『SixTONES』の松村北斗(左)と芳根京子

「いよいよ公開したんだなという興奮もありますが、不安な気持ちがあります」

 10月10日より公開された映画『秒速5センチメートル』で、主演を務めている『SixTONES』の松村北斗。初日に行われた舞台挨拶では、見えない重圧と闘っていたことを神妙な面持ちで口にした。

主演映画が突如中止に

「『秒速5センチメートル』は、新海誠監督の不朽の名作として知られる同名の劇場アニメーションを実写化したもので、公開前から注目を集めていました。プロモーションも大々的に行っていたので、松村さんにかかるプレッシャーも相当なものだったでしょう」(映画ライター)

映画『秒速5センチメートル』初日舞台挨拶のオフショット(映画公式Xより)

 公開へ無事にこぎつけたことで、役者としての階段をまたひとつ上った松村だが、時を同じくして、主演予定だった作品が頓挫するという悲劇に見舞われていた。

「来年公開予定だった、松本清張さん原作の『神と野獣の日』という作品を芳根京子さんとダブル主演で制作することになっていたのですが、クランクイン直前の9月中旬に突如、制作中止が決定したのです。

 映画の準備段階で台本が出来上がらなかったり、キャスティングがうまくいかなかったりして、クランクインが延期されることはたびたびあります。でも、クランクインの直前になって制作が中止になるというケースはほとんど聞いたことがありませんね」(制作会社関係者)

『神と野獣の日』は、『点と線』や『ゼロの焦点』『砂の器』などミステリー作品を執筆することが多かった松本氏が、初めてSFに挑戦した異色の長編小説。

「原作は1963年に発表されましたが、東京に核ミサイルが誤射されるという衝撃的な内容。清張作品の中でも、世間的にあまり知られていないのではないでしょうか」(文芸誌編集者)

 監督は『ガリレオ』シリーズや『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』シリーズ(ともにフジテレビ系)をヒットに導いた、西谷弘氏が務めることになっていた。

「制作も『昼顔』シリーズと同じ角川大映スタジオが担うことになっていたので、西谷監督との強力なタッグでヒットを狙えると期待が集まっていました」(テレビ局関係者、以下同)

 盤石なチームが結成されていたはずなのに、なぜプロジェクトは頓挫してしまったのか。

「制作するための予算が、当初予定していた金額から5億円ほどオーバーしてしまったんです。西谷さんはこだわりの強い監督で有名ですし、SFというジャンル的にもCGを多用しないといけなかったりと、予想以上にお金がかかってしまったんでしょう。結果として、制作会社での最終決裁が下りず、先へ進めなくなってしまったんです」

制作費の2倍の興収を稼がないといけない

 会社側もクランクインの直前まで作品の全貌を知らされていなかったとは思えないが、予算のオーバーに対して厳しい判断を下したことになる。

「一般的に映画は“制作費の2倍の興行収入を稼ぎだせないと失敗”と言われています。冷静に判断した結果、そこまでの売り上げを確保するのは難しいと思ったのでしょう。制作チームも、膨らんだ予算から5億円を削るのはさすがに難しかった。

 10月からのクランクインを前に、断腸の思いで中止を決めたといいます。松村さんはバイクに乗るシーンを自然に演じるため、撮影に向けてしっかり練習していたそうなので、ショックも大きいでしょうね」(前出・テレビ局関係者)

松本清張の『神と野獣の日』(Amazonより)

 延期ではなく中止ということになると、キャストやスタッフに与える影響も大きい。

「出演者はこの映画のために、ずいぶん前から1か月以上のスケジュールを空けていたのに、まったく仕事が無くなってしまった。スタッフに関しても、長期間確保していたスケジュールを急にバラされて困惑しているといいます。

 補償についての話し合いが目下、行われているようですが、はたして全員が納得するような金額が支払われるのかどうか……」(前出・制作会社関係者)

 映画の制作を担当する角川大映スタジオに、制作中止は事実なのか問い合わせると、

「弊社は制作を委託されているだけなので、そういったご質問はKADOKAWAへお問い合わせください」

 との回答があった。改めてKADOKAWAへも質問状を送ったが、期日までに回答はなかった。

 せっかくここまで準備したものがゼロになってしまうのは、あまりにも忍びない。なんとかもう一度、制作再開への可能性を探ってほしいけれど――。

※KADOKAWAから回答があり次第、追記する。