
街の明かりと自然がもたらす夜景。ロマンチックな光のパノラマに心を奪われた経験を持つ人は多いはず。
ヒーリング効果もある美しい夜景の魅力
「夜景はリラックスしたい、元気になりたいときなど、心身に癒しやエネルギーを与える効果が期待できます」
そう話すのは夜景評論家の丸々もとおさん。夜景の魅力を景観学、色彩心理学などをベースに評論している。
「クールダウンしたいなら海の青が反映した湾岸部の夜景。寒色系は副交感神経を優位にし、心を鎮めます。元気になりたいときは工場や埠頭などオレンジ系の夜景が最適」
最近では夜景を観光資源としてPRに力を入れる自治体も増えており、夜景観光や夜景旅といった企画も。
「日本には古くから夜の光に魅せられる文化が根づいています。月も美しい秋は絶好のお出かけどき。フォトジェニックな瞬間にぜひ立ち会ってみてください」
日本平【静岡県】
日本が世界に誇る富士山と夜景のハーモニー

日本観光地百選の1位に選ばれたこともある静岡を代表する景勝地。「絶景」と丸々さんが推す標高307mの丘陵地から眺める夜景は「日本夜景遺産」に認定。
「空気が澄みだす秋は、夜でも天候次第で富士山が見え、眼下に広がる静岡市の街並みや三保松原、駿河湾と相まって、ここにしかない光景を楽しめます」(丸々さん、以下同)
日本平ホテル
日本平からの雄大な景観を望める抜群のロケーションのホテル。国宝の久能山東照宮や三保松原などへのアクセスも◎。

もいわ山【北海道】
札幌の澄み切った空の下に灯る宝石箱のような街明かり

札幌市の中心部に位置する標高531mのもいわ山は、日本夜景遺産にも認定された人気の夜景スポット。山頂へ向かうロープウェイからの眺めも楽しみのひとつで、山頂からのまばゆい札幌の大地は圧巻。
「夜景は鑑賞環境も大事。こちらの展望台は比較的ゆったりしているのでじっくりと夜景を堪能できるのでオススメです」

釜臥山【青森県】
「光のアゲハチョウ」と称されるロマンチックな夜景

下北半島の中心部にある恐山山地の最高峰である釜臥山。
「全世界で11か所だけの『世界夜景遺産』に、日本で唯一選ばれているのが釜臥山です。展望台から眼下を見下ろすと街の明かりと地形から蝶が羽を広げて羽ばたいているように見えます。さらに上空に月が上ると非常に素晴らしい構図の夜景となります」

多摩モノレール【東京都】
車窓越しにきらめく住宅夜景や五重塔を鑑賞

「多摩センター駅」から「上北台駅」まで、多摩地域を南北に縦断しているモノレール。
「高台を縫うように走るので、多摩丘陵や河川敷、住宅の夜景、ライトアップされた高幡不動尊など、さまざまな名所を、乗りながら楽しめる夜景列車です」
風景を楽しみながらビールなどのお酒と、料理を楽しむイベントも不定期で開催。

工場夜景ジャングルクルーズ【神奈川県】
パワフルで刺激的な工場夜景。非日常体験を味わいに

日本の三大工業地帯のひとつ、京浜工業地帯の夜景を運河から眺める「工場夜景ジャングルクルーズ」。運河沿いにひしめくプラントやタンク、倉庫などの美しいライトアップは非日常を演出。
「水蒸気が風にたなびき、炎が煙突から出る様子などは不規則で、一つとして同じ夜景はありません。陸上よりも間近で見られるのもクルーズの魅力です」

東大阪市役所 22階展望ロビー【大阪府】
オレンジ色に包まれたJCTと都市の明かりが見せる近未来風夜景

地上約100mの高さから東大阪ジャンクションを一望できる、日本夜景遺産認定の絶景スポット。天気がよく空気が澄んでいる日は、肉眼で淡路島が見える。
「中でも阪神高速と近畿自動車道が交差するジャンクションは、オレンジのナトリウム灯で照らされた道路と車のライトが織りなす夜景がパワフル。眺めるだけでパワーがもらえます」
スカイラウンジ22
同フロアの展望レストラン「スカイラウンジ22」で眺望を楽しみつつ地元精肉店のお肉を使った絶品グルメを堪能できる。ハンバーグ1100円(ランチ料金)など

灰ヶ峰【広島】
中国・四国エリアの三大夜景。偶然の産物、光の文字は見逃せない

呉市にある標高737mの灰ヶ峰。山頂にある展望台は海軍の砲台跡地で、夜になるとまばゆい呉市の街明かりや、港に停泊する船などの夜景を一望できる。
「夕方の渋滞する時間帯は、車のテールライトやヘッドライトがつながって点が線となり、『くれ』の文字が浮かび上がります。日没の渋滞する時間がチャンス」

鍋冠山【長崎県】
市街や長崎港を身近に感じる標高169mからの眺め

“夜景が豊作”という九州エリアで穴場というのが、長崎県の鍋冠山からの夜景。
「グラバー園の上に位置する山で、夜景で有名な稲佐山に並ぶ人気のスポット。長崎の街が近くに見えるので、市内でいちばんにぎやかな夜景が見られます」
2016年に回廊式の展望台にリニューアルされ、スペースが4倍に拡大。世界文化遺産の軍艦島や旧グラバー邸も望めるスポット。

※料金は大人1名分です。

教えてくれたのは……丸々もとおさん●日本で唯一無二の夜景評論家で、夜景に関する著書は50冊以上。長崎市や横浜市、神戸市など多くの自治体で夜景観光アドバイザーを歴任。
取材・文/荒木睦美 メイン夜景写真提供/丸田あつし