11月14日、農林水産省が発表した全国のスーパーで販売される米5キログラムの平均価格は4316円と、過去最高値を更新した。家計への圧迫感は増すばかり。SNSでは、
「米がいよいよ贅沢品になってきた」「主食に、ここまでお金がかかるのはつらい」
といった不満の声が相次いでいる。
米の価格が吊り上がっている原因
ここまで米の価格が吊り上がっている原因は何なのか。現場の農家に話を聞いてみると、単純に“米不足だから値上がりしている”という理由ではないようだ。新潟県で米作りを行っている『株式会社うおぬま小岩農園』の小岩孝徳さんは、次のように話す。
「体感としては、むしろ米は余ってきていると思います。今年は豊作で、倉庫には古米が余り気味だとも聞きますし、米自体は足りてはいると感じます」
なのに、店頭価格は過去最高に――。このギャップの背景にあるのが、農協(JA)が提示する“概算金”の大幅な引き上げだ。
《米の概算金は、JA等の集荷業者が生産者の出荷の際に支払う仮渡金であり、県単位で全農県本部・経済連が決定しています》(農林水産省公式ホームページより)
この概算金が今年は大きく引き上げられ、その結果、農協以外の卸業者もそれに追従せざるを得ず、米の価格全体が一気に押し上げられた形に。
概算金の引き上げの背景について、前出の小岩さんは、こう語る。
「昨年の米不足の状況から、農協は高値をつける業者に競り負けてしまい、十分な集荷ができませんでした。その反省から“今年はなんとしても集荷したい”という気持ちが米の値段にも表れたのだと思います」
農家は儲かっている?
では、米の価格高騰で農家は儲かっているのか。答えは農家の出荷形態によって大きく異なるそう。
「“直売”が中心の農家は、市場価格ほど米の値段を上げづらいので、影響はそんなにありません。一方で農協に100%出荷している農家は、米の価格上昇の恩恵を直接に受けるので、影響はかなり大きいと思います」(前出・小岩さん、以下同)
しかし、それも一時的な可能性が高いと指摘する。
「さすがに値段が上がりすぎているので、よっぽどのことがない限り、来年には下がっていくと思います。5キログラム2000円から3000円台という“適正なライン”までは下がるでしょう」
米の価格が下がっても、農業を持続できるようにするためには、今後は構造改革も避けては通れないとも。
「日本の農業法人は規模が小さいので、大規模化や集約が進まず、生産コストを下げることができていません。米の値段が下がっても、利益をしっかり出せる構造を作って、主食である米の値段を下げていくことが重要だと考えています」
今後、日本の米農業は、価格が下がっても成り立つ経営を見据える必要があるという。
消費者は高騰に苦しみ、農家は不安定な価格に振り回される現状で、主食の米は今後どのような道を辿るのか。私たちの食卓を支える“米の未来”に注目が集まる。
