愛子さま

「愛子さまがいらっしゃることで、少しでも多くの人にラオスを知ってもらうきっかけになればと思います」

愛子さまの“世界デビュー”

 こう話すのは、アジアの子どもたちの健康支援を行うNPO法人『フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN』で代表を務める赤尾和美さん。看護師として11年間、ラオスの子どもたちの医療普及に携わってきた。

「天皇家の愛子さまは、11月17日から22日までラオスを公式訪問されます。愛子さまにとって初めての外国公式訪問で“世界デビュー”となる場。ラオスという行き先には“意外”との声も上がりましたが、現地では来訪に期待が膨らんでいるといいます」(皇室ジャーナリスト)

 多くの人が愛子さまを待ちわびる背景には、ラオスが抱える“医療が身近にない”という深刻な問題があるそう。国際協力NGO『世界の医療団』の職員で医療支援に携わる小川亜紀さんはこう話す。

「私はラオス北部にあるフアパン県で母子保健普及のための活動をしています。同県はラオスの中でも貧困が顕著で、医療を受けることができない人が多くいるのです。

 医療の普及、特に妊産婦や子どもの医療普及が進んでいないというのはラオス全体の課題です。ラオスでは妊産婦の死亡率が10万人中126人、5歳未満の乳幼児の死亡率は1000人中40人と、今も多くの人が命を落としているのです」

 ラオスで医療の普及が進まない理由は主に3つあると、前出の赤尾さんは言う。

まず1つは医療機関までのアクセスの問題。ラオスはインフラや交通機関が発達していないので、医療機関に到達することが困難なのです。

 2つ目は貧困の問題。貧困者も多いラオスでは、医療費や医療機関に行くための移動費を捻出できないという人も多くいます。また、小児科においては親が貧困で1日中仕事の手を休めることができず、子どもを病院に行かせることができない、というケースもあるのです」

 3つ目は多民族国家であるラオスならではの事情だそう。

「ラオスには50もの少数民族がいて、人口の3割を占めています。同じラオス人というくくりでも、民族が違えば、信じているものも、話す言葉も異なります。そのため、中には病気やケガの際には祈祷師にお祈りをしてもらうことが主流の民族もいれば、病気や薬について説明したくても言葉が通じない民族も少なくありません」(赤尾さん)

愛子さまの強い味方

 こうした事情があるからこそ、愛子さまのご訪問には大きな意義があると小川さん。

「1965年に発足した『青年海外協力隊』の初めての派遣国がラオスです。日本の国際協力が始まったラオスに、国際協力に関心を寄せられる愛子さまがいらっしゃるのはとても意義深いと思っています。

 特にラオスの医療は大きな課題を抱えていて、国内で持続可能な医療を確立するためには日本の協力が必要です。愛子さまのご訪問が、多くの方がラオスに関心を持つきっかけになることを願っています」

2012年、ラオスを訪問された皇太子時代の陛下

 初めての外国訪問ながら、重責を担われている愛子さま。不安や緊張もおありだろうが、愛子さまには2人の強い味方がいらっしゃる。

「ご両親である、天皇・皇后両陛下です。陛下はイギリスのオックスフォード大学に留学されていて、国際親善のため外国へ何度も足を運んだご経験がおありです。2012年には皇太子としてラオスも訪問されています。雅子さまは外交官として働いていた経歴をお持ちです。国際派なおふたりから有益なアドバイスを受けているのでは」(前出・皇室ジャーナリスト、以下同)

 愛子さまに、両陛下は揺るぎない信頼を寄せている。

「両陛下は今年、戦後80年の節目にあたり、戦時中に甚大な被害を受けた各地へと足を運ばれました。この慰霊の旅には一部、愛子さまも同行されています。10月23日にも両陛下とご一緒に東京都慰霊堂に赴かれるなど、今年はご一家で戦争の歴史と向き合われた1年でした。

 その過程で、両陛下は愛子さまのご成長を感じ、今まで以上の信頼を寄せるようになられたことでしょう。ラオス行きも安心して見守っていらっしゃると拝察いたします」

 そんな両陛下から、ラオス訪問にあたって愛子さまは、ある“使命”を託されているのではと、『皇室の窓』(テレビ東京系)で放送作家を務める、つげのり子さんは言う。

「ラオスではベトナム戦争時に投下された不発弾による被害が各地で相次いでいます。愛子さまはご滞在中、不発弾の問題を啓発する『コープ・ビジターセンター』を訪問される予定です。

 戦後80年の節目だからこそ、両陛下は愛子さまに“東南アジアが辿ってきた戦争の歴史を知って、平和への思いを新たに刻んでほしい”と願われているのではないでしょうか」

南米やヨーロッパ…今後の海外訪問先

 ラオスでは医療の発展、平和の記憶をつなぐ使者としての役割が期待される愛子さま。そして、今後も愛子さまにしかできない国際親善は続いていくと、つげさんは続ける。

「来年以降は毎年、海外へ足を運ばれることが予測されます。ヨーロッパの王室には、愛子さまと同世代の王女が大勢いらっしゃいます。そうした方々とお会いになってプリンセスのネットワークを築かれるのではないでしょうか。

 そして昨年、ケニアの大統領が来日した際は、宮中で開かれた昼食会に愛子さまも同席され、大統領から“ぜひケニアに”というご招待を受けています。動物がお好きな愛子さまにとって、ケニアも絶好の訪問先だと思います」

ラオスは今も深刻な医療問題を抱えている(C)MdM Japan

 訪問先の候補はほかにも。

「2028年にはブラジルを訪問されるのではと見ています。同年は日本人のブラジルへの移住が始まって120周年の節目の年です。移住100周年の際は皇太子だった陛下が、110周年の際は眞子さんが足を運ばれており、愛子さまが赴かれる可能性は十分考えられます」(つげさん)

 愛子さまの世界デビューは日本と各国の友好を、より深める歴史的一歩となるだろう。

つげ のり子 西武文理大学非常勤講師。愛子さまご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の『皇室の窓』で構成を担当。著書に『素顔の美智子さま』など