猛暑となった今年の夏は、クエン酸配合の商品が好調な売れ行きを見せた。中でもクエン酸飲料の需要は右肩上がりで、ここ4年で約5倍に増えているともいう。
「疲労感軽減などをうたう機能性表示食品も増えたため、コロナ禍以降、免疫力を高めたい人や、後遺症で倦怠感が残った人など、健康志向の方に刺さったのだと思います」
そう分析するのはフードアナリストの吉岡杏奈さん。実は、日本人ははるか昔から経験的にクエン酸の効果を体感し、生活に取り入れてきた。
クエン酸が栄養変換の“着火剤”に
「クエン酸を含む食品のひとつに梅がありますが、奈良時代の終わりに大陸から伝わると、解熱や鎮痛などの薬として用いたと書物にあるくらいです。その後、梅干しや梅酒などに加工され、庶民にも広がっていきますが、令和のいま、改めてクエン酸食品が見直されていると実感しています」(吉岡さん)
ここ数年、“クエン酸配合”と表示する食品も増えたが、クエン酸とはそもそもどんな働きがあるのだろうか。
「クエン酸は、梅干しや、レモンなどの柑橘類など、果物系に多く含まれる有機酸の一種で、クエン酸回路というエネルギー回路の主役になるものです」
そう教えてくれたのは、総合診療医の伊藤大介先生だ。
「簡単に言うと、摂取した炭水化物や脂肪、タンパク質などの栄養をエネルギーとして変換する“着火剤”の働きを持つ栄養素です」(伊藤先生、以下同)
いくら栄養を取り込んでも、クエン酸が不足すれば効率よくエネルギーを作り出せず、疲れを感じやすくなる。加えて、もうひとつ大事な役割が「キレート作用」だ。
「鉄分やカルシウムと一緒にとると、クエン酸がそれらミネラルをガッチリつかんで身体に吸収されやすい形に変換してくれるのです。ミネラルを無駄なく摂取するという意味でも重要な役割を持っています」
実際に疲労をやわらげる効果はあるのだろうか。
「小規模な研究ではありますが、1日2・7gのクエン酸を8日間とったグループととらないグループで、運動後の疲労回復効果に差が認められたというデータも。効果は期待できると思います」
いろいろな食品から少しずつ
ただ、すべての疲れに効果があるとはいえないそう。
「『疲れ』といっても原因はいろいろ。運動した後の疲れには、クエン酸がダイレクトに働くので筋肉疲労の回復に役立ちます。女性では貧血の方も多いので、鉄剤と一緒に処方すると貧血からくるだるさや倦怠感の軽減効果は期待できます。ただ、メンタルからくる疲労感や、病的な疲れには効果はないと考えます」
とはいえ、更年期やシニア女性にはメリットが多い。
「女性ホルモンに直接効くわけではありませんが、疲れやすくなったり、睡眠不足になりやすい更年期には活力のサポートになります。また、骨粗しょう症のリスクが高いシニア女性には、カルシウムの吸収をよくし、体内のカルシウムが溶け出すのを妨げる効果があるので日常的に摂取するといいでしょう」
さらに、生活習慣病が気になる人にも朗報が。ロングセラー商品「ポッカレモン100」を毎日約30ml、12週間摂取したところ、高めの血圧(収縮期血圧)が下がったという研究結果が発表された。
「ラットにクエン酸を投与した実験でも、血管が広がる作用が確認されており、血圧を下げる効果は期待できます。しかし、レモン果汁にはポリフェノールなど血圧に作用するほかの成分も含まれているので、まだエビデンスは十分ではないと考えています」
では、クエン酸はどのようにとるのがいいのだろう。
「クエン酸だけを摂取したいならサプリメントが確実ですが、食品のほうがクエン酸以外の栄養素も一緒にとれるので、1つに偏らずにいろいろな食品から少しずつとるのが望ましいです」
特にサプリメントの場合は、とりすぎに注意。
