全国30代~60代男女300人が選んだー歌舞伎役者トップ5

 興行収入133億円超え(9月7日時点)の大ヒットを記録し、今や社会現象となった映画『国宝』。歌舞伎界の血を引く男と引かぬ男の壮絶な生きざまを描いた物語で、主演の吉沢亮と横浜流星の見事な女形も話題に。実写の邦画が100億円を突破するのは22年ぶりで、歴代2位の快挙を達成している。

 映画『国宝』をきっかけに、歌舞伎役者に興味を持った人も多いはず。そこで、全国30代~60代男女300人にアンケートを実施。あなたの好きな歌舞伎役者は誰ですか?

好きな歌舞伎役者4〜5位

坂東玉三郎

 5位は坂東玉三郎(75)。アンケートには、

「たたずまいが美しく、プロ意識が高い」(東京都・女性・56歳)

「とにかく美しいのひと言。歌舞伎の家に生まれたわけではないのに努力したと思う」(広島県・女性・58歳)

「芝居にストイックなところ」(茨城県・女性・52歳)との声が集まり、20票を獲得した。

「本当に美しく舞台に陶酔し、その世界にぐっと引き込まれてしまう。同時にリアルにその人物像が見えてくる。まさに希代の女形」(歌舞伎に詳しい演劇ライター)

 坂東玉三郎は、一般家庭の出でありながら名女形として早くから名を馳せ、2012年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に指定された。まさにリアル『国宝』で、原作のモデルではないかと話題になった。

「古典作品の素晴らしさはもちろん、この夏の新歌舞伎『火の鳥』もとても良かった。彼の舞台をまだ見たことがないという方は絶対に見たほうがいい」(同・ライター)

松本白鸚

 4位は松本白鸚(83)。「歌舞伎もだけど、ミュージカルの役者として好き」(大阪府・男性・66歳)

「大河ドラマの『黄金の日日』のころから好きだった」(東京都・男性・66歳)

「歌舞伎役者としての品格を感じるし、俳優としても魅力的だと思う」(北海道・男性・46歳)

 と、22票を獲得した。八代目松本幸四郎(初代白鸚)の長男として生まれ、3歳で初舞台。歌舞伎のほかミュージカルや舞台、テレビ出演も多く、一般の知名度はとりわけ高い。

「幅広いジャンルで活躍する歌舞伎役者の先駆け。ミュージカル『ラ・マンチャの男』はライフワークとして続け、ブロードウェイでも主演されている。今では珍しくないかもしれないが、あの時代に本場へ行くのはすごいことだった」(前出・ライター)

 息子の松本幸四郎に加え、近年は孫・市川染五郎との共演も増えた。ちなみに、染五郎は7票を集め9位にランクイン。

「9月は『菅原伝授手習鑑』で三代で共演していて、また11月には三谷幸喜さんの新作歌舞伎『歌舞伎絶対続魂』(ショウ・マスト・ゴー・オン)に三代で出るのでそちらも注目」(同・ライター)

3位は『半沢直樹』で見せた演技が良かった

片岡愛之助

 3位は片岡愛之助(53)。「歌舞伎だけではなくドラマの演技力がすごい」(岐阜県・女性・30歳)

「品があるところとドラマ『半沢直樹』で見せた演技が良かった」(兵庫県・男性・56歳)

「歌舞伎だけでなく、さまざまな演技がうまい。顔が整っていてキレイ」(広島県・女性・62歳)

 と、24票を獲得。一般家庭に生まれ、子役としてキャリアを積む。二代目片岡秀太郎の養子となり、六代目片岡愛之助を襲名。2013年放送のドラマ『半沢直樹』(TBS系)での怪演が話題を呼び、知名度を高めた。

「養子から大成したということで、ドラマでブレイクする前から歌舞伎の世界では知られていましたし、人気でした。歌舞伎は世襲制とはいえ、実力世界のところはある。愛之助さんのほかにも一般家庭出身の方はいて、若い方だと中村梅玉さんの養子になった莟玉さんや、十八代目中村勘三郎さんの部屋子の鶴松さんなども頑張っています」(前出・ライター)

