横浜F・マリノスのロゴ、クラブスローガン(公式HPより)

 1993年のJリーグ発足以来、1度もJ2に降格したことがない『横浜F・マリノス』が危機に面している。現在の順位は20チーム中の17位で、18位の横浜FCとの勝点差はゼロと残留争いを強いられているのだ(9月30日時点)。

 そんな5度のリーグ優勝経験もあるクラブが置かれた状況ではやむなしか、マリノスの経営権を所有する親会社『日産自動車』が近年の業績悪化によって、ついにチーム売却に乗り出している

 Jリーグ事情に詳しいサッカーライターによると、

「なんでも売却先の候補に上がっているのが、クラブビジネスに興味を示している家電量販店『ノジマ』ほか複数企業。2019年にも『メリカリ』が鹿島アントラーズの株を約15億円で取得していますが、マリノス買収でも同等額が見込まれます。

 ノジマは横浜市に本社があり、さらに相模原市などをホームタウンとする女子サッカークラブ『ノジマステラ』を保有しているだけに運営も素人ではありません。“横浜ブランド”を継続するためにもうってつけの企業といえます」

 1972年に日産自動車サッカー部として創設され、日本サッカーリーグ時代も強豪として君臨。日本代表で「10番」を背負った、“ミスターマリノス”こと木村和司氏(67)や中村俊輔氏(47)ら多くの名選手も輩出してきた名門だ。

 もしも売却が実現した場合、50年以上にわたって歴史を築き上げてきた“日産のマリノス”が一旦の幕を下ろすことになる。そんな伝統あるクラブだけに、今回の売却騒動を機にSNS上では、

横浜Fマリノスの「F」の意味

《最近では横浜Fマリノスの「F」の意味を知らない人も居そう》
《横浜F・マリノスのFが何なのか、知らない人も増えただろうし、本当に身売りとなれば、Fが名前から消える可能性もあるのか》
《母体が日産じゃなくなったら最早マリノスちゃうやん。マリノスはフリューゲルスのFも背負ってんだぞ。日産よ、正気なのか

 あらためて横浜F・マリノスの「F」を語る、当時の“Jリーグ最大の事件”を知るオールドファンの声も見受けられる。

横浜F・マリノスのホームタウン「日産スタジアム」

 マリノスやアントラーズと同様、Jリーグ発足時のチーム「オリジナル10」として名を連ねた『横浜フリューゲルス』。現在はサッカー解説者、タレントとしても活躍する前園真聖氏(51)も所属した、マリノスと同じ横浜市をホームタウンとしたクラブだ。

 ところが1998年、親会社だった佐藤工業が経営不振によって運営撤退し、それにANA(全日本空輸)も追随。選手やサポーターも最後まで存続の道を模索するも、マリノスに吸収合併される形でチームは実質上の消滅へ

 そんなフリエ(フリューゲルスの愛称)を残すべく、横浜マリノスのチーム名に加えられたのが「F」のイニシャル。それでもフリューゲルスを諦めきれないサポーターらによって、1998年に市民クラブとして発足したのが『横浜FC』。翌1999年にはJFL(日本フットボールリーグ)への加盟が許可された。

 後の横浜FCといえば、“キングカズ”こと三浦知良選手(58)ら元日本代表選手の加入もあって、徐々にチームとしての戦力、運営も向上させて2007年にJ1初昇格。以降はJ2との昇格・降格を繰り返しているが、2025年シーズンは奇しくもマリノスと残留争いをしているわけだ。

マリノス買収をひそかに狙う企業

 2026年の売却をメドに各方面で交渉を進めるというマリノス。先のサッカーライターによると、売却先としてこんな情報も。

横浜DeNAベイスターズを運営する『DeNA』の動向が注目されています。野球に隠れて広く知られていませんが、同社は2022年にJ3『SC相模原』を運営するスポーツクラブ相模原の株を取得して子会社化。SC相模原の経営権も握っています。

 またマリノスとのコラボ企画も重ねているベイスターズだけに、同じ横浜市に本拠地を置くスポーツチームとしてサポーターも馴染みやすく、相乗効果も期待できます。本社は渋谷区ですが、総合的に見て土壇場でのDeNAもあると思いますね」

 いずれにせよ、クラブスローガンである『この街には、横浜F・マリノスがある。』が継承されることを、マリノス、フリエファンは説に願っているだろう。