沢口靖子

 10月からフジテレビで『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』(月曜夜9時)がスタート。「月9」ドラマに、沢口靖子(60)が初めて主演する。

35年ぶりのフジ連ドラ出演

 2010年に始まった人気シリーズのシーズン5にあたり、これまでシーズン1と2は上戸彩、シーズン3と4は沢村一樹が主演。今回、沢口は「情報犯罪特命対策室(DICT)」で「情報犯罪」という“顔の見えない敵”に立ち向かい、解決する刑事役を演じる。沢口がフジテレビの連ドラに出演するのは35年ぶり。

「月9」といえば、かつては恋愛ドラマを中心に、若手の人気俳優が出演したトレンディードラマの象徴的存在。数々の社会現象を起こし、「家で月9を見るために、街からOLが消えた」といわれるほどの高視聴率を誇るコンテンツだった。

 ただ近年は勢いを失い、作品のテーマも多様化しているが大ヒットには恵まれていない。月9=オワコン説は本当なのか、漫画家でドラマウォッチャーのカトリーヌあやこさんに聞いた。

「そもそも月9は1990年~2000年代のラブストーリー黄金期の印象が強いですが、2016年の『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の平均視聴率が1桁に。

 近年は『PICU小児集中治療室』などの医療もの、『ミステリと言う勿れ』など推理ものが多くなり、恋愛ものが珍しい状況です。推理もの、医療ものの良さは、中心のテーマの縦軸がありながら1話ごとに完結すること。恋愛ものは1話脱落したらもう見ないですよね」

 最近の恋愛ドラマは、仕事が終わって帰宅後や、夕食の片づけなどが落ち着いた時間である夜10時以降に集中しているのが特徴だ。

 そんな中、今年4月〜6月に放送された『続・続・最後から二番目の恋』は、木曜夜10時に放送されていたシリーズを月9枠に移動させたもの。沢口と同年代の中井貴一、小泉今日子が主演し、月9黄金時代の視聴者である50代〜60代を中心に好評だった。

 シニア層を上手に取り込んだドラマといえば、共にテレビ朝日の『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』や『緊急取調室』、そして昨年放送25周年を迎えた沢口主演の『科捜研の女』など。いずれも安心して見ることができるキャスティングで長寿ヒットシリーズになっている。

「科捜研のマリコ(沢口)を月9に呼んだのは、大正解だと思います」(カトリーヌさん、以下同)

 ドラマ視聴者の年齢が上がる中、今後は主演俳優の年齢も上がる傾向にあるのか?

「影響を及ぼしているのが、昨年末の中居正広さんの女性トラブルを発端としたフジテレビ問題。かつてはCMによく出ている人がドラマにも多く起用される印象でしたが、全面的にスポンサーが戻ってきていない今、ベテランの手堅いキャスティングになるのも納得です」

 シニア世代に素敵な老後の夢を提示してくれた『続・続・最後から二番目の恋』、そして今回の『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』。

「今回は“観測気球”的な意味合いで、成功したらシニア層がターゲットとなる“大人の月9”に移行していくのではないでしょうか」


取材・文/住田幸子