ジャニーズ事務所本社で記念撮影をする女性ファン

「昨今、老舗アイドル誌の休刊が相次いでいます。ワニブックスの月刊『WiNK UP』は2025年6月号をもって休刊することを発表し、ワン・パブリッシングの隔月刊『POTATO』も2025年9月号を最後に休刊。さらに、ホーム社発行の『Duet』も2025年12月号を最後に休刊する旨が発表され、業界では激震が走っています」(アイドル誌ライター)

「出すだけ赤字」アイドル誌の切実事情

 かつてジャニーズ事務所(現STARTO ENTERTAINMENT)に所属するタレントが多数出演し、大きな影響力を持っていたアイドル誌。昨年7月に麻布台出版社から発行されていた『ポポロ』が休刊になり、このころから不穏な動きがささやかれるようになる。

「以前から1冊作るのにかなりコストはかかり、発行部数は年々落ち込む中で懸念の声は上がっていたのですが……。ここまで立て続けに休刊になってしまうとは思いませんでしたね。これで、アイドル誌と言われる媒体は集英社が発行する『Myojo』だけになってしまいました」(同・アイドル誌ライター)

 なぜアイドル誌が続々と姿を消しているのか。その理由を紐解くと、様々な要因が浮かび上がってきた。

「制作側の負担増は大きいでしょうね。撮影で使うスタジオに加えてスタイリストやヘアメイク、カメラマン、ライターなど、数ページ作るだけでも相当な経費が必要となります。加えて近年は紙代や印刷代も高くなっており、一冊の制作にかかる費用は決して小さくありません。“雑誌を出すだけ赤字”という状況に陥ってしまい、刊行を止めざるを得ない現実があります」(出版関係者)

ファッション誌との“体力差”も

 時間をかけて作った雑誌が、発売と同時にネット上にアップされてしまうケースも。

「ファンの子たちがページをスマホで撮影してすぐにSNS上にあげるので、それを見て満足する人も多かったと思います。編集部も注意喚起などをして対策に乗り出していましたが、効果はなかったようですね」(同・出版関係者)

アイドル誌と言われる媒体で唯一残ったのは集英社『Myojo』(公式Xより)

 アイドルについて研究している上岡磨奈氏によると、

「消費者側の購買スタイルが変化したこともあるのではないでしょうか。“書店や通販で雑誌を買って、グラビアを楽しむ”という行為自体が今の若い層にはあまりなじまなくなっているのかもしれません。アイドル自身もSNSで写真や動画を発信することが当たり前になっているので、スマートフォンがあればいつでもどこでも見ることができてしまいますからね。その中でMyojoが早期に導入した“ジュニアデータカード”のような付録や、小さいサイズの誌面のように、持ち運べる“モノ”の価値を打ち出せた媒体が生き残った側面もあります」

 STARTO社のタレントが、ファッション誌やコスメ誌に活躍の場を広げたことも大きいようだ。

「ファッション誌などでは、シチュエーションや撮影手法などの企画性にこだわる余地が大きいです。たとえば恋人感やリアルな日常を演出するときなど、雑誌全体のトーンで世界観を作り込める強みがあります。アイドル誌でも似た演出はありますが、掲載人数が多く、1号で複数グループを扱う構成上、ひと組に注力することが難しいのでは。企画の体力差がファッション誌との違いを生んでいるのだと思います」(上岡氏)

 アイドル誌が置かれている環境は、依然として厳しい。しかし、紙媒体はコスト面で厳しい状況にある一方、丁寧な取材や写真の質、アーカイブ性など、独自の強みを持っていることも事実。これからは、デジタルと紙をどう共存させていくのかが生き残りの鍵になりそうだ。