氷川きよし、約3年ぶりに『週刊女性』に降臨!
「そんなになります? それだけ年を重ねたってことですね(笑)。でも『週刊女性』さんは、休み中もいつも見てましたよ」
「休むべきときに休んだって感じ」
'22年末の『NHK紅白歌合戦』出場後、'23年から歌手活動を休止。1年8か月の充電期間を経て、'24年8月に再スタートを切った。そもそも、どうして休養しようと思ったのかを尋ねると、
「やっぱり、休むべきときに休んだって感じですよね。おかげさまで、'00年のデビューからずっと注目してもらえて、たくさんの大きなお仕事など、恵まれた状況にさせてもらって。同時に“1番を目指す”という責任もあり、気負い続けてきた気がして」
移り変わりの激しい芸能界。休養の間に忘れられてしまう怖さなどは感じなかったのだろうか?
「それはありました。でもそれはそれ。そうなったら、もう仕方ないし」
休養期間は、実家のある福岡やロサンゼルスなどで過ごしたという。
「ロス、楽しかったですよ。ロスを拠点にフロリダ、サンフランシスコ、ラスベガス……。“音の魔術師”とも呼ばれるジャズピアニストのハービー・ハンコックさんにもお会いできました。
自分自身のキャリアや活動についてお話ししたら、“日本の地で歌い続けていくことが、あなたにとってものすごく大事なことだよ”と言っていただきました。すごく納得しましたね」
さらにはシルク・ドゥ・ソレイユほか、たくさんのショーも見たと目を輝かせる。期限は特に決めていなかった休養。その終了&再始動を決めた心境は、
「コンサートをやっていないから、だんだん不安になっていったというのはあるかな。日本人として日本の歌を歌ってきたから、アメリカで過ごす中でだんだん演歌を歌いたくなって、フロリダで仲間内の集まりで歌ったんです。『白雲の城』などは、予想以上にすごく喜ばれました。
やっぱり人に喜ばれないと、生きている充実感がないっていうか。求められているときが、華。良くも悪くも取り上げてもらえることは、ありがたいことだと改めて思います。デビュー当時、プロデューサーに言われた“面白おかしく、冷やかされるぐらいでいい”という言葉も胸に刻まれています。よく、好きの反対は無関心って言いますよね?
だから、嫌いであろうとも人の心にあるほうがいい。無関心はやっぱり寂しいから。最初は3年くらい休もうかなと思っていたんですが、“まだ、みなさんに気にかけてもらえているときなんだ”と思ったときに心が固まりました」
再始動にあたり、まず最初に考えたことは?
「“氷川きよし”の大切さです。氷川きよしとしてつくり上げてきたものが大きいし、歴史があるから。生涯やり続けないといけないと思いました。みんながつくってくれた氷川きよしだから、そこは全うしないといけない。
でも自分のことを大切にしたときに、自分の“好き”を集めたKIINA.というキャラクターも大切にしたい。だから、両方をやることにしようと思って。どちらかに統一することはできなかった」
「もうドレスを着たいとも思っていない」
氷川きよし+KIINA.という名義を打ち出した。そして'00年のデビュー以来、所属してきた事務所から独立。'24年4月に株式会社KIIZNA(キズナ)を設立している。
「自分のやることは自分できちんとやる。こぢんまりでいい。自分が信頼している人とやっていけたら十分だと思って」
'24年8月、東京・有明でのライブで歌手活動を再開。休養直前の氷川はフェミニンな世界観を好み、作品やステージにもそれが投影されていた。ひょっとしたら復帰後の氷川は演歌を歌わなくなるのでは? そんな心配を勝手にしていたが、完全に杞憂だった。
「全然そんな気がなくなっちゃった(笑)。もうドレスを着たいとも思っていないし、髪も短くしたし。そこにこだわらなくなりましたね。多分、もし休んでいなかったら、あれを続けていたかもしれない。変な欲がなくなって、もう菩薩のような境地で(笑)」
その変化は、海外でいろんな価値観を吸収したからだと話す。
