高市早苗総理大臣、就任後初の会見(2025年10月21日)

 高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁に対して中国政府が猛反発。日本人歌手のコンサートの中止が相次ぐなか、対抗措置の矛先がいま、アニメへと向かっている。

中国は最重要マーケット

「11月17日の中国メディアの報道によると、12月6日に公開予定だった『映画クレヨンしんちゃん 超華麗! 灼熱のカスカベダンサーズ』の公開が“わが国の観客の感情などを考慮した”との理由で延期が決定しました。さらに同日、『はたらく細胞』も11月22日の公開予定から延期と報じられました」(スポーツ紙記者、以下同)

 また、26日に、12月19日~21日に予定されていたミュージカル『セーラームーン』の北京公演も中止となることが発表。

「同作はこれまでパリやニューヨーク、台北での上演経験もある、海外ファンからも広く支持されている作品です。今回、中国3都市を回るツアーの開催が決定していましたが、北京公演が『やむを得ない事情により、現地の判断に従って』という理由で中止されました。なお、いまのところ、杭州と上海公演は予定通り上演される予定です」

 一方、すでに上映中の劇場版『鬼滅の刃』は上映中止には至っていないものの、興行収入が急減しているという。日本が世界に誇る“ジャパニメーション”が、日中関係の冷え込みを理由に圧力をかけられ、現地の人々から避けられている。

 アニメ雑誌の編集者が危惧する。

「ジャパニメーションの世界市場において、中国は最大級の重要マーケットです。興行収入だけでなく、配信権やライセンス料、グッズ販売を含めると、かなりの外貨が日本に流入しています」

 だが、これは単に中国からの外貨喪失という問題だけではないという。

「いま日本のアニメ業界は慢性的な人手不足と低賃金に喘いでいます。こうした状況下での中国マーケットでの露出低下は制作費の削減に繋がり、さらなる人員不足、賃金低下をもたらしかねないと見られています」(アニメ雑誌編集者、以下同)

 さらに、アニメの下請けについても激変しているという。

「かつては日本の会社が、中国の下請け会社に原画を頼んでいましたが、今や逆転し、中国企業の下請けになる日本の会社が増えています。そのため、待遇のよさから優秀な日本人アニメーターが中国に流出しているのです」

 人材が流出すれば日本のアニメ産業全体の競争力が低下。作品のクオリティがさらに落ち、予算も縮小……という悪循環を生みかねない。

 過去にも、関係がこじれた相手国の“コンテンツ”を規制してきた中国政府。2016年からは韓国芸能人の中国での活動が実質的に禁止されている。

「11月1日の韓中首脳会談でようやく9年にも及んだ『限韓令』の見直しに向けた議論が交わされましたが、今、日本のアニメが韓国と同じ状況に陥っているといえます」(前出・スポーツ紙記者)

 今後の日中関係の変化に要注目だ。