おひとり旅行が人気の韓国

「観光するには気候もちょうどいいですし、秋夕(チュソク)を過ぎた10月中旬から下旬はソウルは活気があります」

 そう話すのは、韓国旅に精通する白鳥由佳さん。10月6日は秋夕(韓国のお盆)という祝日で、前後1週間は休みを取る人が多い。そのためソウル市内は休業している店もあるが、それを過ぎれば、紅葉シーズンでにぎわい、見どころも多いという。

増加する日本人の韓国旅

 昨今では円安や物価の高騰が影響し、海外旅行への動きは鈍いが、韓国便は日本人の利用も多い。2024年12月の日本人出国者数が約120万人、そのうち韓国が25万人超と、およそ4分の1を占めている。見かけるのはほぼ女性だというが、その目的の多くは“美容”や“グルメ”、そして“推し活”だ。

 中高年女性で、一番の目的は美容なのでは、と白鳥さんは話す。

「韓国で美容といえばソウルの江南(カンナム)エリア。50代以上の日本人女性も多く見かけます。私の知り合いでも、最初は友人に誘われて、『シミ取りくらいなら』と軽い気持ちで施術していました。

 ところが年3~4回のペースで韓国を訪れて、たるみ治療の糸リフトやウルセラなども行うように。価格の安さもありますが、何より技術力の高さと、患者に寄り添ってくれる姿勢が魅力だと話していました」

日本語サポートが利用できるクリニックが多く、きめ細かいカウンセリングも ※写真はイメージ

 韓国保健産業振興院によると、医療観光目的で韓国を訪れる日本人は年間約18万8千人(2023年)という統計も。

「韓国の美容医療は日本よりも10年進んでいるとも。しかも数多くの美容クリニックがしのぎを削っているため、価格は抑えめです。常に新しいものが出ており、ここ数年流行しているリジュラン注射(美肌再生治療)も日々進化をしています。

 サーモン由来成分を主成分としているものですが、より純度の高い抽出技術により、肌再生効果が向上しています。種類もさまざまありますが、どのタイプにするか、価格面、ダウンタイムなどしっかり日本語で説明してくれるところが多いので、ひとりで行っても安心ですよ」(白鳥さん、以下同)

 美容医療は周囲に言いにくいという人も、韓国であれば気を使わず、プライバシーを守りやすいという点もメリットだ。

“推し活"で美味しいもの巡り

 好きなアーティストのコンサートや“推し活”の聖地巡りも韓国旅行の醍醐味。

「BTSが宿泊したというホテル、朝鮮パレスソウル江南ラグジュアリーコレクションは今も人気です。ホテルでゆっくり過ごす“ホカンス”も中高年世代にはおすすめ。BTSが行ったという焼き肉店やカフェもいくつかありますが、どこも聖地巡りとして人気で混み合っています」

フォトスポットとして人気の北村韓屋村。韓服を着て散策できる体験も

 通称「バンタン食堂」でおなじみのユジョン食堂もBTSファンにはよく知られている。

「BTSが練習生時代に通っていたレッスンスタジオは、“ユジョン食堂”という飲食店の地下にありました。毎日のようにここで食事をしていたことから、“防弾食堂”、通称“バンタン食堂”と呼ばれるように。

 ファンに人気なのは“黒豚石焼きビビンバ”。メンバーがひとりで来た時、本当は“ユジョン野菜包みご飯”を食べたかったのですが、2人前からしか注文できず断念。そんな姿を見て、ひとりでも楽しめるようにアレンジされたのがこのメニューだそうです」

 グルメでいえば、Netflixでのコンテンツで紹介された店やシェフが話題に。

「韓国を代表する歌手で美食家のソン・シギョンと『孤独のグルメ』の松重豊が共演する『隣の国のグルメイト』で紹介された店や、韓国で社会現象となった『白と黒のスプーン~料理階級戦争~』の影響は大きいです。

 登場するシェフの店は予約殺到、世界中からファンが訪れるほどの人気ぶり。韓国のコンビニではナポリ・マフィア監修の栗ティラミスも販売されています」

 ナポリ・マフィアとは『白と黒の~』の番組内に出演したクォン・ソンジュンシェフの異名。本場イタリアで修業を積み、常に自信満々で「自分が一番料理がうまい」と強気で人気を博した。

『白と黒の〜』はシーズン2も決定しているためチェックしておきたい。番組出演者の影響力は食品業界全体に及んでおり、韓国旅行の新たな楽しみ方として定着しているのかも。

「ちなみに、韓国ではひとりで食事をするという文化があまりなく、注文は2人前からというお店が多い。ただ、ひとりでも食事できる店が増えていて、粉食店(トッポギやキンパなどのファストフード店)は、ひとりで入りやすい店があります。そうしたところでも韓国らしさは味わえるでしょう」

格安航空、宿泊を利用する際の注意点

 LCCを利用すれば最安の場合往復3万円程度で韓国行きの航空券が手に入り、ゲストハウスなどを利用すれば1泊3000円程度での宿泊も可能。ただし、注意すべき点もある。

「LCCや地方空港発着の便もたくさん飛んでいますが、市街地から遠い仁川国際空港発着で、価格が安い便を狙うと深夜・早朝便になるため体力が必要です。遅延・欠航リスクもあるので、美容クリニックの予約などはそれを考慮すべきかもしれません」

ミシュランガイドソウル2025で二つ星のレストラン、ジョンシクタン。清潭洞で韓国を代表するモダン韓定食が味わえる

 宿泊でも思わぬトラブルが起こることがある。不安な思いをしたという例も。

「ネットで検索した際、写真がきれいだったためエアビーを予約したところ、男性のひとり暮らしの家。そこの1部屋に泊まることになってしまったそうなんです。何事もなかったようなのですが、やはり怖いですよね」

 女性ひとりなら、ホテルか女性専用のゲストハウスがおすすめ。そして、なるべく深夜の外出は控えたいが、やむを得ずタクシーを利用する際はカード決済の配車アプリの使用がおすすめだ。

「基本的な注意点さえ押さえれば、韓国は日本人にとって安全で楽しい旅行先。たった2時間半のフライトで、日常を忘れて自分だけの時間を満喫できます。美容にグルメ、推し活を楽しんでください」

大人女子「おひとりソウル」ココが魅力

・自分の目的に集中できる
 美容施術の待ち時間も気を使わない
 推しの聖地巡りを気兼ねなく楽しめる

・中高年女性でも安心の環境
 日本語対応の美容クリニック多数
 リピーターが多く、ひとりでも浮かない
 比較的治安が良く、夜間も大通りなら安心

・コスパ抜群で気軽に行ける
 LCC往復3万円+ゲストハウス3000円/泊
 美容施術も日本の3分の1の価格
 粉食店ならひとりでも入りやすく予算も安い

・話題のスポットでミーハー心が満たされる
 Netflixの番組出演シェフの旬な店など
 BTSなど“推し”が利用したホテルや店も
 韓屋リノベカフェなどフォトジェニックな店も多数

白鳥由佳さん 韓国コーディネーター、通訳家。“ヨン様”などの第1次韓流ブーム以来、韓国の文化に関心を持ち、ソウルに3年間ほど暮らし、現在も渡韓を繰り返す。テレビ番組の企画で日本テレビの水トアナの韓国旅行案内をするなどメディアに多数出演。韓国ガイドも上梓