今の時季から12月上旬にかけて見頃を迎える京都・奈良の紅葉。中でも今年だから行くべき、今見ておきたいスポットをお届けします。徐々に深紅に染まりゆく“グラデーション紅葉”や“散り紅葉”……錦秋、燃ゆる古都の絶景を目に焼きつけたい!
早朝も夜間ライトアップも一日中見どころ満載!
「通常でも混む京都や奈良で紅葉散策を存分に楽しむなら、情報収集や事前予約、散策ルートの確認が不可欠です」
そう話すのは、旅行ジャーナリストで交通機関に詳しい星裕水さん。紅葉狩りの名所を巡るには、まず早朝に見学できるスポットから攻めるといいそう。
「例えば8時40分から拝観できる京都の南禅寺など、開門直後の寺社はねらい目。また、夜間拝観やライトアップが行われるところもあるので、上手に休憩を挟みつつ、朝から晩まで予定を立ててみて」
合間の休憩には紅葉ビューが楽しめるカフェを予約したり、旅行会社などが催行するツアーを利用するなど、情報戦を制することで満足度は飛躍的にアップします。
「『なるべく電車で動く』というのもひとつ。バスやタクシーは混雑で乗れなかったり、渋滞にはまる可能性もあるので、電車のほうがベター。お得なフリーパスを買うか、IC乗車券を活用しましょう」
そんな星さんイチオシの紅葉スポットをエリア別にご紹介。期間限定イベントもフル活用して、じっくり秋を堪能しましょ♪
瑠璃光院
感動ナンバーワン!紅葉のリフレクション
比叡山の麓にある、岐阜市に本坊を置く「浄土真宗無量寿山光明寺」の支院。数寄屋造りの書院前には佐野藤右衛門一門の作庭と伝わる「瑠璃の庭」があり、「瑠璃色に輝く」と表現されるほど苔(こけ)の絨毯(じゅうたん)が美しい。
「数ある京都の紅葉スポットの中でも憧れの場所。『瑠璃の庭』が色づくと、書院2階の床や机に紅葉が反射。その幻想的な美しさは見事で、誰もが一度は見たいと思う光景ではないでしょうか」(星さん)
一般公開は春夏に開催。拝観の際は事前に公式HP[https://rurikoin.komyoji.com]の確認を。
[営業]特別拝観期間は~12月14日、10:00~17:00(受付終了16:30。予約期間中は拝観時間は異なる)
[休日]公開中は無休 [料金]2000円(~12月7日は予約制)
おすすめエリア(1)南禅寺周辺
錦秋に染まる名古刹、南禅寺。周辺の塔頭(たっちゅう)や哲学の道にもアクセスがしやすく、秋の京散歩が楽しい一帯となっている。合間に名物の湯豆腐も楽しみつつ、ゆったり散策したい。
南禅寺
境内の至る所が絵になる!秋色の大伽藍へ
1291年、亀山法皇が無関普門禅師を開山に迎えて開創された臨済宗南禅寺派の大本山。
「境内全体が国の史跡に指定されており、国宝『方丈』や『三門』をはじめとした重要文化財、名勝の方丈庭園など、見どころが豊富で京都観光では外せない場所。
特にこの季節は約200本の木々が境内を色鮮やかに染め上げ、方丈庭園や琵琶湖疏水の水路橋をはじめ、そこここが紅葉スポットに。周辺には紅葉が楽しめる塔頭なども多数あるので、早朝から訪れてじっくり鑑賞してみては」(星さん)
[営業]8:40~16:40(閉門は17:00)、12月~2月は~16:10(閉門は16:30)
[休日]無休 [料金]境内無料、方丈庭園600円、三門600円
對龍山荘(たいりゅうさんそう)
建物の一般公開が今年スタート!
南禅寺別荘群の中でも長く非公開だった對龍山荘が2025年1月から、庭園・建物ともに一般公開を開始。約1800坪の広大な敷地には、池や流れ、露地、滝石組などの他に、芝生広場が設けられ、近代を代表するその庭園は1988年には国の名勝に指定。
建築は2024年に国の重要文化財に指定されている。東山を借景とした雄大な景色、近代日本庭園の傑作と上質で貴重な近代和風建築、そして息をのむほどに美しい紅葉をこの秋ぜひ体感したい。
[営業]10:00~16:00(受付終了15:30)
[休日]不定休(ホ―ムページにて要確認) [料金]3000円
おすすめエリア(2)北野天満宮~紫野
都の北西に位置し、天神様(菅原道真公)をお祀(まつ)りする北野天満宮は、初春の梅とともに秋の紅葉も見事。
その北に位置する、船岡山から大徳寺にかけての紫野と呼ばれている地域は閑静な住宅街。その中にあり、大人好みの大徳寺塔頭は一足延ばす価値大です。
北野天満宮
ライトアップも見事な「もみじ苑」は必見!
