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 急激にサービス店が増えているという女性用風俗業界。取材を重ねた漫画家が、実際に見聞きした利用者の傾向や男性セラピストが飽和状態だという現状を赤裸々に語る。既婚者や60代や70代も利用するほどの“敷居の低さ”となっているが、さまざまなリスクも考慮すべきだという。

マンガの連載後に利用者が増加

 「ジョフウ」という言葉を知っているだろうか? 女性用風俗の通称のことで、かつては表立って語ることが憚られたアンダーグラウンドな業界が、ここ数年にわかにクローズアップされている。

“ジョフウ”は思いがけない理由での利用者が多くいるそう(『真・女性に風俗って必要ですか?』 より)

 そのきっかけのひとつがマンガ、『真・女性に風俗って必要ですか?』だ。現在、累計発行部数30万部を超える人気作の著者であるヤチナツさんに話を伺うと、

マンガの連載が始まってから“利用してみたい”とか“利用してみました”という声が届くようになって、『女風』のユーザーも増えたと聞きます

 興味を持つ人たちは確実にいるということを実感したそう。

それがいいことなのかはわからないですが、そういう世界があるということを多くの人に知ってもらえたのはうれしく思います」(ヤチナツさん、以下同)

 「女風」をテーマに描くと決まった当初はその知識がほとんどなかったというヤチナツさん。作品を描くにあたって、女性用風俗店のオーナーやセラピストなどに取材やリサーチを重ねたという。

「女性用風俗を利用するのは、ただ気持ちよくなりたいという肉体的な満足感を求める人から、誰かに話を聞いてほしい、さみしいから一緒にいてほしいなど精神的な満足感を求める人までさまざま。

 性感を受ける以外にも、デートをするだけの人や、家にゴキブリが出たから退治に来てもらうなど、何でも屋さんのような使い方をする人もいます。お金を払って時間を買っているのでどう過ごすかは自由なんです

 性感とは、全身や性感帯へのマッサージで快感を与える性感マッサージのこと。風俗とはいえ本番行為は法律で禁止されている。ちなみに料金の相場は、90分で1万5000円程度。そこに、指名料や交通費、ホテル代などが上乗せされるのが一般的。

取材して意外だったのは、男性側、つまりセラピストの多さです。女性と違ってノリで始める人が多く、大学生や普通の会社員が副業でやっているケースもあります。最近は大手や中小規模店から独立して小規模店を開くなど、お店もどんどん増えていて、『女風』の認知が広がってきたとはいえ、まだ利用者もそこまで多くはないのでちょっと心配になるほどです

 それだけ気軽に参入できるなら、技術面で未熟なセラピストも多くなりそうだが、業界としては基本的に“デビュー前に専門の講師から実践の講習を受けて、モニターによる実技試験に複数回合格して初めてデビューできる”とのことで、セラピストになるにはそれなりのテクニックと覚悟が必要なようだ。

偉そうな態度を取られたら年が若くてキレイでも嫌な気分に

セラピストの年齢層はさまざまですが、多いのは30~40代ですね。若い女性は比較的、年上好きが多いので、おじさんセラピストが重宝されています。おじさん専門店もあるんですよ

“ジョフウ”は思いがけない理由での利用者が多くいるそう(『真・女性に風俗って必要ですか?』 より)

 では、利用者はどんな女性が多いのだろうか。

セックスレスの主婦や男性経験のない女性、オーガズムを経験してみたい人など、いろいろです。独身だけでなく、既婚者の方も珍しくないです。夫やパートナーがいても、1対1で向き合っていると行き詰まることもあるので、定期的に利用して心の安定につなげているのかなと思います

 利用者は30~40代がコア層で、60代や70代も多い。

私が聞いた中では75歳の女性が一番年上です。セラピストたちからよく聞くのは、『女性は“おばさんだし”とか“太っているから”ってず~っと気にしているけれど、ぜんぜん気にしなくていい』ということです

 彼らはプロとして仕事にあたり、普通に“いいお客さん”であれば大歓迎なのだ。

むちゃなことを言ってきたり、偉そうな態度を取られたら、たとえ年が若くてキレイでも嫌な気分になるそうです。そうでなければ、お仕事をもらえるだけで、ただうれしくてありがたい、とみなさん口をそろえます

“女風”利用のメリットのひとつとして、変わった性癖を持っていても、セラピストには仕事として受け入れてもらえる点があります。言いにくい要望も恥ずかしがらずに伝えられるんです

 とヤチナツさん。マンガの38話に盛り込まれている、ザリガニを目の前で踏んでもらうことに興奮を覚えるという女性客のエピソードもほぼ実話。

 そこまで特殊な性癖の持ち主でなくとも、SやMっ気の傾向や、やってほしいこと・されたくないことなどは事前にセラピストに伝えてコミュニケーションを取っておくと失敗が少ないという。

セラピストは通常、お客さんを獲得するためにXをやっています。お店のホームページで顔や雰囲気がいいなと思う人がいたら、Xで検索してダイレクトメッセージを送ってみるといった方法も。予約する気がなくても直接やりとりして大丈夫。よっぽどの売れっ子でもなければ、きちんと返信してくれるようです

 セラピストにとっても、見ず知らずの女性よりも、やりとりのある女性のほうが気心が知れて、双方にウィンウィンなんだとか。

見た目で選んだ人の中から適当に空いている人をオーダーしたら失敗した、という話はよく聞きます。ツイキャス(ライブ配信アプリ)をマメにしている人もいるので、性格や声、しゃべり方などチェックしてみるのもいいですね

精神的にも満たしてくれるひとつの手立て

 男性と2人きりでの密室では、望まない本番行為をされるのではという心配も……。

ヤチナツ著『真・女性に風俗って必要ですか?』

全くないとはいえません。最初は合意のうえだったのが、そのうちに仲がこじれて、お店側に“合意がないのにされた”とクレームが入るケースもけっこうあるようです。以前、大手のトップセラピストを取材したときに、売れっ子ほど勃たない、という話を聞きました。数をこなしていることもありますが、仕事のできる人ほど施術に集中しているので興奮はしてもその気にならないそうです

 むしろ、ユーザーがストーカーのようになるトラブルのほうがありがちだとか。

「ほかのお客を取らないように束縛したり、お店を出禁になったのに身分を偽って呼び出したり、誹謗中傷をしたり……。恋愛経験が少ない人やハマりやすい自覚のある人は、気をつけたいもの。

 同じ人を何度も指名しないとか、時間の延長やプレゼントをして執着しないとか、マイルールを決めるといいですね。一人に依存しないために、性感、買い物、デートなど目的別に週5でセラピストを使い分けている上級者もいます

 女性にも性欲があることを当たり前のように語れる時代が来たようだ。

“女風”は単に性欲を満たすのが目的ではなく、精神的にも満たしてくれるひとつの手立て

 だとヤチナツさんは語る。利用する・しないを含めて、女性側の選択肢が増えているのは間違いない。─あくまでも、自己責任においてであるが。

取材・文/荒木睦美

ヤチナツさん 著書に、女性用風俗店の内勤女性の視点で女風を描いた『真・女性に風俗って必要ですか?』(新潮社)や『もしも世界に「レンアイ」がなかったら』(DPNブックス)ほか。今年、両作品がドラマ化されるなど注目の新世代の漫画家。