那須川天心

「あんな“ブー”ってすることないじゃん(苦笑)。初めてですね。日本でブーイングなかなかないじゃないですか。俺、嫌われているんですかね?」

 11月24日、ボクシング転向8戦目となるWBC世界バンタム級タイトルマッチで敗戦した那須川天心選手(27、以下敬称略)。試合後の会見では、7ラウンド途中に井上拓真選手(29)を両手で押したことで、観客からブーイングを受けたことを聞かれて苦笑した。

 キックボクシング42戦、総合格闘技4戦、そしてボクシング7戦と全戦全勝で迎えた井上との一戦。21日の試合前会見でも、記者から「拓真の次は尚弥か」と拓真の兄で、3階級王者の井上尚弥選手(32)との対戦を問われて「あおりすぎ」と、やはり苦笑いしていた天心。

 やはり“井上家”の壁は高かったのか、序盤こそ試合を有利に運んではラウンド後にコーナーで腕をぐるぐる回すパフォーマンスを披露して会場を沸かせるも、次第に拓真のテクニックによって動きを封じられ、最後までペースを取り戻せずに3-0で逆転の判定負け。

 プロ公式戦55戦目にして初黒星を喫するとともに、これまで天心ファンで埋め尽くされた“ホーム”から一転、試合途中には“拓真コール”が沸き起こったトヨタアリーナ東京で、冒頭の“洗礼”も受ける初の“アウェー”にもショックを受けたようだ。

一秒でも早くリングを降りるべき

 そして、さらなる批判が向けられたのが、天心による試合後の行動。

 勝敗が決して拓真と健闘を称え合った後、リングから降りることなく留まり続けた天心はマットに膝をつけて手を合わせて、四方に深々と頭を下げつけて見せたのだ。一見、ファンへの誠意を示したパフォーマンスにも思えるが……、

拓真が勝ってベルトの受け渡しやってるところで土下座してるのはどうなん? お前もうええから家帰ってやれよって思うねん。 お前はこのリングでは主人公じゃ無いんや》
《天心よ、最後まで傲慢だったね。本気で勝者を讃える気があるなら、一秒でも早くリングを降りるべきだったな。土下座ならリング外でやりなさい》

井上拓真との試合を振り返った那須川天心、各メディアでは“土下座”が報じられた(公式Xより)

  チャンピオンベルトを巻いた勝者の横で、“土下座パフォーマンス”を披露して注目を集める敗者の姿に、ネット上から「早くリングから降りるべき」と礼に欠いた行動と捉えられたよう。一方で、
 
《試合後に会場の皆に座礼くらいしても良いでしょ 気になるのはカメラが勝者ではなく座礼の天心を映し続ける事》
《スポンサーの意向なのか本当に実況酷かったし、リング上の井上選手を映さず退場を終える天心にカメラがベタ付きだったのは本当に失礼だったと思いますよ。勝負の世界は勝者こそ称えるべき》

 拓真そっちのけで天心メインで追い続けた、試合を独占生配信した『Amazonプライムビデオ』のカメラパフォーマンスや、“天心寄り”ともされた演出にも不満の声。

スポーツ紙でも「天心破れる」

 ボクシングをはじめとする格闘技を取材するスポーツライターは、

「カメラはなんとか天心選手と拓真選手が収まる画角を試みてはいましたが、ボクシングファンが本当に見たいのはベルトを巻いたチャンピオンの姿。同様に翌日のスポーツ新聞でも、“天心破れる”といった具合に敗者メインの見出しが見受けられました。

 一般的な知名度、話題性では天心選手が上回るのはたしかですが、サブスクであるアマプラだけにタイトルマッチを純粋に見たい視聴者層のほうが多かったのかもしれません。鳴物入りでボクシングデビューした天心選手には“アンチ”も多く、今回のパフォーマンス、そして演出はより批判の声を大きくしたのでしょう」

 試合後に騒ぎ立てられた“土下座”報道に反応してか、翌朝に自身のXを更新して、土下座写真を添えてのポスト投稿した天心。

【謝りはしません一生懸命やりました 後悔は無いです 堂々と前を向いて生きていきます】

 パフォーマンスは土下座ではなく、あくまでも試合を見にきてくれた観客、応援してくれたファンへの“座礼”と主張したかったのか。いずれにしてもボクシングファンには、王者に対する“礼節”を欠いた行動と映ってしまったようだ。