学問の神様として信仰される菅原道真公をお祀りする全国に約1万2000社鎮座する天満宮の総本社。豊臣秀吉公にゆかりのある土塁の一部が残る一帯を『史跡御土居(おどい)もみじ苑』とし夏季と秋季に公開している。
「約350本の紅葉は圧巻。御土居の構造を活(い)かし、御土居上部からはもみじを見下ろす景観、御土居下部からはもみじを見上げる景観がそれぞれ風情あふれます。夜間ライトアップでは、昼間とひと味違った幻想的な雰囲気が味わえますよ」(星さん)
[営業]9:00~17:00、史跡御土居もみじ苑公開~12月7日の9:00~20:00(日没より点灯、19:40受付終了)※昼夜入替なし
[休日]無休 [料金]もみじ苑1200円(茶菓子付き)
大徳寺 総見院
注目の「秋の特別公開」その1
本能寺の変に倒れた織田信長を弔うために豊臣秀吉が建立。通常は非公開の境内が秋の特別公開中で、紅葉の美しい回廊は必見だ。
また、本堂には秀吉が奉納した木造織田信長公坐像(重要文化財)が安置されており、その鋭い眼光は思わず見入ってしまうほど。さらに、信長一族の墓碑、茶の湯の歴史を物語る茶室など、歴史と文化を深く感じられる。
[営業]~11月30日の期間中、10:00~16:00(受付終了)
[休日]11月21・22日は拝観休止 [料金]800円
大徳寺 興臨院
注目の「秋の特別公開」その2
室町期の建築様式の特徴を見せる本堂(重要文化財)や唐門を持つ大徳寺興臨院。豊臣政権の五大老を務めた前田利家が本堂屋根を修復、また菩提寺とするなど前田家とも非常に縁の深い寺院で、通常非公開だが紅葉シーズンに合わせ、秋の特別公開中だ。
優美で安定感のある姿が静寂と落ち着きを感じさせる本堂や、「昭和の小堀遠州」ともいわれた作庭家、中根金作が復元した方丈庭園も見事。
[営業]~12月15日の期間中、10:00~16:30(受付終了)※12月1日~は16:00受付終了
[休日]法務による不定休 [料金]800円
おすすめエリア(3)奈良市内
県内に素敵な紅葉スポットが多数点在する奈良だけど、奈良駅からサクッとアクセスできる奈良市内は外せません。紅葉観光とともに、街歩きやグルメなど、“おいしいところ”を厳選すれば、ショートステイでも十分楽しめます。
この時季限定の夜間ライトアップなどもお見逃しなく!
奈良公園
ここならではの「紅葉とシカ」をパチリ!
奈良市街の東一帯に広がる総面積約511ヘクタールという広大な公園には、東大寺、興福寺、春日大社、国立博物館、正倉院等々が点在。
「雄大で豊かな緑の自然美が調和した奈良公園は、他に類例のない歴史公園とも称されています。野生のシカが生息していることでもおなじみで、古都・奈良のまさに“顔”! 園内散策のあとには街歩きも楽しめ、奈良ビギナーにもリピーターにもおすすめです」(星さん)
モミジやイチョウなど、秋色に染まった樹々とシカはとってもフォトジェニック。これからの季節のんびり散策したい。
[営業]24時間開放 [休日]無休 [料金]無料
依水園(いすいえん)
国の名勝指定。奈良を代表する大庭園
奈良観光の中心、東大寺南大門の真西に位置する依水園は、江戸前期に築かれた「前園」と明治期の「後園」の2つの庭園からなる、奈良を代表する池泉回遊式庭園。
海運業を営んだ中村家3代が収集した古代中国、朝鮮などの陶磁器類や日本の茶道具類を収蔵・展示する「寧楽美術館(ねいらくびじゅつかん)」も併設し、見どころ満載。庭園内では、真っ赤に燃えたようなドウダンツツジやイロハモミジとともに二季咲きする十月桜も楽しめる。
[営業]9:30~16:30(16:00受付終了)
[休日]火曜(祝日の場合は翌日)、12月下旬~1月下旬、9月下旬
[料金]1200円
観光中に休憩するなら…紅葉ビューのカフェ
観光の合間のティータイム…ではなく、ここがお目当てとなる、“紅葉ビュー”自慢のカフェをピックアップ!とっておきの景色とスイーツのコラボに食欲も増し増し。ベストショットを撮ったあとは、「花より団子」でOKかも!?
茶寮 八翠
嵐山の絶景を愛でる特等席へ!
「翠嵐(すいらん)ラグジュアリーコレクションホテル 京都」内にあるカフェ。「保津川や嵐山の美景を望みながらいただくアフタヌーンティーは特におすすめ。甘味と食事をどちらも楽しめる充実の内容で、予約していただく価値大です」(星さん)
ほかセレクトランチ(6100円)なども人気。
[営業]11:00~17:00(アフタヌーンティーは4部制)[休日]無休
奈良ホテル ティーラウンジ
奈良公園隣接ホテルでティータイムを
近鉄奈良駅から徒歩15分。奈良公園に隣接し、“関西の迎賓館”とも称される奈良ホテル。ティーラウンジでは窓外に広がる紅葉を眺めながら、パティシエ特製のオリジナルケーキやこだわりの紅茶、コーヒーなどをゆったりと楽しめる。
ケーキセット2300円~、サンドウィッチ各種2100円~など。
[営業]10:00~18:00(LO 17:30) [休日]無休
Cafe Mercredi
哲学の道沿いの洋館カフェ
紅葉散策の名所としても知られる「哲学の道」沿いにたたずむ築80年の洋館では、京都産食材などを使用したこだわりスイーツが楽しめる。
窓から紅葉が見える特等席はもちろん、テラス席も人気。カフェ利用のほか、店内にずらりと並ぶ焼き菓子はお土産にもおすすめ。
[営業]10:30~17:30(最終受付00:00) [休日]不定休
※表記の価格はすべて編集部調べ、税込み表示です。
※最新の情報はHP等で確認ください。
教えてくれたのは……星 裕水さん●旅行ジャーナリスト・編集者。トラベルモビリティ研究家(R)。出版社退職後に独立。旅行ガイドブックや交通関係書などに携わる。帝京短期大学非常勤講師。
取材・文/松家寛子
