名医が厳選した腎臓若返り食材 ※写真はイメージです

 いま、医師から「腎臓の機能が弱っています」、「このままだと人工透析になります」と言われている人が増えている。増えている理由のひとつは、糖尿病や高血圧の患者さんが増加しているためだという。

腎機能は食事で改善可能

「腎臓は生命維持に欠かせない働きをしている大事な臓器です。全身を巡った血液は腎臓に流れ込み、毛細血管が集まった糸球体で濾過され、きれいになった血液は体内に戻り、取り除かれた老廃物は尿として排出されます」

 と言うのは、腎臓専門医で東北大学名誉教授の上月正博先生だ。

「ここで重要なのは、糖尿病や高血圧は血管を傷つけるという点です。腎臓には血液を濾過するための毛細血管が集まっているため、糖尿病や高血圧が長く続くと血管へのダメージがたまり、腎臓の機能が徐々に落ちて慢性腎臓病になってしまうのです」(上月先生、以下同)

 実際、慢性腎臓病が進行すると血液をろ過することができなくなり、人工透析によって血液を機械的にきれいにする必要があるのだが、現在、人工透析を導入する理由の約6割が糖尿病または高血圧によるものだという。

「人工透析は週に3回、1回4~5時間も病院のベッドにい続ける必要があります。日常生活にかなりの負担ですし、なにより、人工透析になると脳卒中やがんなど深刻な病気のリスクが高まるのも事実。避けられるものなら避けたいですよね」

 これまで、腎臓は一度機能が落ちたら決して元には戻らないと言われていたが、いまは食事などで腎臓の機能が改善することがわかっている。

「そこで、私の長年の腎臓専門医としての経験から、加齢によって働きが落ちた腎臓を“若返らせる”食材を9種、厳選しました。これらの食材を日々の食生活にバランスよく取り入れれば、腎臓の機能が改善し、きっと人工透析を回避できると思います」

 上月医師が選んだ9種類の“腎臓若返り食材”を具体的に紹介していく。

名医が選んだ腎臓若返り食材

 それぞれの食材が腎臓にどのように効果的なのか、上月医師に簡単に説明してもらった。

1 ごぼう

「ごぼうには食物繊維が多く含まれており、食物繊維は体内に糖が吸収されるのを遅らせて食後の急激な血糖値の上昇を防ぎます。血糖値の急上昇は腎臓の大事な血管を傷つけるため、急上昇させない食物繊維は腎臓を守ってくれる強い味方です。さらに、食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があり、どちらも腎臓にとって大事ですが、ごぼうはそれらがバランスよく含まれている数少ない食材なのです」(上月先生、以下同)

2 きのこ

「きのこ類に含まれている水溶性の食物繊維は、私たちの腸の中にいる善玉菌の“エサ”になり、善玉菌の数を増やしたり活性化させたりするため、腸内環境を整えてくれます。腸内環境が乱れると腎機能が低下するので、きのこは腎機能を高めるのに役立ちます。日々の食生活にぜひきのこを取り入れてください」

3 こんにゃく

「こんにゃくに含まれている不溶性の食物繊維は、便のかさを増やして腸の蠕動運動を促し、便通を改善させる働きがあります。近年、便秘になると腎臓に悪影響を与えることがわかってきて、アメリカの研究では便秘が重くなるほど慢性腎臓病になるリスクが高くなると判明しました。腎臓病のリスクを下げるためにも便通をよくすることは大事なのです」

4 海藻

「海藻には善玉菌の“エサ”になる水溶性食物繊維が含まれているため、腸内環境をよくしますが、じつは海藻をエサにできる善玉菌は欧米人には少なく、日本人に多いと言われています。それは私たちの先祖が海藻を習慣的に食べてきたことで、海藻をエサにすることができる善玉菌が日本人の腸に定着したため。私たちにとって特別な食物繊維と言えるので、ぜひ海藻を食べて後世に引き継ぎたいものです

5 鶏むね肉

「タンパク質は腎臓に負担をかけるため、腎機能が低下している場合はタンパク質を食べすぎないことが重要ですが、大事な骨や筋肉を作ってくれているのもタンパク質です。そこでおすすめなのが、少ない量でタンパク質を多くとれる肉。鶏むね肉やささみが最適です。豚肉や牛肉の場合は、ヒレや赤身を選んでください」

6 脂ののった魚

「魚の脂はオメガ3脂肪酸と呼ばれる種類の脂で、血管を健康に保つ働きがあります。腎臓は毛細血管のかたまりでできていますので、血管を健康に保つことは腎臓にとってとても重要です。おすすめは缶詰。脂がポイントなので、脂の多いさば缶やいわし缶、さんま缶を選ぶようにしてください

7 ブロッコリー

「ブロッコリーには植物が有害なものから身を守るために作り出すファイトケミカルが豊富に含まれています。その一種であるスルフォラファンには強力な抗酸化作用があり、活性酸素による細胞の損傷を防いで腎臓を守る働きがあります。スルフォラファンは、ブロッコリーの芽であるブロッコリースプラウトに特に多く含まれており、最強の抗酸化野菜として注目を集めています」

8 トマト

トマトには抗酸化作用を持つリコピンが豊富に含まれているため、細胞の損傷を防いで腎臓を守る働きがあります。また、リコピンには善玉コレステロールを増やす効果も。善玉コレステロールは血管にたまった余分なコレステロールを回収したりして血管をしなやかにして血管を若返らせます。腎臓には血管が多く集まっているので、トマトは積極的に食べたい野菜のひとつです」

9 玉ねぎ

「玉ねぎにはファイトケミカルの一種で、腎臓を守ってくれる抗酸化作用を持つケルセチンが豊富に含まれています。また、ケルセチンには血圧を上げにくくする作用もあることがわかっており、高血圧の予防に効果的です。血圧が高い状態が続くと血管が硬くなって血管の老化が進むので、血管の健康のためにもケルセチンは大事です

 以上が上月先生が厳選した9種類の腎臓若返り食材だ。ぜひ、日々の献立に取り入れて、人工透析を遠ざけてほしい。

 なお、これらの食材を使った公式レシピ本も発売されている。メニューを考えるのが面倒だという人は下のレシピ本をぜひどうぞ。

『腎臓を若返らせる名医のスープ』
上月正博先生著 主婦と生活社 定価:1650円(税込)

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●この本に掲載されているレシピには腎臓若返り食材がすべて使われている
●“腎臓病食”にありがちな物足りなさを解消する工夫がたくさん
●汁物は水に溶けだす栄養素も余すことなくとることができる
●作り置きできるので忙しい人でも続けやすい

上月先生からのメッセージ
腎臓病のためのレシピ本は数多くあります。ただ、ページを開くと計算式だらけ。複雑すぎて何がなんだかわからないと思います。そこで、計算する必要のない食事法を考案しました。その柱になるのがスープです。腎臓病の食事療法にトライしたけど挫折してしまった人や、医師から「食事に気をつけて」と言われたけどまだ何もできていない人にぜひこの本を役立ててほしいと思います。

上月正博先生
上月正博先生
東北大学名誉教授、山形県立保健医療大学理事長・学長。1981年東北大学医学部卒業。2000年東北大学大学院内部障害学分野教授、2002年東北大学病院リハビリテーション部長(兼任)、2010年同先進統合腎臓科学教授(兼任)、2022年より現職。日本腎臓リハビリテーション学会理事長、国際腎臓リハビリテーション学会理事長、日本リハビリテーション医学会副理事長、日本心臓リハビリテーション学会理事などを歴任し、2022年に日本腎臓財団功労賞を受賞。著書・監修書多数。