「おもしろかった」トンデモドラマランキングTOP3

 平成〜令和の“トンデモドラマ”として人気を博していた『奪い愛』シリーズが9月、『奪い愛、真夏』で、その幕を閉じた。

今の世の中に必要なトンデモドラマ

「トンデモドラマと聞くと駄作を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、そうではないんです。荒唐無稽な設定に大げさなセリフ回し。何も考えずに笑って見ていられるバカバカしさは今の世の中に必要だと思うんです」

 と、ドラマに詳しいライターの津田春子さんが力説する。

「トンデモドラマの歴史をひもとけば昭和の大映ドラマがあげられますよね。小泉今日子さんも'85年の『少女に何が起ったか』でトンデモヒロインを見事に演じきってみせました」

 そこで、2010年代以降のトンデモドラマを視聴者にアンケート。1000人の女性をズッコケさせつつも爪痕を残した作品は?

「ゾッとして映画まで見てしまった」(東京都・42歳)、「高岡早紀が不気味で美しかった」(福岡県・51歳)

高岡早紀

 面白かったトンデモドラマ3位に選ばれたのは『リカ』('19年・フジテレビ系)。高岡早紀演じるリカは職歴、年齢、住所などすべてが偽りで、運命の相手だと感じると手段を選ばぬストーカーへと豹変。その怪演が話題に。

「高岡さんが平気な顔で“28歳です”と言い張り、ロックオンした男性には猫なで声で近づき、邪魔だと思った人間には“死ねばいい”とつぶやく。走行中の車を追いかける“リカ走り”など見どころも多く、まさに東海テレビの昼ドラらしい作品でした」(津田さん)

 その後、続編の『リカ~リバース~』('21年)が放送され、映画『リカ~自称28歳の純愛モンスター~』にまで展開。「惚れたら、死ぬ」のキャッチコピーは秀逸!

2位は「登場人物全員、狂気じみている」

『奪い愛、冬』(テレ朝動画Webサイトより)

 続く2位は、

「登場人物全員、狂気じみている」(兵庫県・47歳)、「大谷さんの棒な感じが笑えた」(埼玉県・44歳)

 今回で幕を閉じた『奪い愛』シリーズの始祖『奪い愛、冬』('17年・テレビ朝日系)が2位にランクイン。ヒロインの光に倉科カナ、その婚約者に三浦翔平、光がかつて死ぬほど愛した元恋人に大谷亮平、その妻に水野美紀、と濃いキャストが集結した。

「大恋愛の相手だった男性が突如姿を消し、違う女性と結婚してヒロインの前に現れる、という昭和の大映ドラマや韓国ドラマを彷彿とさせるストーリー展開。まともな登場人物が誰一人いないんですよね(笑)」

“夜の昼ドラ”枠を定着させたのも納得?

2019年夏、浜崎あゆみの自伝「M愛すべき人がいて」で、浜崎と1996年〜1999年まで恋仲だった事が公表され話題に

 1位に輝いたのは、

「“マサさん”の棒読みが忘れられない」(茨城県・38歳)、「あゆの話なのにかつての『スチュワーデス物語』を見ているようだった」(愛知県・50歳)

 浜崎あゆみとエイベックス創業者・松浦勝人氏の恋愛を描いた同名小説『M 愛すべき人がいて』('20年・テレビ朝日系)がランクイン。

 歌手を目指す少女・アユ(安斉かれん)とレコード会社専務のマサ(三浦翔平)が出会い、アユが歌手として羽ばたくまでのシンデレラストーリー。なのだが、

「脚本の鈴木おさむさんがバリバリに大映ドラマを意識して作ったようで、前年に放送された『奪い愛』から三浦翔平さんを引っ張ってきてやりたい放題。マサが原因で右目を失った礼香を演じる田中みな実さんは“許さなーい”とドラムを叩くなど、『スチュワーデス物語』における片平なぎささんのオマージュ。真剣に考えるのを放棄したくなるキャラです。

 賛否両論あった作品でしたが、放送当時、コロナ禍で鬱々としていた世の中だったからこそ、底抜けにバカバカしいこのドラマが受け入れられたのだと思います」(津田さん)

 荒唐無稽であっても、心を解放してくれる“トンデモドラマ”は、日常に少しの笑いと熱を与えてくれる存在。そんな“良い意味でトンデモ”の一方で、残念ながら視聴者を首をかしげさせた“がっかりドラマ”も気になるところだ──。

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