
日本時間8月28日、ドジャース移籍後、初めて勝利投手となった大谷翔平。優勝争いのさなか、チームに価値のある白星をもたらした。
Greatest of All Timeの頭文字をとってGOAT
「大谷選手が勝利投手となるのは、2度目の右ひじの手術後初で、エンゼルス時代の2023年8月10日以来でした。通常はマイナーリーグで調整登板をしてから復帰するのですが、大谷選手の場合は打者として出場を続けるために、メジャーリーグの試合の中で投手としてのリハビリをするという異例の調整。復帰後最多となる9個の三振を奪うなど、シーズン終盤、プレーオフに向けて順調な仕上がりのようです」(スポーツ紙記者)
現在、ドジャースはパドレスと地区優勝を争っている。その後はワールドシリーズ連覇をかけたプレーオフが控えるが、今後はどのような展開になっていくのか。メジャーリーグ研究家の友成那智さんに聞いた。
「地区優勝はドジャースが有利。ただ、アメリカンリーグ王者との世界一を決めるワールドシリーズに進むためにはプレーオフを勝ち上がらないといけません。ナショナルリーグには、今シーズン100勝以上しそうなミルウォーキー・ブルワーズがいるため、厳しい戦いが予想されます」
大谷の起用法もこれから注目されそうだ。
「“投手・大谷”をどう使うかがカギになりそうです。プレーオフの先発ローテーションは4人で回すのですが、ほかの先発投手陣の現在の調子を考えると大谷選手は5番手くらい。2023年のWBC決勝戦のときのように、勝っている試合の最終回にクローザーで使うということも考えられます」(友成さん)
前例のない活躍で次々と記録を打ち立て“GOAT”と呼ばれる大谷。日本語訳すると“ヤギ”だが、アメリカでは史上最高という意味の“Greatest of All Time”の頭文字をとった俗語となる。そんな大谷が“GOAT”と呼ばれる理由の一端を見せた。
「8月25日、優勝を争う同地区のパドレス戦。パドレスの本拠地であるペトコ・パークで行われた試合で大谷選手が9回にホームランを放ちました。ベンチに戻る前にベンチ横の席に座っていたパドレスファンの男性のところへ向かい、ハイタッチをして肩のあたりを叩いていました。どうやらこの男性が大谷選手に向かってヤジを飛ばしていたようで、大谷選手が打席に向かう前には何か言葉を交わしていました。大谷選手のこの行動にドジャースベンチからも笑いが起きていました」(前出・スポーツ紙記者)

大谷翔平との“ハイタッチ”が話題になり、この男性はポッドキャスト番組『ドジャース・ダグアウト』に出演。
ヤジを飛ばす敵ファンの胸ぐらをつかんで出場停止に
パドレスが本拠地を置くサンディエゴ出身だが、野球に興味がなく、親族や友人のために2万ドル(約290万円)のボックス席を購入。大谷が直近で10打数ノーヒットだと聞き、ヤジを飛ばしていたという。
試合後にも大谷が来てハイタッチをして投げキスをして帰っていったことを明かした男性。大谷のまさかの行動に「俺の完敗。でも楽しかった。彼は史上最高の選手。GOATと直接話せる機会なんかないからね。彼が史上最高と言われる理由がわかったよ」とすっかり虜になったよう。
前出の友成さんは大谷の今回の“ファンサービス”について、このように話す。
「前代未聞です。大谷選手だからできることでしょう。この試合はあの男性に限らず、ずっとヤジがうるさかったです。特に終盤はパドレスが負けていたこともあってひどかった。メジャーリーグにはヤジに対していらだってしまう選手もいて、エンゼルス時代に大谷選手とチームメイトだったレンドーンは、ヤジを飛ばしてきた人の胸ぐらをつかんで出場停止処分に。そういう気性の荒い選手もいる中、大谷選手のような解決方法は異例。称賛すべきことです」
試合後にはチームメイトも賛辞を惜しまなかった。
2024年ワールドシリーズMVPのフリーマンが「翔平がそのファンにちょっとした“別の喜び”をお返しできたことはよかった」と話せば、ロバーツ監督も「あれは素晴らしかった。翔平が自分の人間味を見せてくれたのはよかった」と、絶賛した。
パドレスとは選手同士が一触即発となりそうな事態を大谷が鎮めたこともあった。
「6月17日から20日の4連戦では、お互いに主力選手が死球を受けたこともあって殺伐とした空気が漂っていました。その最終日にスアレス投手が投げた99.8マイル(約160キロ)が大谷選手の右肩付近を直撃。これまでの死球の“報復”だと感じたドジャースの選手たちはベンチを飛び出そうとしましたが、大谷選手が手を上げて制しました。乱闘を避けると、その後に相手チームの選手と談笑する場面も。このときの振る舞いにも称賛が集まっていました」(在米ジャーナリスト)

バチバチと火花を散らすドジャースとパドレス。両チームはどんな関係なのか。
大谷の虜は人間に限らない
前出の友成那智さんによると、
「もともと、ドジャースのライバルといえばサンフランシスコ・ジャイアンツでした。この2チームは、かつてニューヨークに本拠地を置き、同じ年にそれぞれ移転したという経緯もあります。そのジャイアンツが3年連続でプレーオフ進出を逃し、今年もかなり厳しい状況なのに対して、パドレスが強くなってきました。
選手としてプロの経験はないものの、監督としては非常に優秀なシルト監督が2024年に就任して以降は、さらに手ごわくなっています。両チームがエキサイトするようになったのは2021年くらいから。ドジャースのマンシー選手、パドレスのマチャド選手の2人がベンチを挟んでヤジを飛ばし合うようになりました」
殺伐としたライバル対決でも空気を和ませる大谷。敵味方を問わない“神対応”が愛される要因だ。
「相手チームのファンからもよくサインを求められ、即席のサイン会が開催されることもあります。7月のオールスターでは他球団の選手の子どもたちから記念撮影とサイン攻めにあっていました。丁寧に対応した大谷選手は二刀流での活躍に加えて、その人間性も尊敬されているのでしょう」(前出・在米ジャーナリスト、以下同)
大谷の虜になっているのは“人間”に限らない。
「エンゼルス時代に同じアメリカンリーグ西地区のテキサス・レンジャーズのマスコットキャラクターのレンジャーズ・キャプテンから《大谷 あなたはすごい》と日本語で書かれたボードを掲げられていました。大谷選手はグータッチを交わし、記念撮影にも応じていました。
8月にはタンパベイ・レイズのマスコットのレイモンドから愛犬のデコピンへプレゼントをもらい、笑顔で会話をして対応。そんな姿にレイズのファンからも好感が持てるといった声が寄せられました」
神対応っぷりも、みんなから愛される唯一無二の“GOAT”たるゆえんだろう。