高市早苗首相 写真/共同通信社

 こわばった笑顔も遠い昔、日を追うごとに笑顔がナチュラルになっていく高市早苗首相。10月21日の政権発足当初から各種世論調査で高い内閣支持率をマークし、JNNが11月初めに行った調査では、ついに82%に達した。無理に笑顔をつくらなくとも、笑いが止まらない状況だろう。

 年の瀬が迫る中、高市首相は消費税率の引き下げについては、慎重な姿勢を崩していない。この1か月、どのような物価高対策を打ったのか。

高市政権の物価高対策は「付け焼き刃」

 政治評論家の有馬晴海さんはこう話す。

「ほとんど何もやっていないので点数はつけにくいですね。参院選で自民党が公約した国民一律2万円の給付金はやらないと方向転換してしまったし、野党が求める消費税の減税もしません。税率を一度でも下げると上げにくくなるという財務省や自民党の意向でしょう。

 かわりに自治体が使途を決められる重点支援地方交付金を拡充し、プレミアム商品券やおこめ券の発行などを支援する方針のようですが、おこめ券を見たことのある国民がどれくらいいるでしょうか。ネットで米を購入する人が増える中、1枚440円分でスーパーなどの店舗で使うしかありません。

 券の印刷代や郵送費がかかりますし、2万円振り込むか減税のほうが国民はありがたいはず。ようやくガソリン暫定税率廃止までの移行措置となる補助金増額が始まっただけです」

 ジャーナリストの大谷昭宏さんは、高市政権の物価高対策を「付け焼き刃」と断じ、先進国で最低水準の食料自給率を踏まえて言う。

「食料品の62%を海外からの輸入に頼る中、円安に拍車がかかり、買い物をしても同じ金額で今までと同じだけの量を買うことは難しくなっています。どれだけ稼いでも、食料品の消費税は一定ですから格差は広がるばかり。世帯収入にかかわらず、誰でもお腹はすきますし、食べ盛りの子どもはたくさん食べます。消費減税を考えるべきです。

 株価は上がっていますが、株で資産運用する国民は限られますし、物価高をむしろ後押しする政策といえるでしょう」

女性用トイレの行列、改善に向けた動きは

 首相就任後すぐ外交デビューを果たし、アメリカのトランプ大統領や中国の習近平国家主席らと次々に会談。連日のようにニュースをにぎわせた。

「日常的なジョークを挟む程度の英語力はあるため、いい外交デビューになりました。ただ、米空母ジョージ・ワシントンに乗艦してトランプ大統領の隣でピョンピョン跳ねたり、腕を組んだのは驚きました。

 高市首相は“鉄の女”といわれた英国の故サッチャー元首相を尊敬しているといいますが、サッチャーさんが跳びはねる場面が想像できますか?日中関係をめぐっては、国会で立憲民主党の岡田克也議員の質問に乗せられて“台湾有事は存立危機事態になり得る”と具体例に踏み込み、中国から猛反発を食らいました。本音をつい口走ってしまったのでしょう。

 いまどき“戦艦”と発言していましたが、巨大艦船をつくる時代はとっくに過ぎ去っています。戦艦大和じゃないんですから」(大谷さん)

体を寄せトランプ大統領と仲睦まじい様子の高市首相(高市首相本人Xより)

 前出の有馬さんは外交デビューについてこう話す。

出来すぎ、満点です。トランプ大統領に媚びるなと批判もされましたが、外交はウィンウィンの関係を築くことが大切です。トランプ氏は日本から輸入する自動車の関税を15%で決着させました。

 もとは2・5%ですから損には違いありませんが、最初は27・5%に設定されていたため、再度の引き上げが心配されていたんです。連日会談した海外の首脳は大物ばかりでしたから、主役級のそろうドラマではないけれども、内閣支持率が上がるのも当然との見方があります」

 意外だったのは女性閣僚の人数。過去最多は5人で、初の女性首相誕生を印象づけるためにも記録更新が予測されていたが、2人にとどまった。

「人材がいないんですよ。女性ならば誰でもいいわけではありませんから。それでも無理して6人入閣させると思っていました。高市さんは女性首相ということはほとんど意識しておらず、能力があれば男性でも女性でも変わらないという考え方なんです。

 自分のことも女性初だから首相に選ばれたわけじゃないと思っているはずです。“私、中身はオッチャンだから”と言っているぐらいなんです」(有馬さん)

 前出の大谷さんは、女性登用について0点と手厳しい。

「女性閣僚は2人だけで人権意識も心配されます。マイナス20点でもいいくらいです。ちなみに、女性用トイレの行列問題で国土交通省が改善に向けた有識者会議を開きましたが、石破茂前首相の肝いりで6月に政府の『骨太の方針』に盛り込まれたものです。ですから、高市首相の手柄とはいえませんね」(大谷さん)

クマ問題の対策は…

 最後にクマ対策。秋田県知事の要請で自衛隊の後方支援が始まり、石原宏高環境相は被害地域への専門家の派遣を表明。警察はライフル銃での駆除に乗り出した。

 前出の有馬さんは言う。

「被害地域はコロナ禍の再来のように街が静まり返っているといいます。自衛隊は人員が少なく、自衛隊法によって街中で銃を撃つことを禁じられていますし、自衛隊の本来の仕事ではありません。

 昔はクマのエサとなるドングリや栗の木を山に植えていました。時代の流れで実利をもたらすことが優先され、クマのエサまで気が回らなくなったのでしょう。専門家派遣はそうした環境悪化などを修正するのに効果的だと思います」

 一方、大谷さんは「採点不能」として次のように話す。

「クマが出没し始めたのは8月末ぐらいからですからね。高市首相の失策ではありませんし、対応は迅速にはみえますが、見るに見かねて対応しているように思えます。もう少し猟友会に手厚い対応をしてもいいかもしれません。それと、クマ対策も大事ですが、話題になったシカ発言を取り消せよと言いたいですね」

高市早苗政権始動からの働きぶり「1か月通信簿」 ※週刊女性編集部がピックアップした項目について、各氏に100点満点で評価してもらった。判定は各項目を足し合わせた総合点から算出した平均値

 採点項目からは外したが、政治とカネの問題は言うまでもなく0点だろう。企業・団体献金の禁止を求める声が上がるなか、なぜか議員定数の削減に問題をすり替えた。

 高い政権支持率で党内反発を封じ、食料品にかかる消費税の減税などを実現してほしい。誰もが安心して新年を迎えられるように……。