吉行和子さん

「若いころから本当にかわいがってもらった。大好きな先輩でした」

 9月9日、キャスターを務める朝の情報番組で、そう語った武田鉄矢。9月2日に肺炎のため、90歳で亡くなった吉行和子さんを悼んだ。

「結婚に向いてない」赤裸々に語った吉行和子さん

 舞台や映画で活躍した吉行さんは、1979年に始まったTBS系『3年B組金八先生』で武田と長らく共演。テレビドラマでも幅広い役柄を見せていたが、そのチャーミングな素顔を余すことなく『週刊女性』でも明かしていた。

「とうとうぬか床か! と思いました(笑)」

 2013年後期放送の朝ドラ『ごちそうさん』でナレーションを担当していた吉行さん。同時に務めていたのがヒロインの祖母役で、物語の中で亡くなった後は“ぬか床の精”として孫娘を見守るという設定だった。

「私は役をやってるときが一番楽しくて、ほかに趣味もないですから、こんなに面白い役をいろいろいただけて、思っていた以上に幸せな老後になってるんですよ(笑)」

 同年12月24日発売の『週刊女性』に登場した吉行さんは、そのオファーを受けたときの感想を率直に語っていた。

 デビューは1955年、20歳のときだった。22歳から日活映画に出て給料がもらえるようになり、ひとり暮らしを始めた。

「私は結婚に向いてないってハッキリわかった」

 同じインタビューで、そう語っていた吉行さんは28歳から4年間ほど、結婚していた期間があった。相手は芝居の仲間だったという。

岸田今日子さん、冨士眞奈美とは“恋バナ”も

「私は何しろひとりでいるのが好きなものですから、人がいつもそばにいるのがイヤになっちゃって」

 と、ひとり暮らしに戻った経緯を明かしつつ、

「それ以来、結婚したがっているような男の人には近づかないようにしてるの(笑)」

 と、おひとりさまを謳歌していた。

 よく知られた親友の岸田今日子さんと冨士眞奈美とは3人組で、たびたび旅行に出かけた。2001年には上海に足を延ばした。3人が揃うと“恋バナ”にも花が咲いた。

吉行和子さん

「人は年をとるとものわかりがよくなったり、知恵がついて落ち着くだろうと思ってる人が多いですけど、私が78歳まで人体実験して言えるのは“いい男だな”と思って、ときめく気持ちは20歳のころと同じなんです。だから、素敵な男性を探しまわるのが好きなの」(同インタビューの吉行さん、以下同)

 どんな男性に惹かれるのかを聞かれると、

「やっぱり若いほうがいいですね(笑)。だって先が短い人はかわいそうになっちゃって、楽しくないじゃない? それから決まりきった人生を送ってる人じゃなくて、面白くなきゃね。“何を考えてるのかな”と思うと惹かれちゃうんだけど、そういう人に関わるとホントにひどい目にあっちゃうの! 今まで恋愛した人は、お金のことなんて考えない、貧乏な人ばっかりなのよ!」

 と、あっけらかんと楽しそうに笑っていた。今から12年ほど前、78歳のときのインタビューだが、吉行さんは将来のことも語っていた。

「私はもう70歳を過ぎていましたけど、そこから仕事をひとつひとつ丁寧に大切にやっていこうという思いが、よけいに強くなりましたね。そして今をちゃんと生きていれば、そのままスッとこの世からいなくなってもいいなって」

 その言葉どおり軽やかに、チャーミングに、そして丁寧に90年の人生をまっとうした。合掌。