すました表情の河合奈保子

 8月21日、都内で行われた映画『TSUSHIMA』の完成披露上映会に、俳優の山田純大と中西悠綺、監督の山根高文氏が出席した。

監督のアツいアドバイス

「本作は、長崎県の離島・対馬を舞台に人類社会に忍び込むAIに翻弄される人たちを描いたSFサスペンスです。AIと再生医療が結びついて起こり得る問題を、山田さん演じる新聞記者の田島圭介が追いかけます」(映画誌ライター)

 山根監督は、もともと報道記者。テレビ朝日の政治部や社会部で、総理官邸や臓器移植などの取材を行っていた。監督からは“元記者”として熱いアドバイスがあったと山田は明かす。

「撮影前に監督から“田島は僕自身だから、とにかく淡々と冷静に記者を演じてほしい”という注文がありました。ただ、洞窟の中でゾンビに殴られて失神するシーンがあって(笑)、その後にどうやって淡々と冷静に記者を続けていいのかわからないところもあったんですけど……。そのあたりをみなさんに見ていただきたいです」

 本作の見どころは、現代社会に切り込む新進気鋭な切り口だけではない。山根監督には、どうしてもチェックしてほしいポイントがあるようで……。

「主題歌の『Wings Of My Heart』です。河合奈保子さんの楽曲なのですが、実はファンというわけでもなく……(笑)。ただ、改めて聞いてみると抜群に歌がうまくて、主題歌はこれしかないと思いました。映画の本編だけでなく、主題歌もじっくり聞いていただきたいです」

 完成披露試写会の後、週刊女性PRIMEの独占インタビューに応じた山根監督は、主題歌『Wings Of My Heart』に対する思いをこう語る。

「河合奈保子さんは、1980年代にアイドル歌手として一世を風靡したので、多くの人にはアイドルとしての印象が強く残っていると思います。ですが、ほかのアイドル歌手との大きな違いがあります。

 それは、自身で歌唱する楽曲の制作も手がけることがあったという点です。中でも『Wings Of My Heart』は、河合さんの楽曲でも数少ない、自身が作詞作曲の両方を手がけた楽曲なのです」

難航した楽曲使用

 しかし、楽曲使用には大きな壁があったという。

「元職場であるテレビ朝日のベテランデスクに“河合奈保子さんの楽曲を使用したい”と連絡すると、“それは絶対に無理”と言われたのです。どうやら活動を休止して以来、マスコミの取材は、ほぼすべて断り続けているとのこと。

 ですが、そのとき私の頭の中は“主題歌は河合奈保子さん以外ありえない”となっていたので、ダメもとでレーベルに問い合わせてみました」(山根監督、以下同)

 それから2か月がたっても、レーベルからの返事はなかった。

「映画の撮影も終わり、そろそろ主題歌を決めなければならない時期に差しかかって……。もしダメなら別の曲を早急に探す必要に迫られていました。

 あきらめかけていたころ、突然電話が鳴って。レーベルの担当者からでした。急いで電話に出ると“河合奈保子、OK出ました。本人から、いいですよ、とのことです”と。背筋がゾクッとして、身震いしたことを覚えています」

山根高文監督

 念願叶って起用が決まった楽曲への思いを山根監督はこう語る。

「『WingsOfMyHeart』は、人にとって最も大切なものは何かを率直に伝えてくれる曲です。こんな素敵な曲を生み出してくれたアーティスト・河合奈保子さんには感謝しかありません」

 映画の公開は9月5日。ストーリーと併せて、河合奈保子の隠れた名曲にも耳を傾けてみては。