自民党の新総裁となった高市早苗氏。日本初の女性首相となる見通し

 10月4日、自民党総裁選で勝利を収めたことにより、高市早苗新総裁が誕生した。

「高市さんは大学卒業後、まもなくテレビ番組のキャスターとして活動。当時から討論番組に参加するなど政治への関心が高く、1993年の衆院選にて無所属で出馬して初当選。1996年に自民党へ入党してからは保守派のエースだった安倍晋三さんに引き立てられて重要なポストに就くようになり、実績を重ねてきました」(全国紙政治部記者、以下同)

 2021年に初めて総裁選に立候補すると、同じく出馬していた岸田文雄氏や河野太郎氏に次ぐ集票力を誇示。このころから“日本初の女性首相候補”といった期待が寄せられるようになる。

「2024年に2度目となる総裁選では石破茂さんに敗れはしたものも、1回目の国会議員票も党員・党友票も石破さんを上回っていました」

 今回、3度目の挑戦で総裁の座を勝ち取った高市氏。著名人のビジュアルやたたずまいに関するコラムの執筆などを多数手がける推し活評論家として活動している沖直実さんは、最近の高市氏の変化を感じ取っていたようだ。

男女に受け入れられやすい変化

「以前からアピールしている阪神タイガースファンという側面も親しみやすさにプラスに働いたと思いますが、最近の高市さんはブルー系のスーツ姿が目立ち、化粧も薄くして柔らかい印象になっていました。かつて『人は見た目が9割』という本がヒットしたとおり、男性にも女性にも受け入れられやすい変化が、さらに支持を伸ばしたのかもしれません」

 これから行われる内閣総理大臣指名選挙を経て、順当にいけば日本の憲政史上初の女性首相となる高市新総裁を、専門家はどのように見ているのか。政治ジャーナリストの青山和弘さんに聞いてみた。

高市早苗氏(2020年)

「勝ちはしたものの、高市さんを支持する議員が多い旧安倍派は弱体化の傾向にあります。政権基盤を安定させるためには挙党態勢を構築する必要がありますが、小泉進次郎さんや林芳正さんなどライバルを重要なポストに起用する度量があるのか試されます。また、現段階で野党との交渉も誰が行うのか不明ですし、いいチームがつくれないと前任の石破さんのように短命政権となるかもしれません」

国民の理解を得られない可能性も

 政治評論家の有馬晴海さんも、先々を不安視している。

「高市さん自身は“女性初の首相”といったことを大々的にアピールせず、気骨のある政治家だと思いますし、彼女なら国民民主党や参政党に流れていった支持者を取り戻せるかもしれません。しかし現在、自民党が議席を減らしているのは、裏金問題や自民党と旧統一教会との関係といった安倍さんが残していった問題が大きい。その点で言えば、安倍さんがいたころの自民党を目指すような高市さんのスタンスだと、国民の理解は得られないでしょう」

 前出の青山さんも、

「小泉純一郎政権なら郵政民営化、安倍政権は集団的自衛権やアベノミクスなど、良しあしは別として目標を明確に掲げていましたが、今回の総裁選の立候補者は5人ともやりたいことがわかりませんでした。国民の声に応える目標を掲げなければ石破政権の二の舞いになるかもしれません」

 高市氏が自身のビジョンを示さない限り、自民党に漂う暗雲は払拭できない……。