「“女だからこうしなきゃいけない”“男だからこうしなきゃいけない”っていう型にハマることはない。表現において、休養前は実験していたんだと思います。でも、海外で過ごしたことで“人間なんだ”ということを自覚して。だから、まず人間性を磨いていこうと思いました。
公私共に、誰に対しても尊敬の気持ちを持って、振る舞う。そこがすごく大事なんだなと改めて気づきました。でも少し時間がたったら、またドレスを着て、そういう世界観の曲を歌っているかもしれないけどね(笑)。それはわからない。ただ、ちゃんと自分の世界をこれからつくっていきたいなと思っていますね」
復帰後の活躍は、とても華やか! 1月からは全国ツアーを展開。4月には『ゲゲゲの鬼太郎 私の愛した歴代ゲゲゲ』のエンディングテーマ『Party of Monsters』を氷川きよし with t.komuro名義でリリース。
5月には『赤いスイートピー』(松田聖子)をデジタル配信。9月には『白睡蓮』をリリース。今までは出ていなかった番組に積極的に出演するなど、デビュー25周年を鮮やかに彩っている。
そして約4年ぶりとなる、全曲オリジナルの新アルバム『KIINA.』を11月19日に発売。バラードからポップス、ドラマチックなサウンドまでがキラキラとちりばめられている。
「やっぱりシングルが『Party of Monsters』と『白睡蓮』だから、そこにプラスできる曲を考えて。今まで出したポップスアルバムの、また成長版っていうか。『Papillon(パピヨン) -ボヘミアン・ラプソディ-』('20年)、『You are you』('21年)を経て、今回の『KIINA.』は、第3章っていうのかな?」
「とにかく、怖くても前に出る」
休養中、ロスの海を見ながら、初めて演歌の作詞をした『暴れ海峡』も収録されている。
「うまく言えないんだけど、『暴れ海峡』は演歌ではあるんだけど、そういうカテゴライズはもう外したい。その中で縛られちゃうから、業界としてもどんどん縮小していってしまう。固定の人しか知らなくて、聴かないジャンルになることは、怖い。だから、そこをどうやってつくり出せるかだと思っていて」
氷川の声は、どんどん熱を帯びていく。
「とにかく、怖くても前に出る。一歩ずつ、一歩ずつ。それをずっと積み重ねて。10年を目安に積み重ねていかないといけないと思っていて。やっぱり、未来をイメージしていますよね。
過去の自分も好きだし、これからの自分も好きだし。とにかく、今の自分がすごく好きだから。そんな今の自分をたくさんの方に見ていただきたいし、自分の歌をまた愛してもらいたい。“ロウニャクニャンニョ”の方に届けられるように動いていきたいですね」
ワンちゃん、増えました
「仕事が終わって帰宅すると、犬が5匹いて。みんな、腹を出して寝ている無防備な姿を見ると“こんな幸せなことってあるんだ”って感じますよね。癒される。人に求めるよりも、この子たちに求めたほうがいい(笑)。完全に生きがいになっています」
今まで飼っていたミルク、ラテに加え、コナ、モカ、カカオを迎え入れた。すべてミニチュアダックスフントだ。
「先日、アウトレットに行ったんです。バギーに5匹をぞろぞろと乗せて、引きながら歩いたら、居合わせたお客さんたちの注目の的でした(笑)」
『KIINA.』11/19(水)発売
小室哲哉プロデュース『Party of Monsters』をはじめ、松本隆作詞・TAKURO(GLAY)作曲の最新曲『白睡蓮』など全12曲。初回限定盤(CD+DVD)5500円(税込み)、通常盤(CD)3500円(税込み)※写真は通常盤
『氷川きよし特別公演』
'26年1月から、全国4劇場で座長公演を開催。第一部=白雲の城(時代劇) 第二部=氷川きよしコンサート2026 【東京】明治座('26年1/31〜2/18)【愛知】御園座(3/6〜18)【大阪】新歌舞伎座(4/10〜19) 【福岡】博多座(4/25〜30)
取材・文/池谷百合子
