
「大森(立嗣)監督の作品が好きで、いつか出たいと思っていました。それが、自分も好きなアートに関係する作品、かつ初めての時代劇。いろんな挑戦があってうれしいです」
と話すのは、10月17日(金)公開の映画『おーい、応為』に出演している高橋海人。主人公のお栄(長澤まさみ)は、天才浮世絵師・葛飾北斎(永瀬正敏)の娘。嫁ぎ先から出戻ると、オンボロ長屋で煙管を吹かしてばかり。しかし絵筆を手に取ると、意識は一変。葛飾応為の名を得て、父に“美人画ではかなわない”と言わしめるほどの才を発揮していく……!
「色気のある人って余裕がある」
高橋が演じる北斎の門弟・善次郎は、実在の絵師・渓斎英泉。絵に命を燃やす父娘を見守り続ける。
オファーは、高橋が若林正恭(オードリー)役を演じたドラマ『だが、情熱はある』('23年)を見たプロデューサーから届いた。
「頑張ったものが評価されて、それで呼んでもらえて。こんなにうれしいことはないです。一つひとつが(次に)つながるって、生きていくうえでの醍醐味だとも思いました。そして、期待していただいたからには応えたい。なんかそうやって、今後も一つひとつがつながっていったら、すごくうれしいことだなと思います」
絵師の善次郎は遊郭で遊ぶ緩さもあり、ひとつに結んだ長髪がとてもよく似合っている。そして、姉弟子である応為に口説き迫るシーンも。高橋が今までに演じた役柄の中でも、屈指の色気が感じられる。
「あははは(笑)。ありがとうございます。自分で色気を出そうとしたわけではないんですが、大森さんの書かれた脚本がすごく魅力的で。そう思っていただけたならラッキーです(笑)。色気のある人って、動きがゆったりして、余裕感がある気がしていて。演じる中で、そこは意識していました。
例えば、お栄さんといろいろあった後でも笑い飛ばせる。多分、普通の人にはできないことだと思うんですけど。それまでの善次郎の人生にはいろんなことがあって、妹たちを養いながら生きてきたから、そんじょそこらのことじゃへこたれないし、食らわない。そんな余裕感や器の大きさは、やっぱり色気があるなと感じます」
選択の上で「今、自分はここにいる」
共演した長澤や永瀬について聞いてみると、
「学ぶことはたくさんありました。表現の一つひとつや放った言葉が、脳みそをリフレインするほど印象に残ったり。あとはスピード感の抑揚とか。そんなおふたりとご一緒できたことが、もうめっちゃ財産です。
当初、善次郎が絵を描くシーンはなかったんです。でも僕自身が絵を描くことを監督に知っていただけ、加えてもらえて。現場には“練習小屋”がありまして。行ってみるとおふたりが黙々と練習し、どんどん上達されていて。僕も加わり、すごく練習しました。本当に部活みたいでした(笑)」

家族のために絵を描いていた善次郎だったが、途中で筆を置き、別の職業に就く。高橋に、職業をかえたいと思ったことはあるかと尋ねると、
「善次郎にとって、将来のことを考える分岐点。そういう意味で言うと、選択を迫られる分岐点はすでに結構いっぱいあって。事務所に入るところから、そう。ずっとダンスをやって生きてきた自分にとって大きな決断でしたから。グループが始まり、その形が変わったり。選択する場面はいっぱいありましたが、でも今、自分はここにいるということが答えですね」
と、ニッコリ。現在26歳、20代も後半に突入。俳優として、King & Princeとして、どう過ごしていきたいと思っているのだろう?
「やりたいことも、できることも年齢によって変わっていく。だからこそ、“今やりたい”“できそうかも”と思ったものは、そのフレッシュな気持ちのまま全部やりたい。超欲張りなんですけど(笑)。
キンプリとしては、応えられることには全部応えたい。そのあたりのバランスは(永瀬)廉と常々話し合っています。
俳優に関しては、役は自分で選べるものじゃないので。オファーをいただけたなら誠心誠意、めちゃくちゃ本気で。それに、経験値が減ることは絶対ないし、増えていく一方だと思うので。成功しても失敗しても、とにかく全部全力で。
そうやってずっと本気で頑張っていれば、きっと大きくなっていけると思っていて。その経験のもと、30代を迎えたいですね」
マイブームは「恋愛リアリティーショー」
本作に加え、11月14日には映画『君の顔では泣けない』が公開を迎える。7月期には主演ドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』、さらにはバラエティー番組のレギュラー出演、イベントやブランドのアンバサダー……。King & Princeとしては17thシングル『What We Got〜奇跡はきみと〜/I Know』を8月にリリースしている。つい“高橋海人は、本当は何人いるのか?”と思ってしまうが、
「あははは。まさかのひとりです(笑)。もっと時代が進化したらクローンを……ウソです(笑)。でも表に立つのは自分であり、キンプリのときはふたりだけど、ファンのみんなを含めて本当にたくさんの人に支えていただいているので。だから、疲れるし大変だけど“でもやるよな”ってなります。動いていないと、時間がもったいないので」
トップアイドルとして多忙を極めようとも、その志は清々しいほど真摯で、まっすぐだ─。
リラックスタイムは?
「急に釣りに行きたくなったら、行きますね(笑)。それほどの時間が取れないときは、手っ取り早くゲームですね。普段からキンプリやお芝居のことを考えたり、やったりしているので、帰宅時はわりとアドレナリンバキバキ。ゲームって、脳を強制的にシャットダウンできるんですよ。家でも役のことを考えていると、自分がいなくなっちゃう気がするので。あとは最近、恋愛リアリティーショーもよく見ています。止まらないんですよね。寝る間を惜しんで見ているから、結局どうなんだろ?(笑)」

『おーい、応為』
10月17日(金)全国ロードショー
出演/長澤まさみ、高橋海人、永瀬正敏 ほか
配給/東京テアトル、ヨアケ
(c)2025「おーい、応為」製作委員会
撮影/山田智絵 ヘアメイク/浅津陽介 スタイリング/丹ちひろ(YKP)