草なぎ剛 撮影/廣瀬靖士

「この世に生まれてきた以上、“死”は誰もが通る道なんですよね。僕もいろいろな思いを巡らせながら演じさせていただきました」

 穏やかな笑みを浮かべて、そう語ってくれた草なぎ剛。現在放送中のドラマ『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』では、妻を亡くし幼い息子と2人で暮らすシングルファーザーの鳥飼樹を演じている。遺品整理会社の仲間たちとともに、特殊清掃や遺品整理から生前整理まで、さまざまな事情を抱えた家族に寄り添うヒューマンドラマだ。

見たことのない「大人のつよぽん」

「『もう二度と、会えないあなたに』というタイトルどおり、大切な人との別れと思いが丁寧に描かれているんですよね。でもスローで穏やかな空気が流れているなか、スーパーマンや超能力者みたいに特別な力を持ってる人は出てこないけど、めちゃめちゃエネルギーを持ったドラマになっていて、見終わったあと、心温まる気持ちになると思います」

 遺品に込められた最後のメッセージから解き明かされる人間ドラマのほか、人妻との切ない恋の行方も気になるところ。

「中村ゆりさん相手に僕もドキドキしてます。言葉ではうまく片づけられない繊細なところを私、表現しておりますので、今まで見たことのない大人のつよぽんにもぜひ注目してください(笑)」

 樹の口癖は「大丈夫」。草なぎも「大丈夫、大丈夫」と、現場で声をかけているようだ。

「“そんなに急がなくて大丈夫だから、大福でも食べながら、のんびりしようよ”と、スタッフや共演者に声をかけて和んでいます。僕は樹とはちょっと違うタイプだと思うけど、自分の中の優しさって何だろうと思いながら演じているので、そこに樹と僕の優しさが重なり合うといいな、なんて思ったり」

 また「このドラマは僕の集大成で、代表作になりそう」とも。

「面白いことに、自分の人生に寄り添ってるんだよね。当て書きしてくれてるのかなって思っちゃうくらい、今の僕を投影してる気がしていて。どの作品でも思うんだけど、確実に僕はドラマに育てられてますね」

ついに「お釈迦様」に!?

 草なぎといえば、デニムやスカジャンなどヴィンテージものの服やギターを所有していることでも有名。

「持ちすぎだよね(笑)。でも今回、遺品整理人の役をやったことで、自分のものを今後どう残していこうか考えるようになったかな。誰かが大切に使っていたものが、縁あって僕のところに来たわけで、僕の命が尽きても誰かにまた渡るというロマンがあるんだよね。次の人に上手に受け渡すということは、回り回ってたくさんの人たちを幸せにするということだと思うんです」

草なぎ剛 撮影/廣瀬靖士

 ドラマのテーマにある“終幕”という言葉は、決してネガティブな意味だけでなく、新たな始まりも示唆している。「大丈夫、なんとかなる」というメッセージと草なぎの感情あふれる演技が、見る側の心もほぐしてくれるはず。

 さらに11月15日からは主演舞台『シッダールタ』の公演も控えている。この舞台は、仏教の父とされるシッダールタがどのように真理を求め、成長していくのかを描いた物語。

「ついに僕、お釈迦様になっちゃうんです(笑)。こちらは人間、地球、宇宙といった、とてつもない題材をテーマにした舞台。これまで僕が感じたことのない世界だけど、自分としっかり向き合って演じられたらと思っています。

 テクノロジーの進化で便利になってきた今、“おい、剛、ちょっと待てよ、自分の心を置き去りにしちゃいけないよな”って思うときがあって。そんな気持ちが芽生えたときに頂いたお話だったので、タイムリーだなとびっくりしました。期待外れだったと言われないように、精いっぱい演じたいですね」

 草なぎがどのようにシッダールタを表現し、どのようなメッセージを私たちに伝えてくれるのか。彼の役作りや演出の工夫に注目しながら、『終幕のロンド』とともに新たな挑戦と成長を見守っていきたい。

僕は自分の機嫌を上手にとれる男です

「おかげさまでドラマや舞台で忙しくさせていただいてるけど、僕はノーストレス人間です(笑)。すべてが気分転換になるんだよ。現場にギターも持って行くしね。ブドウを食べて気分転換して、リンゴを食べて気分転換して、いわゆるみなさんが言うリフレッシュみたいなことをしなくても、その都度できちゃう。これも才能なのかもね(笑)。自分の機嫌を上手にとれる男なんです」

『終幕のロンド−もう二度と、会えないあなたに−』カンテレ・フジテレビ系 月曜夜10時〜

撮影/廣瀬靖士 取材・文/花村扶美 ヘアメイク/荒川英亮 スタイリスト/黒澤彰乃