
「食べたいものが思い浮かばない。簡単に作れるレシピじゃないと台所に立つ気力もない……。そんなときにおすすめなのが、味つけが塩だけの『塩だけスープ』です」
と話すのは、“野菜の料理家”の西岡麻央さん。
塩だけで素材のうまみを引き出す
「野菜や肉、魚にはそれぞれにうまみがあります。塩にはその甘みやうまみを引き出す作用があるので、塩だけでも十分おいしく仕上がるんです。
さらに、トマトやベーコンなどのうまみ食材を組み合わせたり、あえて焦げ目をつけて香ばしさを加えたり、風味豊かなオイルを使うことで、深みのある味わいになります」(西岡さん、以下同)
適量の塩分は身体にも大切。汗と一緒にミネラルが体内から流れ出ると、倦怠感や気分の落ち込みにもつながる。
「なので、疲労回復のためにも食事からの塩分補給は欠かせません。塩だけスープには、疲れた身体にすっと染み入るような心地よさがあるので、ぜひ一度作ってみて」
基本の味つけは塩だけスープ
骨付き肉や香味野菜のうまみ、ベーコンやチョリソーの塩けを生かせば、シンプルなのに満足感たっぷりごちそうスープに仕上がります。
豚肉と野菜の塩だけスープ
かぼちゃの甘みにほっこり癒される

材料(2人分)
・豚バラ肉(薄切り)……180g
・かぼちゃ……1/8個(150g)
・しいたけ……4個
・トマト(中)……2個
・塩……小さじ1
・水……600ml
【作り方】
(1)豚バラ肉は食べやすい大きさに切る。かぼちゃは種とワタを取り、5mm幅の薄切りにし、しいたけは石づきを切り落として軸を手でさき、かさは薄切りにする。トマトは2cmの角切りにする。肉以外の野菜を鍋に入れる。
(2)(1)の上に豚バラ肉を、重ならないように広げながらのせる。水、塩を加え、ふたをして中火にかける。
(3)煮立ったら弱火にして10分煮込む。火を止めて豚肉をほぐすようにしながら混ぜ、器に盛る。
野菜の味を生かした塩スープ
塩ミネストローネ
トマトの酸味とベーコンのコクが染みわたる

材料(2人分)
・にんじん………1/2本(80g)
・じゃがいも………1個(160g)
・玉ねぎ………1/4個(50g)
・にんにく…1かけ
・ブロックベーコン……50g
・豆(ミックスビーンズ)……100g
・塩……小さじ2/3
・水……300ml
・トマトジュース(無塩)……200ml
・オリーブオイル……大さじ1
【作り方】
(1)にんじん、じゃがいも、玉ねぎは1cmの角切りに。にんにくはみじん切りにする。ブロックベーコンは拍子木切りにする。
(2)鍋にオリーブオイルをひき(1)を入れて、玉ねぎが透き通るまで3分ほど炒める。
(3)水、トマトジュース、塩、豆を加え、ふたをして中火にかける。煮立ったら弱火にしてさらに10分煮込み、器に盛る。
ねぎとじゃがいもの手羽先スープ
トロトロになったねぎの甘さがたまらない

材料(2人分)
・鶏手羽先……6本
・じゃがいも(メークイン使用)……1個(160g)
・長ねぎ(青い部分も含む)……1本
・にんにく……1かけ
・塩……小さじ2/3
・水……500ml
・オリーブオイル……大さじ1
・粗びき黒こしょう……適量
【作り方】
(1)じゃがいもは5cm幅の半月切りにする。長ねぎは4cm長さに切り、さらに縦半分に切る。にんにくは薄切りにする。鶏手羽先は手羽中と手羽先の先端に分ける(point)。
(2)鍋にオリーブオイルをひき、手羽中の皮目が下になるように入れ、手羽先の先端、長ねぎの白い部分、その上ににんにくをのせて弱めの中火で4~5分焼く。きれいな焼き色がついたら、さっと混ぜながらさらに1分ほど焼く。
(3)水、塩、じゃがいも、長ねぎの青い部分を加えたらふたをして、弱めの中火で10分煮る。長ねぎの青い部分を取り出してスープと具材を器に盛り、黒こしょうをふる。

