ドジャースの大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希

 世界中の野球ファン、というよりも大会主催者、日本での独占放映権を獲得した『Netflix』にとって気が気でないニュースが飛び込んできた。

 来年3月に開催される『WBC2026』について、ロサンゼルス・ドジャースのブランドン・ゴームスGM(41)が、開幕まで4か月を切った現時点で「まだ話し合っていない」と“日本人トリオ”の出場が不透明であることを明かしたのだ。

 2連覇を目指す「侍ジャパン」日本代表チームにとって、2023年大会に引き続き大谷翔平投手(31)、山本由伸投手(27)、佐々木朗希投手(24)は不可欠な存在。しかしながら3人は2025年シーズン、そしてポストシーズン、ワールドシリーズを戦い終えたばかり。

 メジャー事情に詳しいスポーツライターも懸念するのは、大谷らのコンディションだ。

「いくら“超人的”な体力を誇る彼らとて、1年間を戦い抜いた疲労は相当なもの。その疲れも抜けないままWBCに合わせて前倒しでトレーニング、調整となれば、怖いのが大会や2026年シーズン開幕後の不調とケガ。高額なサラリーを払っているド軍にしてみれば代表チームに送り出すにも慎重になる、本音を言えば“出したくない”でしょう」

 ドジャースで初めての二刀流ながら、シーズンを通して投打に活躍した大谷。サイ・ヤング賞こそ逃したものの、ワールドシリーズ3勝の離れ技をやってのけてMVPに輝いた山本。そして右肩の不調に悩まされながらもポストシーズンからはクローザーとしてチームのピンチを救い、来年は先発復帰が予想される佐々木。

大谷らと「近いうちに話す」とはいえ

 球団首脳陣としてみれば、大谷らがWBCで再び世界一になるよりも万全のコンディションでキャンプイン、シーズン開幕を迎えて、三たびワールドシリーズを制覇してほしいのは当然だ。「彼らとは近いうちに話す」とのゴームスGMだが、本心はすでに“解決済み”の問題かもしれない。

 そして万一にも、ドジャースの日本人トリオがWBCを辞退することになれば、MLB全体に及ぼす影響も計り知れないとも。

2023年のWBCでは焼き肉店で日本代表の決起会が行われた(大谷翔平のインスタグラムより)

ワールドチャンピオンがWBCに消極的な姿勢を見せれば、ライバル球団も倣って“出し惜しみ”する可能性が高い。それこそ早々とアメリカ代表のキャプテン就任が決まった(ニューヨーク)ヤンキースのアーロン・ジャッジ(33)。

 2023年は怪我で出場断念した、ドミニカ共和国のウラジーミル・ゲレロJr.(26、トロント・ブルージェイズ)といったMLBを代表するスター選手による辞退ドミノが起きてもおかしくない。それほどに大谷投手は、メジャーでも影響力が大きい選手になっています」(前出・スポーツライター、以下同)

 片や「侍ジャパン」でも不協和音が生じつつある。日本シリーズを優勝した福岡ソフトバンクホークスの主力で、パ・リーグ首位打者の牧原大成選手(33)が「コンディション不良のため」に11月6日からの日本代表合宿を辞退している。

ライト層どころか、野球ファンも視聴回避か

 同様に北海道日本ハムファイターズのエース・伊藤大海投手(28)、阪神タイガースで66試合に登板した及川雅貴投手(24)らが辞退。11月15日、16日に行われる韓国との強化試合への出場を避けた。代わりに追加招集されたのは、まだまだ実績に乏しい若手選手だ。

「将来の代表候補とは言える若手ですが、WBCで各国代表を相手に勝ち上がっていける、またお客さんを呼べる選手かというとそこまでではない。もちろん牧秀悟(27、横浜DeNAベイスターズ)や岡本和真(30、読売ジャイアンツ)ら前大会メンバーも残っていますが、やはり日本人メジャーリーガーも揃ってこその侍ジャパン人気です。

 しかも強化試合は地上波で放送すれども、WBCはNetflix契約者しか視聴できない現状では、大谷をはじめMLBスター選手が出場しない大会ならばライト層どころか、野球ファンも視聴を避ける可能性もあります」

WBC2026を独占生配信するネットフリックス、日本戦の“無料配信”はあるのか(公式Xより)

 日本国内におけるWBC2026の独占放映権を、アメリカ大手動画配信会社『ネットフリックス』が獲得したことが発表されたのが8月。NPB(日本プロ野球機構)はおろか、大会スポンサーにも事前通達されずに契約が交わされた“ビジネス”に、予選に位置付けされる「東京プール」大会のメインスポンサーを務めるディップ社も、

《WBCの放送・配信権について、懸念を表明します。今回の放送形態では多くの人々のWBCを気軽に楽しむ機会が奪われてしまうのではないかと危惧しています。》

 公式Xで異例の見解を示す事態に。併せて《広くあまねく視聴出来る環境を準備するべき》と、Netflix契約者のみならず、多くの人がWBCを楽しめるよう促す“要望”を述べた。

NPB、民放連も交渉すらできない状態

 それでも広告代理店・営業担当者は「現状に変化はないと聞きます」と肩を落とす。

「前大会のアメリカとの決勝戦の視聴率は46%と、単純に5000万人以上がテレビに釘付けになっていたことになります。日本では野球人気が高いのは周知の事実でビジネスチャンスとばかり、ネットフリックス社は100億円とも150億円ともされた放映権料を回収できると踏んでいるのでしょう。

  そして現状ですが、アメリカのビジネス形態として今さら地上波に譲渡する、または共同権利を持つことも考えづらく、NPB、そして民放連も交渉のテーブルにすらつけない状態だそう。スポンサーも契約を“破棄”できる条項を盛り込んでいないのならば、大谷選手らが辞退すれば誰も得をしない、過去一番で盛り上がらないWBCになる可能性も出てきました」
 
 WBC2026の開幕まで4か月、前回同様に大谷を中心とした侍ジャパン快進撃で日本中が熱狂する国民的イベントになりうるか。