池脇千鶴

 間もなくスタートするNHK連続テレビ小説(朝ドラ)『ばけばけ』。予告動画の再生回数はすでに200万回を超え、放送前からドラマへの期待度は高まっている。

 ドラマの舞台は明治中期の島根県松江。ヒロイン・松野トキのモデルとなっているのは「怪談」の著者でもある小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)の妻・小泉セツ。そんなトキを演じる高石あかりはもちろんだが、脇を固める豪華な俳優陣にも注目が集まっている。

池脇千鶴の“変貌ぶり”

 吉沢亮を始め、岡部りょう堤真一柄本時生など、お馴染みの朝ドラ経験者が顔を揃え、また、かつてヒロインを務めた池脇千鶴シャーロット・ケイト・フォックスも出演しているのだが、特に注目を浴びているのが池脇だ。

 24年ぶりに朝ドラに出演する池脇が、なぜ話題になっているかというと、

「先日、『ばけばけ』の試写会があり、池脇さんも出席していたのですが、その変貌ぶりに取材陣は驚かされました。最初は誰かわからなかったほどです」(スポーツ紙記者)

 ネットでも、「この女優は誰?」という声が上がったほどだ。

 2001年、『ほんまもん』でヒロインを演じた池脇の芸能界デビューは1997年。15歳の時に出演したテレビCMだった。覚えている人も少ないだろうが、池脇は、宮沢りえが初代を務めたあの『リハウスガール』の8代目だ。このときのオーディションでは、CMディレクターとして数々の名CMを生んだ映画監督・市川準氏に見初められ、8000人の中から選ばれている。その2年後に、市川監督作品『大阪物語』で映画デビューを果たすと、第54回毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞と第73回キネマ旬報新人女優賞などを受賞した。

『ほんまもん』でヒロインを演じた後も、2004年には話題になった映画『ジョゼと虎と魚たち』に出演し、第18回高崎映画祭最優秀主演女優賞を受賞。その演技は今でも語り継がれている。その後も数々の映画に出演し、国内の映画賞も数多く受賞するなど、今では押しも押されもせぬ実力派俳優となった。

“池脇流”の役作り

 映画ライターによれば、

「主演映画は少ないですが、多くの話題作に出演し、その存在感を見せつけています。個性的な演技は好き嫌いが分かれるところでもありますが、監督・プロデューサーなど制作サイドではファンも多く、助演俳優としては欠かせない存在となっています。数えきれないほどのドラマや40本を超す映画に出演してきただけのことはありますね。30歳を過ぎてからは母親役を演じることが多くなっていますが、どの役もとてもリアリティーがあり、まったく違和感がない。彼女の演技力は誰もが認めるところです」

『ばけばけ』では、ヒロインの母親・フミを演じるが、これまで視聴者が抱いていたイメージとはかなり違う池脇がそこにいた。これが“池脇流”の役作りだ、というのは前出の映画ライター。

映画『男はつらいよ お帰り寅さん』プレミア試写会 囲み取材&舞台挨拶での池脇千鶴('19年12月)

「過去にも映画やドラマで、役作りのためにあえて太ったこともありますし、2つの作品を掛け持ちしているのも関わらず、片方の作品の監督に“太れ”と言われて、体重を増やしたこともありました。ロバート・デニーロの役作り法は『デニーロ・アプローチ』と呼ばれていて、役に合わせて顔かたちや体型まで変化させ、そして役にあった雰囲気までもを作り上げる演技法。池脇さんも、まさにそれです」

 彼女は2021年にファッション誌『SPUR』のインタビューでこう語っている。

《目指しているのは「安心して見てもらえる俳優」。物語にちゃんと溶け込んでいて、『実際にいてもおかしくないよね』って思ってもらえる。そんな俳優になりたいとずっと思っています》

 その想いはすでに10代のころから持っていたそうで、彼女の持つ“俳優魂”が伝わってくる。

 “大化け”した池脇が挑む『ばけばけ』に、期待はさらに膨らむ――。