ファイターズ選手会長も務めた松本剛選手(公式インスタグラムより)

 読売ジャイアンツは11月25日、北海道日本ハムファイターズから国内フリーエージェント権を行使した松本剛選手(32)と契約合意に達したことを発表した。ところが各方面から聞こえるのは、補強よりも「人的補償」の心配ばかりーー。

 2022年にはパ・リーグ首位打者に輝いた、俊足巧打のベテラン外野手獲得に動いた巨人。同日には、『スポーツ報知』YouTubeチャンネルでも松本選手の移籍を伝えたのだが、入団を歓迎する一方で「リスクも大きい」と懸念したのが「人的補償」だった。

 松本選手の今季年俸は1億1000万円(推定)で、日ハムでは「Bランク」にあたる。つまり獲得した暁には、巨人は金銭補償(年俸の60%)、もしくは金銭補償(40%)+人的補償を日ハムに譲渡する必要が生じるということ。

 32歳とまだまだ若い松本選手ではあるが、今季66試合の出場で打率.188と不振に終わっただけに、《FAで獲った選手より人的補償の方を気にしないといけないって全然補強じゃない》などと、報知チャンネルのコメント欄でも続々と懐疑的な声が上がっている。

 かつて広島東洋カープに移籍してブレイクした、当時23歳だった一岡竜司氏(32)。同じくカープに移籍した長野久義氏(40)、西武ライオンズに移籍した内海哲也氏(43)らベテランも人的補償で取られた過去もある巨人。

 もちろん外野のレギュラー候補がひしめくチームにおいて、環境が変化したことで再ブレイクの可能性も十分にある松本選手だが、それ以上に巨人ファンにしてみれば、入団から応援してきた“生え抜き”が28人のプロテクトリストから外されて、「人的補償」という形で強制的に移籍させられることに拒否感を覚えるのも無理はない。

坂本勇人や田中将大は守られるのか

 とはいえFA移籍における現状ルールは変わらない。ではファイターズが虎視眈々とねらう巨人選手とは誰なのか、パ・リーグを取材するスポーツライターに話を聞いた。

「一部では“坂本勇人がリストに入らない”との見方ですが、あり得ません。5億円の高額年俸だからとタカを括っているのならファイターズは獲りに行きますし、長野や内海のケースでのファンの反発を省みて、巨人も同じ轍は踏みませんよ。

 大物どころで言うと田中将大(37)ですが、戦力としての期待値は薄く、先発陣も揃えているファイターズだけに、本当に欲しいのはリリーフ投手だと思います。そしてもう一つ、補強ポイントになるのが捕手です」

巨人・山瀬慎之介のポスト(現在は削除済み)はファンの間でも拡散され、物議を醸している(Xより)

 実は松本選手のFA宣言から3日後の11月14日、ファイターズに“人事”の動きがあった。2025年シーズンの64試合でマスクを被ったベテラン捕手・伏見寅威選手(35)を、トレードで阪神タイガースに放出

 今季は主に伏見選手、79試合出場の田宮裕涼選手(25)、複数ポジションとの併用で起用された郡司裕也選手(27)で回し、レギュラー捕手を固定しなかったファイターズ。ドラフト5位で藤森海斗選手を獲得したとはいえ、まだ18歳だけに、オフに伏見選手の穴を埋めに動く可能性もあるわけだ。

契約更改で「保留」した二軍捕手

「巨人の一軍捕手は甲斐拓也(33)、岸田行倫(29)、大城卓三(32)の3人に加え、小林誠司(36)も控える“不動”メンバー。そのためシーズン大半を二軍で過ごした郡拓也(27)、そして山瀬慎之助(24)はプロテクト対象にはならないと思います。

 中でも山瀬は契約更改の場で、球団との出場機会をめぐる話し合いの末に二軍選手としては異例の“保留”をしたばかり。山瀬も“他のチャンスがあるのなら”と、他球団へのトレードを直訴しかねない事態だけに、今回の人的補償は本人にとってもいいタイミングとも言えます」

 イースタンリーグで100試合に出場して打率.302をマークするも、一軍ではわずか1試合の出場で終えた2025年シーズン。11月15日の契約更改交渉後に、自身のXを更新して、

【あれ、大した活躍してなかったら保留したのになかったことにされるの? 悲しい(涙)】

 自分を“塩漬け”状態にしている球団か、それとも「保留」を世間に伝えなかったメディアに対してか、不満げなポスト(現在は削除)を投稿した山瀬。

 11月27日にも設けられる山瀬の再交渉の場だが、固唾を飲んで見守っているのは巨人・阿部慎之助監督(46)ではなく、将来有望な捕手が欲しいファイターズ、そして新庄剛志監督(53)なのかもしれない。