 映画『国宝』ブームから派生したのがロケ地巡り。

「9月30日から10月5日まで兵庫県の永楽館で永楽館歌舞伎に愛之助さんが出演します。ロケ地になっていた劇場で、吉沢亮さんが化粧をするシーンなどがここで撮影されました。映画『国宝』ファンはぜひ」(同・ライター)

祖父の初代松本白鸚の当たり役といわれたドラマ『鬼平犯科帳』の鬼平を継承した松本幸四郎

 2位は松本幸四郎(52)。

「芝居がうまく、男の色気というか、粋なところがある」(東京都・男性・63歳)

「現代劇ではまったく魅力を感じなかったが、歌舞伎で見たときのカッコよさに衝撃を受けた」(東京都・女性・53歳)

「ドラマで見ていて、凛々しさを感じる」(京都府・男性・68歳)

 と、38票を獲得。父・白鸚と共にトップ5入りを果たした。父と同様マルチプレイヤータイプで、歌舞伎のほか現代劇にドラマ、映画と活躍の場は広い。

「この世代のリーダー格で、古典はもちろん新作もすごく魅力的。ご自身で“歌舞伎NEXT”という新たなジャンルを立ち上げ、とても素敵な作品を作っている。アンケートのコメントに色気があるとありますが、まさにそう。色気は歌舞伎の大切な要素なんです」(前出・ライター)

 9月は歌舞伎座で上演された松竹創業130年記念作『菅原伝授手習鑑』で大役を務め、今後も主演作が続く。

1位は若手のリーダー格

尾上松也

 1位は尾上松也(40歳)。

「歌舞伎役者以外にも幅広いジャンルで活躍している。多芸多才な方なので好感が持てます」(神奈川県・男性・34歳)

「バラエティー番組で見て面白い人だと思った。当たり前だけど、演技力もあり、歌もうまいのは素晴らしい」(石川県・女性・35歳)

「ドラマでもいい味を出しているし、顔が好き」(滋賀県・女性・43歳)

 と、42票を獲得。六代目尾上松助を父に持ち、5歳で初舞台。20歳のときに父が急逝し、若くして一門を率いている。

「毎年1月に浅草公会堂で開催される若手の公演『新春浅草歌舞伎』で、若手をまとめる立場としてここ10年引っ張ってきました。人気もあり、実力もあり、若手のリーダー格」(前出・ライター)

 歌舞伎に限らず、ミュージカルやドラマ、バラエティー番組でもおなじみに。

「『刀剣乱舞』を題材にした新作歌舞伎を演出、主演したり、歌が上手でミュージカル『エリザベート』に出演したり、城田優さん、山崎育三郎さんとユニットを結成して公演をするなど、幅広い活躍をされている。若いころから自主公演を立ち上げ精力的に頑張ってきて、ここまで上りつめてきた感がある」(同・ライター)

 マルチに活躍する彼ら歌舞伎役者の真の魅力を味わえるのが歌舞伎の舞台。

 この秋は歌舞伎公演が花盛りで、歌舞伎座では10月に『義経千本桜』が、福岡・博多座と京都・南座では市川團十郎白猿の『市川團十郎 特別公演』が、名古屋・御園座では八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助の襲名公演も控えている。

「映画だと凝縮して描かれていた主人公たちの成長が、生の歌舞伎では実際に目にできる。例えば白鸚さんのファンは、幸四郎さんの初舞台からご覧になっているでしょう。御園座での襲名公演は親子の『口上』もあり、11歳の菊之助さんの襲名から追いかけることもできる。初舞台からどんどん年を重ねていく過程を見ることができ、リアルな『国宝』が楽しめるのが面白い」(同・ライター)

 この秋は劇場へ足を運び、推しの歌舞伎役者を見つけてみてはいかがだろうか。

<取材・文/小野寺悦子>