「近所にゴミ出しに行くのすら怖い。命がけというか、遭遇しそうで……」
そう話すのは岩手県在住の男性。遭遇を恐れる相手は、現在東北地方を中心に、人里などでの出没が相次いでいるクマだ。
相次ぐクマによる被害
「私が住んでいる地域は市街地ですが、昨日は保育園から程近いエリアに出た。比べるものじゃないけど、もう昨年の県内の殺人件数と同じくらい、クマに殺されています。生活しているうえで、精神的にやられつつあります」(同・岩手県在住の男性)
環境省の発表によれば、今年4〜9月の全国のツキノワグマの出没件数は2万792件とこれまでで最多ペース。都道府県別で最も多いのは4499件の岩手、次に4005件の秋田となっている。
現在、クマの出没報告やその被害は東北地方が圧倒的に多い。しかし、“それ以外”がまったく安全かといえば、そうとはいえない。そしてそれは首都・東京でも……。
今年8月、東京の西端・奥多摩で川釣りをしていた男性がツキノワグマの子グマに襲われ、顔を引っかかれるという事件が発生している。
「都内にも山間部はあり、埼玉や山梨との県境にあたる奥多摩エリアを中心に、今年に限らず頻繁にクマが出没しています。ここ数年だいたい年度別発表のデータで200件前後ですね」
そう話すのは、奥多摩エリアでのキャンプを趣味とする都内在住の男性。
「奥多摩ではハイキング客などの乗降も多い奥多摩駅周辺でも出没しています。駅から離れた山間部だけでなく駅近くにもキャンプ場がありますが、ある年はクマの出没情報が報告されるたびに、山間部から徐々に人里近くになってきて恐怖を覚えました」(同・都内在住の男性、以下同)
2023年12月には山間部ではなく、東京・八王子の市役所近くでクマが出没したという報道がなされた。
「結果的に市役所近くに現れたのは、“イノシシである可能性が高い”という判断となりましたが、八王子市内でいえば令和5年の発表で24件の目撃情報があります」
東京にもクマはいる。目撃や被害が増えている今、山間部から人里を越え、市街地や都心部といえるエリアに現れる可能性は……。
「まず、東京都内でいうと東京の山間部の玄関口となる八王子市の高尾山周辺、あきる野市の武蔵五日市駅、青梅市周辺までで多く、そこが現状のクマ出没の“東限”。平野部での出没は現状なし。クマは川沿いを移動することが多いので、エサを求めて移動する可能性もゼロではないですが、少々考えづらいのでは」(山岳ライター、以下同)
しかし安心はできない。
「怖いのは現状の東限のエリアは観光地でもあること。人のいるエリアに迷い込むことは考えられます。また、都内に限らずいえば、日本には仙台や札幌、金沢など、山間部が近い都市部もあるので、“こんな市街地にはいない”という意識はなくし、警戒するべきかもしれません」
クマから来るか、こちらが向かうか。いずれにせよ私たちのすぐそばに、クマはいる。
