対戦してイヤだと感じるピッチャー」の話題になり、次のような会話を繰り広げている。
《川端 ジョンソン(広島)とポレダ(巨人)しか頭に浮かばないけど……。あとは藤浪(晋太郎、阪神)?
山田 藤浪は一番イヤですね。
川端 真っすぐが速い。
山田 速いし、怖いし。
川端 特に右バッターは・・・》
この年、阪神のエース格としてキャリアハイとなる14勝を挙げて飛躍した一方で、与えた死球はセ・リーグ最多となる11個と制球難への不安ものぞかせた藤浪。山田を含めた「右打者」にしてみれば、10年前から《怖い》投手として映っていたのだろう。
引退後に谷内が語った「藤浪への感謝」
そして藤浪の死球によってチームを離脱した谷内氏。復帰後は思うような活躍ができず、2018年オフにトレードで北海道日本ハムファイターズに移籍。それでも2021年には主に守備固めとしてキャリアハイの106試合に出場するなど、2023年の現役引退までプレーを続けた。
2024年から日ハムの一軍内野守備走塁コーチとして選手指導にあたっている谷内氏。同年1月19日の『NumberWeb』で、《やるせない気持ちはありました》と藤浪との対戦を振り返り、それでも《あの怪我のおかげで11年も現役でできたのかも》と逆に感謝の意を示し、自分が置かれている現状を前向きに捉えている。そしてーー、
《あの時、藤浪投手も連絡をくれましたが、僕は試合中の怪我は気にしていません。むしろ藤浪投手はメジャーリーグで頑張ってほしいし、今も応援しています》
当時、藤浪から真っ先に謝罪があったことを明かし、2024年にメジャーリーグ挑戦が決定した藤浪にへのエールを送っていた谷内氏。
次戦登板がヤクルト戦になるかは不明だが、制球難ではなく、プロの投手として打者から「一番イヤ」と称される投球を披露してほしい。