原作コミックは1990年に連載開始と今年で35周年。幼児による下半身の露出、親を呼び捨て、女性へのいたずら、そしてそれに対する鉄拳制裁……。それらが全面に描かれたギャグ要素たっぷりの作品だった─。
「いちばん変わったのは時代」
アニメ『クレヨンしんちゃん』(テレビ朝日系)の公式YouTubeチャンネルが登録者数100万人を突破。11月1日には、それを記念して厳選100作品が約13時間にわたって配信された。
「『クレしん』の近年の人気や高評価は映画によるもので、直近3作はいずれも興行収入20億円超。『クレしん』の映画といえば、“これで泣いた”という大人も多い2001年公開の『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』が知られていますが、同作の興収は14・5億円。
興収最多は2024年の『オラたちの恐竜日記』で27億円弱。2025年夏の『超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』がそれに肉薄する23億円超で、いかに近年の人気が高いかがわかります」(アニメ誌ライター)
その人気にあやかる企画も多い。同作の主人公である野原しんのすけが住む埼玉県、父・ひろしの出身地である秋田県、母・みさえの出身地である熊本県が、2022年に『家族都市協定』を締結。現在、『クレヨンしんちゃん家族都市プロジェクト』と題し、コラボ商品を展開している。
また、淡路島のテーマパーク「ニジゲンノモリ」には『クレしん』のアトラクションがあり、そこでも現在、『ひろしの家族愛スタンプラリー』が開催中だ。
2つのイベントに銘打たれた“家族”という言葉。しかし、かつて『クレしん』といえば“下品”“教育に悪い”というイメージで、むしろ保護者から嫌われていた。
「日本PTA全国協議会が行う『テレビ番組に関する意識調査』では、暴力・いじめ・下ネタがよく扱われていた『ロンドンハーツ』『めちゃ×2イケてるッ!』などと並び“子どもに見せたくない番組”の常連でした。事実、1990年代にはしんちゃんの子どもらしくない言葉遣いをまねする幼児もいましたね」(同・アニメ誌ライター、以下同)
しかし令和の今、SNSなどでは逆の声が目立つ。しんちゃんはいい子で、みさえとひろしは理想の夫婦、そして野原家は理想の家庭と。
「“下品なギャグアニメ”を映画で感動方向に舵を切ったことが大きい。その最初期といえる『オトナ帝国の逆襲』、2002年の『戦国大合戦』で、家族とは何か、大人になるとは、といったテーマを描き、“大人も感動”路線に」
子どもに見せたくない作品から、家族で見たい作品に。
「当初の、大人びたいたずらっ子のエロガキ、薄給を妻になじられる夫、ヒステリックな主婦というキャラは薄れている。SNSを見るとそれを知らずに称賛している人もいるように思えます。いちばん変わったのは作品ではなく時代で、庶民の形、社会や景気なのかもしれませんね」
