「サチ(岸井ゆきの)と出会ってから別れるまでの15年。タモツの成長や人生の一部を演じることができて、とても楽しかったです」
と柔らかな口調で語る宮沢氷魚。11月28日公開の映画『佐藤さんと佐藤さん』では、W主演を務める。
ケンカのシーンは常に100%で演じました
本作は、“佐藤”という同じ名字を持つ男女が交際から結婚、そして出産を経て歩む15年間を描いたオリジナルストーリー。宮沢は、まじめで正義感の強い佐藤タモツを演じている。
「個人的にタモツとは性格が似ている部分があります。彼がぶつかる壁や乗り越えるべき課題にも共感できて、自分を見つめ直す作品になりました」
とも話す。具体的にどのような部分が似ているのだろうか。
「自分の思いを言葉にして伝えるのが上手じゃないところです(笑)。僕はタモツと同じで、その場ではなかなか思ったことを言えなくて。ため込んだ結果、抱えきれなくなって爆発したことも。なので、タモツのイライラする気持ちや苦しみもすごくわかります」
その穏やかな佇まいからは、感情を爆発させる姿は想像しにくい。
「最近はありませんが、子どものころは“ちょっとしたきっかけで今までためていた不満を全部ぶつけちゃう”みたいなこともあった気がします。昔から自分の中だけで解決する癖があって。あまり誰かに相談することもなかったので、負担がどんどん蓄積されちゃうんですよね」
劇中にも、感情をぶつけ合うシーンが要所にちりばめられている。活発なサチとまじめなタモツ。正反対な2人の関係が次第に変化していく様が印象的に表れている大事なシーンだ。
「ケンカのシーンは、動きも多いし大声も出すので、結構体力を使います。本番では3、4テイクくらい撮りましたが、それが限界でしたね。もう一回やろうと思っても多分できないです。それくらい全力を注いで、常に100%で演じました」
中学生までは野球選手になりたかった
自身は誰かと衝突したとき、どのように解決するのだろうか?
「一回自分で整理します。どんな言葉を選べば伝わるか考えているとやっぱり時間がかかってしまって。自分の中で整理がついたときにはもう手遅れになっていることも。本当はもう少し素直にいろいろ言えたらいいのですが……」
その言葉からは、相手を思いやる姿勢が感じられる。
「どんなに親しい仲でもちょっとした気遣いが円満な関係を保つ秘訣になると思うので。丁寧に伝えるということは心がけています。
ケンカになったときも、相手を悪者にして“自分が正しいでしょ?”と主張するのではなく、互いに理解することが大事だと思います。難しいですけどね」
変わりゆく2人の関係性とは対照的に、タモツは一貫して弁護士を目指し続けるという役どころでもある。宮沢自身、長年目指してきた夢があったという。
「中学生までは野球選手になりたくて。部活とクラブチームに入って、すごくまじめに野球をしていました。教室にもグローブを持っていって、暇さえあればボールを触っていました。本当にプロになりたかったんです。
でも、中学で“無理だ”と実感しました。そこそこ強いチームに入ったのですが、周りがうますぎて! 先輩には何人かプロに行った人もいるくらい。本当に一握りなので、このまま野球を追い求めて、プロになれなかったらどうしようと不安になりました。野球漬けになりすぎて苦しくなっちゃったんです。そこからプロは諦めて、普通の野球好きとして野球を続けました。今でも野球は好きです。配信で試合を見たり、球場に行ったりもしてます」
日常の小さな幸せ
犬を飼っていて、毎日朝晩と散歩に行きます。たまに散歩コースとは別の道に行くと、知らなかったお店や可愛らしい建物があったりして。身近にある新しい発見をすると、ちょっとした幸せを感じます。
映画を通して伝えたいメッセージ
誰かと共に人生を過ごすとき、すれ違いや勘違いが生じるのは当たり前。それを受け入れて、自分の気持ちをちゃんと伝える、相手の気持ちを理解しようと努力する。そうやって幸せな時間を過ごしてほしいです。
