大阪・関西万博会場を訪れた際のドット柄ワンピースやイヤリングにも注目が(2025年8月23日)

「もうちょっと強い力のほうがいいですか」

 秋篠宮ご夫妻の次女、佳子さまは8月23日、大阪市の人工島、夢洲で開かれている大阪・関西万博の会場を訪れ、日本の伝統工芸品作りを体験したり、今年6月に公式訪問したブラジルや、2023年秋に公式訪問したペルーのパビリオンを視察した。

職人に尋ねる佳子さま

万博会場内で、伝統工芸の津軽塗の研ぎ出しを体験をした佳子さま(2025年8月23日)

 日本工芸会の総裁を務める佳子さまは、国の重要無形文化財に指定されている津軽塗の研ぎ出しを体験し、冒頭のように職人に尋ねていた。

 そして、佳子さまは漆が塗られたコースターを、水に濡らした紙やすりで何度もこすり、模様を浮かび上がらせる作業に熱心に取り組んだ。

 また、石川県の輪島塗の大型地球儀を鑑賞し、漆黒の球体に蒔絵や沈金で都市の明かりを表現した作品を前に「見られてよかったです」と感想を述べたという。

「『大阪・関西万博』を契機として、世界の人々が、自分自身だけでなく、周りの人々の『いのち』や、自然界の中で生かされているさまざまな『いのち』も尊重して、持続する未来を共に創り上げていくことを希望します」 

 以前、この連載で紹介したが、今年4月13日、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに開幕した大阪・関西万博は、158か国・地域と7国際機関が参加し、未来社会を形づくる理念や先端技術を発信する。開幕前日の12日、開会式が行われ、佳子さまの伯父である天皇陛下は、前述したように挨拶している。

 開会式には、皇后雅子さまや万博名誉総裁を務める秋篠宮さま、それに紀子さまも同席した。陛下の挨拶の後、秋篠宮さまがパネルに手をかざすのを合図に開会セレモニーが行われた。

 それに先立ち、会場を視察した両陛下と秋篠宮ご夫妻は同11日、万博のシンボル「大屋根リング」に上り、リングの構造などについて説明を受けた。両陛下と秋篠宮ご夫妻そろっての視察は、園遊会などの皇室行事を除いて令和になって初めてで、仲の良い兄弟夫妻の姿が話題となった。

 話は少し飛ぶが、天皇陛下は8月8日、大阪・関西万博の「ナショナルデー」に合わせて来日したペルーのボルアルテ大統領と皇居・御所で会見した。

 佳子さまは、外交関係樹立150周年の機会にペルー政府から「招待したい」との申し出を受け、'23年11月1日から10日間の日程でペルーを公式に訪問している。

 首都リマの日秘文化会館で行われた、ペルー日系人協会主催の「外交関係樹立150周年記念式典」で、佳子さまが次のように挨拶し、最後はスペイン語で締めくくると会場から大きな拍手が沸き起こった。

「日本から移住された方々とそのご子孫が、その後、幾多の困難や悲しみを乗り越え、誠実に勤勉にお互いに助け合いながら、日々を過ごしてこられたことを、そして、ペルー社会から信頼を得ながら、ペルー社会に貢献してこられたことを、あらためて心に刻み、これからもしっかりと心にとどめてまいります。(中略)

 このたびの滞在中に、ペルーの魅力や素晴らしさをより深く知りたいと思います。また、日本とペルーの友好関係が一層深まりますことを願い、私の挨拶といたします。ありがとうございます。ムーチャス・グラシアス」

佳子さまの感動の言葉

万博の開会式前日に大屋根リングを視察する天皇、皇后両陛下と秋篠宮ご夫妻(2025年4月11日)

 佳子さまは、ペルー南部にある世界文化遺産、インカ帝国時代のマチュピチュ遺跡を訪れたが、その際にこのような感動を口にしている。

「本当にすごく、こう、壮大な景色で、あのー、写真では拝見したことはあったんですけれども、やはりこの場に立ってみると、おおおー、という感じがすごくします。本当に、何か、こう、素敵な、空気を感じます」

 8月のボルアルテ大統領との会見で、天皇陛下は佳子さまのペルー公式訪問に触れ、「ペルーの皆さんに大変、歓迎され感謝します」とお礼を述べたという。

 大統領は、ペルーに移住した日系人たちについて、「果たしてきた役割は非常に大きいものがある」と話し、灌漑事業への貢献が多大であることなどを説明したという。

「TICAD(アフリカ開発会議)を通じて30年以上にわたり育まれてきた日本とアフリカとのパートナーシップが、いっそう強固で豊かなものになるよう祈念いたします」

 天皇、皇后両陛下は8月22日、横浜市で開かれた、TICADに出席した27か国とアフリカ連合委員会の首脳夫妻らを招き、皇居・宮殿で茶会を催した。陛下は、民族衣装などを着たアフリカからの出席者を前に、前述のように挨拶した。

 茶会には、秋篠宮ご夫妻や両陛下の長女の愛子さま、それに佳子さまらも臨席した。和服姿の佳子さまたちは、飲み物を手にしながら、出席者と30分ほど懇談した。

 今年は、戦後80年の節目にあたるが、長野県軽井沢町で静養中の上皇ご夫妻は8月23日、中国・旧満州(現在の中国東北部)から戦後、引き揚げてきた人たちが入植した大日向開拓地を散策した。

 1947年、昭和天皇がこの開拓地を地方巡行で訪れて、入植者たちを激励している。

 上皇ご夫妻は、皇太子ご夫妻時代から天皇陛下や秋篠宮さまたちを連れて、たびたび足を運んでいる。今回、おふたりはキャベツ畑を手をつないでゆっくり歩き、生育状況などを見て回った。報道によると、上皇さまが「よく育っているみたいだね」と話すと、上皇后さまが相づちを打っていたという。

 その上皇さまは'87年8月、記者から、《戦争を知らない世代がどんどん増えていますが、お子様に戦争当時のことをどうやって伝えておられますか》と尋ねられ、文書回答の中で次のように答えている。

《なかなか難しいことだと思います。ただ、私は近代の歴史を勉強するようにと言っています。歳をとった人が自身で体験したことでも、若い人にとっては歴史として学ぶことになります。

 例えば、私にとって第一次世界大戦は遠い昔のことのように思われますが、今の若い人達にとっては、先の大戦もちょうど同じくらいの昔のことになります》

 '23年11月、誕生日を前にした会見で、記者から佳子さまのペルー公式訪問などについて質問された秋篠宮さまは、「日本国内での公的な仕事、そういうものもあわせて非常に一所懸命取り組んでいると私は思っています」などと、佳子さまを高く評価した。

 まじめで努力家の佳子さまのことだ。日本や世界の近代史についても、「非常に一所懸命」学んで、戦争の悲惨さなどをしっかり理解していることだろう。

<文/江森敬治>

えもり・けいじ 1956年生まれ。1980年、毎日新聞社に入社。社会部宮内庁担当記者、編集委員などを経て退社後、現在はジャーナリスト。著書に2025年4月刊行の『悠仁さま』(講談社)や『秋篠宮』(小学館)など