「クエン酸は安全性の高い食品とはいえ『酸』なので、過剰摂取は歯のエナメル質を溶かします。酸っぱいので胃もたれも起こしやすい。胃が弱い方は空腹時は避けるのが無難。そしてやりがちで気をつけたいのが、薬の飲み合わせ。胃薬によく含まれているアルミニウムが、キレート作用によって吸収されすぎてしまうと、毒性が出る可能性が。サプリを飲んでいる場合は医師に申告しましょう」
おやつタイムにもクエン酸
ちなみに1日の摂取目安量は5~15g程度といわれる。一度に大量にとると胃に負担がかかるうえに、クエン酸は体内にとどめておけないので、朝ごはんに梅干し、おやつにミカンのようにこまめに食べるのがベスト。
「キレート作用の効率を高めるなら、牛乳や小魚、ヨーグルトなどの鉄分やカルシウムを一緒にとるのがオススメです。クエン酸回路をしっかり回すためには、エネルギーのもとになる炭水化物やタンパク質もしっかり摂取を」
クエン酸回路が活性化して代謝がアップすれば、脂肪が燃焼してダイエット効果もアップ。その際に補酵素としてビタミンB1が使われるので、豚肉やナッツ類なども意識してとるといいそう。
前出の吉岡さんは、「日本人は、知らないうちに結構クエン酸を摂取しています」と話す。
「クエン酸は厚生労働省が優良食品添加物として認めている安全性の高い添加物なので、保存料や酸味料としても広く使われていますし、レモンや梅干し、お漬物など昔ながらの食品にも豊富。和食の一汁三菜を実践するだけでもしっかり補えると思います」(吉岡さん、以下同)
そんな中でフードアナリストの観点からオススメの食品を伺うと……。
「一定の効果をすぐに得たいときには、身体への吸収の早いドリンク系がいいと思います。小さめの1回飲みきりタイプで、クエン酸含有量の多いものがベター」
おやつタイムにはクエン酸が豊富な食品を選ぶのも手。
「イチ押しはドライフルーツです。中でもパイナップル、イチゴ、アプリコット、キウイが特に豊富。また、腸活で注目された甘酒にも発酵クエン酸というクエン酸が含まれていて見直されています」
暑さも一段落つき、寒くなってくると心配になるのが免疫力の低下。これからは風邪やインフルエンザ、コロナなどの感染症への心配も増す時季だ。身近にあるクエン酸飲料や食品を意識的に取り入れて“毎日の元気”の強い味方にしたい。
オススメのクエン酸飲料
おいしくとって元気に! 新発売の商品も続々!
クラフトボス レモン&カボス
3種の果実配合でクエン酸&ビタミンCたっぷり
「クラフトボス」の新シリーズ。レモン、カボス、みかんの果実をブレンド。クエン酸1500mgと、1日分のビタミンCを配合のキュッと甘酸っぱいドリンク。500ml・184円/サントリーホールディングス
冷やし甘酒スパークリング
シュワッと爽快感あふれる微炭酸のきいた冷やし甘酒
古より夏バテ対策に飲まれてきた甘酒が、微炭酸入りで夏季限定で発売。「疲れて甘さがほしいときに微炭酸でスッキリ」と吉岡さんもイチ押し。6本・888円/森永製菓
C1000ビタミンゼリー クエン酸5000
クエン酸5000mg配合! 日々や運動後の疲れに
クエン酸を5000mgも配合したC1000シリーズのゼリー飲料(機能性表示食品)。強い酸味が特徴的で運動後やリフレッシュしたいときにもぴったり。180g・210円/ハウスウェルネスフーズ
シンクロンコーワ クールモード
大谷翔平選手と興和が共同開発した新製品
大谷選手のこだわりが詰まった、クエン酸4000mg配合の運動後に飲むスポーツドリンク。運動で失われた水分や栄養成分を補給し、コンディショニングをサポート。レモン風味。400ml・246円/興和株式会社
キレートレモン クエン酸
酸っぱさが染みわたり一時的な疲労感を軽減
クエン酸が3000mg入った、機能性表示食品のレモン飲料。日常生活や運動後の一時的な疲労感を軽減させる、クエン酸の働きが期待できる。525ml・194円/ポッカサッポロフード&ビバレッジ
※表記の価格は編集部調べ、税込みです。期間限定で販売されている商品も含みます。
教えてくれたのは…
取材・文/荒木睦美
