「世界!ニッポン行きたい人応援団」(テレ東公式サイトより)

 10月13日に放送されたテレビ東京の「世界!ニッポン行きたい人応援団」が大きな感動を呼んでいる。

趣向を変えたスペシャル版が話題

 普段は、日本の伝統や技術を学びたい外国人を日本に招くこの番組だが、今回は視聴者のアメリカ人夫妻から「アルバムの写真に写った日本人女性を探したい」という依頼が届き、趣向を変えたスペシャル版が放送されたのだ。

 そのアルバムは、依頼者夫妻がルクセンブルクを旅行中に、アンティークショップで見つけ、気になって購入したもの。写真はモノクロで数十年前のものと思われ、十代の可愛らしい日本人女性が写っていた。

 その後、依頼者は夫の仕事で沖縄で暮らすことになり、写真の女性を探すも手がかりは得られず、番組に依頼が届いたのだった。

 しかし、写真の女性はその後の人生で海外に渡ったのかもしれず、アルバムが人手に渡っているということは、存命かもわからない。ヒントは写真の一つに写っている学校名。それは東京・町田市にある玉川学園で、在学生だった可能性が高まる。だが学校に連絡を取ると、「個人情報のため」と情報提供を断られてしまう。

 けれど夫妻は、無謀にも学園近くの商店などで聞き込みを開始。玉川学園の古い教員と連絡が取れそうになるが、健康上の問題で面会が叶わないなど、捜索は難航する。

 アルバムの女性の特定は難しいかと思われたが、そんな時、ロケ隊の前に意外な人物が現れる。「踊る大捜査線」シリーズなどで有名な俳優の小野武彦で、彼も玉川学園の出身だったのだ。しかも、アルバムには昭和38年の日付のメモが見られ、小野と学年が近そうだとわかったことから、人物探しは急展開を迎えていく。

視聴者を魅了した人探し

 遠く離れたヨーロッパのルクセンブルクで見つかった日本人のアルバムという、少しミステリアスな題材と、一つ一つ結び目を解いていくような捜索過程のリアルさが面白くて、筆者もパソコンの手を止めて見入ってしまった。

 それは他の視聴者も同じだったようで、オンエア中からインターネット上には、

《たまたま見てる今日の『世界!ニッポン行きたい人応援団』めっちゃすごいわ》

《きまちゃん(※ゲスト出演していたJO1の木全翔也)目当てで見てるけど、なかなか面白そうな展開。見つかるかなー》

《卒業生の絆の強さと玉川学園駅界隈の地元愛が伝わってきて、感激!》

《こういう番組こそテレビで残して欲しい番組よね》

 などの声が相次いだ。

 もちろん実際には、画面には写っていない捜索過程もあったのだろうが、何より感動的だったのは、依頼主のアメリカ人女性の、持ち主に写真を返したいという純粋な気持ち。そのひたむきさに、スタジオ出演者の織田信成や高橋茂雄、若い木全翔也らも涙、涙の連続だった。

 ここでは、本編を見ていない方のために結末は伏せておくが、その内容は、作り事よりも事実の意外性が勝る感じで、まさにドラマよりもドラマチック。筆者はテレビ東京の、一般人を主人公にした台本の無いバラエティが大好きで、今回は番組の本来の主旨とは離れていたが、その魅力が存分に発揮された企画だった。

 見逃した人は1週間、Tverで観られる。感動の涙でデトックスしたい人も、ぜひご覧になってみては?

古沢保。フリーライター、コラムニスト。'71年東京生まれ。『3年B組金八先生卒業アルバム』『オフィシャルガイドブック相棒』『ヤンキー母校に帰るノベライズ』『IQサプリシリーズ』など、テレビ関連書籍を多数手がけ、雑誌などにテレビコラムを執筆。テレビ番組制作にも携わる。好きな番組は地味にヒットする堅実派。街歩き関連の執筆も多く、著書に『風景印ミュージアム』など。歴史散歩の会も主宰している。