「自分の趣味として始めた車探しが、誰かと共有したいという気持ちに変わったんです。そこで、'20年9月に事務所の許可をいただいた上で、キャンピングカ―のレンタル事業の構想を始めました」
'82年、オーディション番組『スター誕生!』(日本テレビ系)チャンピオン大会をきっかけに、芸能界入りを果たした松本明子。'90年代に人気を博したバラエティー番組『DAISUKI!』や『進め!電波少年』(ともに日本テレビ系)のタレントとしての印象が強いかもしれないが、キャンピングカーのレンタルを手がける会社の代表という、もう1つの顔も持っている。
40代で「変形性膝関節症」に
きっかけは、10年ほど前に、彼女をある病魔が襲ったことだった。
「40代で舞台に出演したとき、膝が痛むことが多かったんです。のちに変形性膝関節症と診断されました。医師から一生治ることはなく、付き合っていかないといけないと言われてしまったんです。当初、膝をかばいながら生活をしていたんですが、友人の勧めもあり、適度な運動は取り入れることにしたんです。ウォーキングに始まり、'19年からは、登山を始めました。すると、膝に水が溜まらないようになったんです」
病気と付き合うために始めた登山が趣味となった松本。お気に入りは、北アルプスの立山連峰にあり、長野県と富山県の県境にまたがっている唐松岳だという。
「山頂からの景色は素晴らしくて感動しました。しかし、節約も趣味な私にとって、登山は出費がかさむんです。移動費に加えて、朝早い時間帯から登りたいので、前泊はマスト。さらに、登山口までレンタカーで向かわなければならないので、これは私のモットーに反すると思ったんですよ」
そこで、女性が比較的扱いやすいと言われる軽自動車で、車中泊もできる車を探すことに。キャンピングカーをいろいろと見ているうちに、これをビジネスにしたいと考えるようになった。
「'21年3月に、キャンピングカーを4台集めてレンタル事業をスタートさせました。福岡のレンタル事業を行う会社のフランチャイズとして、東京店をオープンしたんです」
松本自ら店舗に勤務
最初の3か月は予約の電話もなく、閑古鳥が鳴いている状態だったそう。
「現実は厳しいなと思いましたね。そこから、友人や西村知美ちゃんに利用してもらったり、お笑いコンビ『オードリー』の春日さんがテレビでPRしてくれたことで、徐々に予約が入るようになりました」
事業の認知度が広がるまでにおよそ1年を要したという。
「最近は外国の方が多く利用してくれます。もちろん“松本明子”という存在を知らず、ホームページを見て車が気に入ったということで予約してくれるんです。外国の方はバカンスで日本に来るため、1か月かけて北海道から九州まで巡る方もいます。ありがたい限りです。今はキャンプ場じゃなくても、トイレなどが完備されているRVパークや、道の駅で宿泊できたりするので楽しいですよね」
1か月間借りてくれる利用者もいるだけに、大きな利益を出しているかと思いきや、料金は1日3773円からとかなり格安。そんな事情もあってか、
「実は、全然儲かっていないんです(笑)。物価高でも値上げはしていません。自動車保険や点検代、オイル交換など車には大きな維持費がかかります。さらに、デスク業務を行う場所としてアパートを借りていますし、キャンピングカーを停めておく駐車場も費用がかかります。月にかかる経費は、25万円から30万ほどですね」
思うように売上が上がらない原因として、季節も関係しているという。
「桜を楽しめる春や、夏休み期間、紅葉が見ごろの秋が繁忙期になります。一方で、寒い時期には予約が全然入らないので、1年を通して見ると、少し黒字になるかなという程度なんですよ」
芸能の仕事がない限り、店舗に立っているという。
「電話番や車の掃除と点検、お客さまの見送りから、返却時の対応まで自分でやっています。なかなか収支がプラスになりませんが、みなさんに楽しんでもらいたい、喜んでいただきたいのがモットーなので、採算度外視で頑張っています!」
今年6月からはフランチャイズから独立し、『アムズレンタカー』として再出発を果たした。挑戦はまだ始まったばかり。これからもトップスピードで走り続ける!