《POINT》最初に手で折って関節を外し、包丁で2つに切ったら下処理はOK
中華に洋風まで
焼きねぎと豚肉の中華スープ
焦げ目が決め手、香り豊かな中華仕立て

材料(2人分)
・豚バラ肉(薄切り)……150g
・長ねぎ……1本
・乾燥わかめ……3g
・塩……小さじ1/2
・水……400ml
・白ごま……大さじ1
・粗びき黒こしょう……適量
・ごま油……大さじ1
【作り方】
(1)豚バラ肉は食べやすい大きさに切る。長ねぎは4cm長さに切る。乾燥わかめは水に5分ほど浸して戻す。
(2)鍋にごま油をひき、豚バラ肉、長ねぎを入れて、しっかりと焼き色がつくまで焼く。
(3)水、塩を加え、煮立ったらふたをして弱火で5分煮る。
(4)わかめ、白ごま、黒こしょうを加えて、ひと煮立ちさせたら器に盛る。
《POINT》しょうゆを加えたような色合いは、ねぎと豚肉の焦げから出る自然なうまみ。少し焼きすぎくらいがベスト
チョリソーとキャベツのスープ
しっかり味のチョリソーから濃厚なうまみが

材料(2人分)
・チョリソー……4本(80g)
・キャベツ……3枚(100g)
・にんにく……1かけ
・塩……小さじ1/2
・水……400ml
・オリーブオイル……大さじ1
【作り方】
(1)チョリソーは斜め薄切りにする。キャベツは5mm幅の細切りに、にんにくは薄切りにする。
(2)鍋にオリーブオイルをひき、チョリソー、にんにくを入れて、にんにくが焦げないように2分炒める。
(3)キャベツを加えてさらに1分炒め、水、塩を加えて煮る。煮立ったらふたをして、さらに弱火で5分煮込み、器に盛る。
どんな塩を使えばいいの?
「天然塩がおすすめ。天然塩は海水を煮詰めて乾燥させたもので、ミネラルをしっかり含んでいて、うまみや甘み、ほんのりした苦みも感じられ、スーパーでも購入できます。
反対に、原材料表示に『塩化ナトリウム』と書かれているものは精製塩で、ミネラルがほとんど取り除かれているので、塩だけスープに使うと物足りなく感じることも」(西岡さん)
塩にプラス1調味料でさらにコク深く
鮭とじゃがいものみそバターコーン
みそのコクで濃厚な味わいに

材料(2人分)
・鮭(甘口)……2切れ
・じゃがいも……1個(160g)
・しいたけ……4個
・コーン缶(水煮)……50g
・塩……小さじ1/4
A[にんにく(すりおろす)……1/2かけ、牛乳……200ml、水……250ml]
・みそ……大さじ1
・バター……10g
・オリーブオイル……大さじ1
【作り方】
(1)鮭は1切れを3~4等分に切る。じゃがいもは小さめのひと口大に切る。しいたけは石づきを切り落として軸を手でさき、かさは薄切りにする。コーン缶は水けをきる。
(2)鍋にオリーブオイルをひき、じゃがいも、しいたけを入れて1分30秒炒める。
(3)塩とAを加えて煮立ったら、鮭、コーンを加えて3分煮る。
(4)仕上げにみそ、バターを溶かし入れ、弱火で1分煮て、器に盛る。
きのこ尽くしのとろみ汁
なめこのとろみで食欲がないときにもスルスル食べられる

材料(2人分)
・しいたけ……2個
・しめじ……100g
・なめこ……1袋
・絹ごし豆腐……150g
・塩……小さじ2/3
・しょうゆ……小さじ2
・水……500ml
・粗びき黒こしょう、ラー油……各適宜
【作り方】
(1)しいたけは石づきを切り落として軸を手でさき、かさは薄切りにする。しめじは石づきを切り落としてほぐす。なめこはさっと洗って水けをきる。豆腐は1cmの角切りにする。
(2)鍋に豆腐以外の(1)を加え、水、塩、しょうゆを入れて火にかけ、煮立ったら弱火で5分煮る。
(3)豆腐を加え、再度煮立ったら器に盛る。お好みで黒こしょうをふり、ラー油をまわしかける。

教えてくれたのは……西岡麻央さん●野菜の料理家。国際中医薬膳師。料理研究家の井上絵美さんに師事し、後に独立。『キユーピー3分クッキング』(日本テレビ系)の出演ほか、メニュー監修をはじめ、レシピ開発、フードスタイリングなど幅広く活動中。

レシピ考案・料理/西岡麻央 スタイリング/本郷由紀子 撮影/土居麻紀子