11月22日の朝、愛子さまは訪問先のラオスから帰国された。17日から5日間にわたる初の外国公式訪問について、日本とラオスの関係が「人々の交流を通じて育まれ、発展してきたことを実感しました」と宮内庁を通じて感想を公表された。
そんな中、注目を浴びたのが、訪問2日目の18日の夜に晩餐会で述べられたお言葉。
愛子さまのスピーチを専門家が分析
「晩餐会の当日、昼間は現地の伝統衣装を着られていましたが、夜は日本の伝統衣装である着物をお召しになっていました。
17分に及んだスピーチでは、愛子さまは『サバイディー(こんばんは)』と現地の言葉での挨拶から入られ、『日本・ラオス両国において、お互いの国への理解や関心がより一層高まり、果てしなく続く悠久のメコン川の流れのように、どこまでも発展していくよう』などラオスへの敬意を述べられました」(皇室ジャーナリスト、以下同)
今回、海外でのスピーチは愛子さまにとっては初の経験。お言葉の中には、日本とラオスとの関係をJICAの活動や東日本大震災時の話など、深い関係性があることを強調し、メコン川やラオスの国花であるチャンパーなどを織り交ぜて、両国の未来の関係を願われた。
「愛子さまは今回の原稿について、天皇皇后両陛下と相談しながら、当日の朝まで推敲されていたと聞きました。自分のお言葉でしっかりと話される愛子さまに、『感動した』との声が多く上がっています」
一人で海外へ赴き、多くの要人の前でお言葉を述べられる――。愛子さまの成年皇族としての大きな成長に胸を打たれた人も多いようだ。
「今回のご挨拶は“初めての国際親善”という文脈において、内容・構成・所作ともに非常に丁寧に準備されたことが伝わる素晴らしいものでした」
そう話すのは、話し方トレーニング『kaeka』代表・千葉佳織さん。愛子さまのラオスでのスピーチの内容には様々な工夫が表れていたという。
「父である天皇陛下との会話に触れたくだりは、公務を越えてラオスに関心を寄せてきた様子が伝わり、会場に柔らかい空気を生んでいました。
また、日本とラオスの関係について、64年前からの歴史や1000名超の留学生の受け入れなど具体的な数字を挙げた点は、聞き手にスケール感を明確に伝える優れた構成でした」
「相手国に歩み寄る姿勢」
他にも千葉さんが注目したのは愛子さまの感謝の表現。
「東日本大震災の時にラオス政府に助けていただいた経験や、震災時のご自身の心情を語られるなど、ご自身の経験に基づいた感謝の表現は、心からの感謝と誠実さが伝わり、非常に強い印象を残されたかと思います」(前出・千葉佳織さん、以下同)
現地の言葉での挨拶や、ラオスの象徴を比喩として使用された点にも注目が集まったが、千葉さんもここに注目したという。
「“悠久のメコン川”や“チャンパー”といった相手国の象徴を使った比喩は、ラオスへの敬意と入念な準備のあとを感じさせました。
また、挨拶だけでなく乾杯の音頭も現地語を使用されたことは、相手国に歩み寄る姿勢がみられましたね」
愛子さまが直前まで推敲されたという内容には、やはり多くの工夫を込められていたようだ。しかし、スピーチは内容以外に、所作にも注目が集まるが、愛子さまは場の雰囲気をよく汲まれた話し方をされていたという。
「皇室の方々のスピーチは、表情が豊かで会話の合間の余計なつなぎ言葉がないため非常に聞きやすいのですが、愛子さまも同様でした。聞いているときの優しい笑顔、話し始めるときの明るい笑顔など、笑顔の種類が豊富で、笑顔を長時間維持する柔らかい姿も拝見することができました。
そして、通訳の方が話す間も、目線を上げて柔らかく微笑み、場を温かく保っておられました。“話していない時間の使い方”が非常にお上手だという印象をうけました」
無事に海外訪問デビューを果たされた愛子さま。ご自身の文章力と表現力で両国の架け橋の一歩目を力強く踏み出したようだ――。
15歳から弁論を始め、全国弁論大会4度優勝。そのうち、内閣総理大臣賞、文部科学大臣杯を受賞。慶應義塾大学卒業後、企業の人事部を経て、2019年株式会社カエカを設立。話し方トレーニングサービス「kaeka」の運営を行い、経営者、政治家、社会人の話す力を数値化し、話し方を改善するサービスをこれまで7,000人以上に提供している。2023年、東洋経済新報社「すごいベンチャー100」、Forbes JAPAN「次代を担う新星たち 2024年注目の日本発スタートアップ100選」に選出。著書に『話し方の戦略』
