
スーパーでは特売品や見切り品を選び、外食も控えているはずなのに、なかなか増えない貯金額。老後のためにも、しっかり貯蓄をしておきたいが……。
貯まる人と貯まらない人の“差”
「そもそも、50代、60代はお金を貯めにくい世代ともいえます。60歳時点で貯蓄が100万円未満の人の割合は、28.9%(※)という結果も出ているんです。※「2024年の還暦人(かんれきびと)に関する調査」(PGF生命、2024年実施)
この世代は子どもが巣立っていたとしても、教育費の返済をしていてゆとりがなかったり、夫が定年を迎えて収入が減ったりと、思うように貯金ができないという現実があります。ほかにも、老親の介護費用を負担していて、がんばって貯めたお金を取り崩しているという人も多いのです」
と話すのは、元銀行勤務で家計管理や節約術に詳しい、ファイナンシャルプランナーの飯田道子さん。
「また、妻がパートで稼ごうにも、所得税や社会保険料が発生しないように夫の扶養内で働こうと思うとどうしても限度がありますし、終わりの見えない物価高も追い打ちをかけてます。
ただ、お金を貯めるには『収入を増やす』か『支出を抑える』しか道はないので、収入を増やすのがむずかしい以上、入ってくるお金をいかに守ろうとするかが、貯まる人と貯まらない人の大きな差になってきます」(飯田さん、以下同)
ゲーム感覚で楽しむのが秘訣
貯まらない人は、お金が逃げていく習慣に無自覚なことが多く、せっかく節約をしていても、プラマイゼロになっていることも少なくない。
「固定費だから仕方ないと、本当に必要なものかきちんと判断せずに放置していたり、長年『まあいっか』で済ませてきた習慣で無駄な支出をしていることが多いです。
例えば、使っていないスポーツクラブやサブスクの会費、なんとなく続けている新聞購読など、惰性の支出に心当たりがある人もいるはず。さらに、キャッシュレス決済の普及で『お金を使っている実感』が薄れ、明細を確認して初めて使いすぎに気づく人も多い。
ATMの時間外手数料やクレジットカードの年会費なども積み重なれば大きな額になります。また、基本的なことにはなりますが、夫婦で支出の把握をすることがとても大事です。給与明細をしっかり確認し、月の固定費や変動費を共有することは、細かい節約術に取りかかる前の大切なステップですね」

一方で、節約は我慢の連続では続かない。飯田さんは「ゲーム感覚で楽しむのが長続きの秘訣(ひけつ)」とも助言する。
「先月よりも多く手元にお金を残せたら、上限を決めたうえで“お金のチートデー”をつくってちょっと良い外食をするなど、ごほうびを設定するとストレスにならず、ゲーム感覚で楽しめます」
お金が逃げる行動もチェックして、コツコツお金を貯めていこう!
お金が逃げるマイナス行動
元銀行員・マネーのプロが指摘
1:使っていないサブスクをだらだら続けている
「50代、60代の女性が陥りがちなのが、スポーツクラブや生協など、たいして使っていないのに払い続けているケースです。入会特典につられて入ったものの、月に1回しか行かない、まだ使うタイミングがあるかもと、解約をしないでいるとだらだら出費に。
また、“仕事で必要だから”と夫が新聞を取っているものの、実際はほとんど読んでいないという家庭もあります。便利だからと続けてしまいがちなサービスも、割高で活用しきれていないなら一度見直すこと。
都度利用やネット情報に切り替えれば、無理なく固定費を減らせるはずです。動画配信サービスなど、なんとなく入ったサブスクもこれを機に見直しをしてみてください」(飯田さん、以下同)

2:“比較せず即決”でお金を使ってしまう
「“欲しい”と思ったその場で即決するのは、お金が貯まらない人に多い行動です。例えばお弁当箱ひとつとっても、よほどのこだわりがなければ、まずは100円ショップの300円商品などで代用できないか試してみるのも手。
日用品も、AmazonなどのECサイトでセールのタイミングを狙ったり、都度買いよりまとめ買いが割安か比べてみたりと、少しの手間で出費を抑えることができます。比べて買う習慣を身につけてみて」
3:手数料に無頓着な生活を送っている
気づかぬうちに払ってしまっているのが、ATMの手数料。自分の銀行のATMを使わずにコンビニで引き出したり、時間外に引き出したり……。1回110〜220円でも、何度も重なれば大きな出費に。
「貯まる人は、こうした小さな支出を自然と避けています。銀行員時代によく見たのは、通帳やカードをなくし再発行して何度も手数料を払っている人。同じ人が何度もなくしている印象でした。
印鑑の再登録となれば、新しい印鑑を買いなおす費用もばかになりません。余裕のない暮らし方をしていると、こうした無駄な支出が積み重なり、お金は貯まりません。まずは1か月で必要な支出額を把握し、まとめて引き出す心がけを。地味ですが、こうした工夫の積み重ねこそが貯蓄につながります」
4:「節約=我慢」と思い込んでいる
「我慢する節約は長続きしません。おすすめは、節約を楽しんで、ごほうびを用意すること。節約を楽しむために、私は得するポイ活をゲーム感覚で楽しんでいます。歩いた歩数がPayPayのポイントになる『クラシルリワード』などのアプリで、現金としても使えるポイントを稼ぐんです。
そして、前の月より支出を2000円抑えられたら、カフェで好きなものを頼んでゆっくりする時間をつくるなど自分にごほうびをあげます」
5:「お金がない」が口ぐせになっている
「『お金がない』が口ぐせになっている人は要注意。ネガティブな言葉は気持ちを下向きにさせ、浪費や衝動買いを招くこともあるからです。また、『お金がないから貯蓄ができないのは仕方ない』と思い込んでしまうと、思考も行動も止まりがちに。
本当は節約できる部分があるのに、家計の見直しを後回しにしてしまうなど、悪循環に陥ります。まずはその口ぐせを封印して、『できることから始めてみる』のが、貯められる人への第一歩です」

教えてくれたのは……飯田道子さん●ファイナンシャルプランナー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。約8年間の銀行勤務を経て、ファイナンシャルプランナー資格を取得。現在は、マネー誌への寄稿や個別相談、セミナー講師など幅広く活動中。