
大どんでん返しとは、まさにこのこと。10月4日の自民党総裁選で本命と囁かれていた小泉進次郎が敗北し、高市早苗が勝利した。
「それまで各メディアが小泉さん優勢と報じており、投開票直前の10月3日には、小泉さんの陣営は勝利を確信して、先んじて祝勝会を開いていたとも報じられています。下馬評を覆す逆転負けと言っていいでしょう」(全国紙政治部記者、以下同)
小泉進次郎の総裁選中のスキャンダル

進次郎氏は、総理大臣を務めた小泉純一郎氏の次男。2009年に28歳の若さで衆議院選挙を初当選すると、たちまちスター性を発揮した。
「元首相の息子という話題性に加えて、端正なルックスで注目の的に。街頭演説を行えば人が集まりすぎて交通整理が必要になるほどの人気政治家になりました。2019年に環境大臣を務めたころから“将来の首相候補”といった期待の声が挙がるように。一方で“気候変動問題をセクシーに”といった独特な言い回しなどから、その答弁能力が不安視されることもしばしばでした」
そんな進次郎氏の“強み”は何だったのか。推し活などのファン心理に詳しく、イケメン評論家として活動する沖直実さんに聞いてみた。
「以前『人は見た目が9割』という本がヒットしたとおり、誰しも“花鳥風月”といった美しい物に惹かれます。進次郎さんのようなイケメンが支持されるのは人間の本能かと思われます。彼の個性的なフレーズも、結局は人の心に残っているわけですから、政治家としての強みなのでしょう」
高い人気と知名度を誇りながらも敗れたのは、総裁選中のスキャンダルが致命的だったかもしれない。
「小泉陣営で広報責任者の牧島かれん元デジタル相が、党関係者に対して配信動画に小泉さんを称賛するコメントを書き込むよう要請する、いわゆる“ステマ疑惑”が報じられました。続けて小泉さんの地元である神奈川県の自民党支部で、高市さんを支持するとされる826人もの党員が本人の断りなく離党扱いにされていたとの報道もありました」(前出・全国紙政治部記者)
勝利したとしても前途多難
敗北した進次郎氏を専門家はどのように見ているのか。政治ジャーナリストの青山和弘さんに聞いてみた。
「前評判では、進次郎さんを支える中堅ベテラン議員がたくさんおり、自民党全体でチームを作りやすく、野党との交渉も進めやすいということから、党員票で多少遅れをとっても優勢と見られていました」
しかし、仮に進次郎氏が勝利したとしても前途多難だったようだ。
「今回の総裁選に出た候補者全員に言えることですが、候補者それぞれの独自色、やりたいことが伝わりませんでした。現在の自民党は少数与党のため、強く打ち出せないというのもあるのでしょうが、それを言い訳にしていては、今後の選挙で勝てませんし、前任の石破茂さんのように長期政権を作れないでしょう」(青山さん)
政治評論家の有馬晴海氏も進次郎氏の不安要素を指摘した。
「最近の自民党は、裏金問題や旧統一教会との親密な関係を疑われるなど“インチキ臭さ”が払拭できていませんでした。それらを受けて自民党は再出発を掲げたはずなのに、進次郎さん自身がステマ問題のような新たな疑惑を作ってしまったのは致命的。彼は今回の総裁選で“解党的出直し”と語って党の抜本的な改革を目指していましたが、仮に進次郎さんが勝利したとしても、実現は難しかったでしょう」
日本初の総理大臣になるべく着々と役員人事を進める高市新総裁。進次郎氏は再び総裁を目指すか、それとも――。