「手ごわい相手だと思いますけど、自分たちの野球をできるように集中したい」
2025年ワールドシリーズが始まる前、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平が、そう語った“相手”とはトロント・ブルージェイズ。
大谷に大きなブーイング
日本時間10月26日の第2戦が終わって1勝1敗。大谷にとって“因縁の相手”ともいわれている。
「大谷選手が2023年のオフにエンゼルスからFAとなった際、ドジャースと並んで移籍先の最終候補として残っていたのがブルージェイズでした。同年12月に“大谷がトロント行きの飛行機に乗った”という誤情報が流れたこともあり、2024年4月にトロントで行われた試合では、ブルージェイズファンから大きなブーイングを浴びせられました」(スポーツ紙記者、以下同)
自身2度目となったメジャーリーグのポストシーズン。前人未到の活躍で注目を集めた。
「リーグ優勝決定シリーズの第4戦に“1番・投手兼DH”で出場。投手としては2安打無失点に抑えて10個の三振を奪うと、打者としては3本のホームランを放ちました。“伝説の1日”となり、同シリーズのMVPに。試合後にはチームメートから称賛の声が多数上がっていました」
レギュラーシーズンでは自己最多の55本塁打を放ち、投手としても約2年ぶりとなる勝ち星を挙げた大谷。2年連続のワールドシリーズ進出に貢献したが、ほかの日本人投手2人も大きな原動力となった。
「今年のドジャースの投手陣はケガをする選手が多かった中、山本由伸投手は離脱することなく、1年間先発ローテーションを守っていました。リーグ優勝決定シリーズ第2戦で先発すると9回1失点の完投勝利。ロバーツ監督も“エース”だと認め、高い信頼を置いています」
メジャー移籍1年目でレギュラーシーズン序盤は思うような活躍ができなかった佐々木朗希も、ここにきて存在感を放っている。
「シーズン序盤は先発投手として起用されるも、打ち込まれる試合が多かった。5月には右肩を故障して戦線を離脱。8月にマイナーリーグで実戦復帰しましたが、圧倒的な結果は残せずに厳しい意見も飛び交いました。ですが、チームの事情もあって中継ぎに転向。メジャーに再昇格してから好投を続け、失点の多かったドジャースの中継ぎ陣の“救世主”的な存在に。リードした試合の最後を締めくくる守護神としての立場を確立しています」
グラウンドに立てば相手を圧倒するオーラを放つ3人は、さながらサムライだとロバーツ監督は話す。
「サムライのようだ」
「ロバーツ監督は山本投手を“キラー”と表現していました。直訳すると“殺人者”という意味ですが、アメリカでは称賛の意味で使われることも。ロバーツ監督は“マイケル・ジョーダンやタイガー・ウッズもそうだが、彼らの目には恐れがない”とし、大谷選手や山本投手もそれに当たると話していました。“相手が倒れかけたら、とどめを刺さなければいけない、サムライのようだ”とも。出遅れていた佐々木投手についてもポストシーズンの活躍を受けて“キラーになってきた”と褒めたたえていました」(在米ジャーナリスト)
日本人トリオの活躍を“レジェンド”はどう見ているのか。アジア人初のメジャーリーガーである村上雅則さんに聞いた。
「山本くんは昨年にお会いしましたが、メジャーリーガーにしてはかなり背が低いなという印象でした。技術的なことですが、178cmの身長でも長身のメジャーリーガーと同じ歩幅で投球をしています。それによって、打者が打ちにくい球を投げることができています。
佐々木くんはマイナーリーグでアメリカの雰囲気を経験してから、メジャーに上がったほうがいいなと思っていたら、いきなりメジャーデビュー。それで打ち込まれてしまった。今はもう慣れてきたんだろうね」
偉大な大先輩も“伝説の1日”を繰り広げた大谷の活躍には目を見張るものがあったようだ。
「勝てばワールドシリーズというときに、ちょうどローテーションが回ってくる。彼の努力が引き寄せたのかもしれない。素晴らしいピッチングをして、ホームランも1本くらいは打つだろうと思っていましたが、まさか3本とは。相手チームは大谷くん一人にやられたという感じでしょう。選手もアメリカのメディアも“化け物”だと感じているんじゃないかな。日本人として誇りだし、本人は断るかもしれないけど、国民栄誉賞をあげないといけない」(村上さん)
3人それぞれが主役級の活躍を見せているのは、その関係性が影響している。
3人の共通点
「メジャー1年目の佐々木投手を、先輩である大谷選手や山本投手がサポートしていました。2月のキャンプ中は、2人が佐々木投手に声をかけてチームになじみやすくしていました。大谷選手は佐々木投手に“うまく投げられなかったりするけど、そこは慣れ”とアドバイス。佐々木投手が右肩を痛めたときには、2024年に同じ右肩をケガした山本投手が助言をしていました」(前出・スポーツ紙記者、以下同)
日本人“3兄弟”の長男・大谷は、自分なりのコミュニケーションで“弟”たちをかわいがっているようだ。
「よく愛のあるイジリをしていますね。3月に東京ドームで行われた開幕戦の裏側を大谷選手がインスタグラムに投稿。身長193cmの大谷選手と192cmの佐々木投手、178cmの山本投手が並んで歩いていると、大谷選手は山本投手に“一番面白いのは、座っていたら(座高が)同じくらいで、立ったらめっちゃ小さくて”とイジって周囲は爆笑していました。ケガで離脱していた佐々木投手には“早く投げんかい!”とハッパをかけていました。関係性ができているというのが前提ですが、大谷選手流のコミュニケーションなのでしょう」
二刀流の大谷を含めて“投手”という共通点があるが、プライベートでも、あることで通じ合っている。
「3人とも愛犬家なんです。大谷選手のデコピンは有名ですが、山本投手は昨年夏に保護施設を訪れ、一目ぼれした犬を家族として迎え入れています。2月のキャンプではデコピンと一緒に遊んでいました。佐々木投手も実家で“ラム”という名前のトイプードルを飼っています。1月の入団会見では、その愛犬がプリントされた靴下をはいていたことも話題になりました」
ドジャース連覇のカギを握る“サムライ三英傑”。日本人3人が世界一を争うチームの中心選手として活躍していることに、前出の村上さんはこう話す。
「うれしいですね。日本人がメジャーリーグの主力になるとは、昔は誰も思っていなかったでしょう。それだけ日本人の技術や体力、考える力が上がっているということ。アメリカや中南米のメジャーリーガーを追い越しているような気もします」
3人の絆が2年連続の栄冠をもたらすか――。
