現在、成人の5人に1人が、腎機能が低下した慢性腎臓病だと言われており、もはや“新国民病”と言っていい。この病気が進行すると、週に3回、1回4~5時間かかる人工透析を受けなければ命に関わることになり、日常生活に大きな負担が強いられる。そこで、腎機能を低下させて人工透析を近づける“要注意な食材”を腎臓専門医に教えてもらった。
名医が口にしない朝の定番食材とは
「私たちが食事をして水分や塩分をとったりタンパク質を食べて老廃物ができると、腎臓が働いて処理してくれるため、腎臓は食べ物の影響を特に受けやすい臓器と言えます。そのため、腎臓の機能が落ちている場合は食事に気をつけて腎臓の負担を軽くしてあげることがとても重要です」
と言うのは東北大学名誉教授で腎臓専門医の上月正博先生だ。どういった食材に気をつけるべきなのか。NG食材の筆頭は、ずばり加工肉だという。
「加工肉というのは、ソーセージ、ハム、ベーコンなどのこと。保存がきいて生の肉より安いものもあるので朝食に欠かさず食べている人もいると思います。加工肉には肉の変色を防ぎ、食感をよくするために、多くの場合、食品添加物のリンが使われています。リンは腎臓の負担を増やして腎機能が低下する恐れがあるため、避けたい添加物。食べないに越したことはありません。私もなるべく口にしないようにしています」(上月先生、以下同)
添加物のリンは、ちくわやさつまあげといった練り物にも使われている。
「原材料表示にリンとつくものが書かれていなくても要注意。pH調整剤という名前があれば、多くの場合、それにリンが使われています。また、練り物の原材料は魚肉ですが、魚肉に塩を加えて加熱すると弾力が生まれるため、練り物に塩分は必須。腎臓を守るために“減塩”は重要なので、練り物も避けたほうがいいでしょう」
もうすぐ正月だが、おせちの定番であるかまぼこも立派な練り物だ。腎機能の低下が気になっているなら食べないほうがよさそうだ。
また、忘年会などお酒の席でおつまみによく出てくる6Pチーズやチーズたらも食べすぎ注意。6Pチーズなどのプロセスチーズはナチュラルチーズを粉砕、加熱し、乳化したものだが、乳化の際に添加物のリンが使われているのだ。
「あくまでチーズの乳化のために使用されているので、原材料表示には乳化剤と書かれていますが、リンの一種のリン酸塩が使われている場合が多いです」
もはや国民食と言っていいラーメン。手軽に食べられるカップ麺や袋に入ったインスタント麺は人気だが、塩分がかなり多い。
「スープも合わせると1食5~6グラムほど。慢性腎臓病の人が目指すべき塩分量は1食ではなく1日で6グラム未満なので、どれほど多いかおわかりになると思います。また、食品添加物のリンも使われていますので、人工透析をしたくないなら避けるべき食品です」
日本人がどんな食品から塩分を多くとっているのかを調査した結果、1位と2位を独占したのがカップ麺とインスタント麺。よく食べるという人は意識して遠ざければ確実に腎臓の負担を減らすことができるだろう。ちなみに、3位から5位はすべて漬け物。塩分の多い漬け物も、間違いなく要注意食材だ。
野菜ジュースもじつは要注意だった
主食のパンも腎臓にとっては危険な食材だという。
「たとえば袋に複数個入った甘いパンを毎朝食べているという人もいると思いますが、そういう人はかなり危険。糖質のとりすぎで血糖値の急上昇を招き、細い血管が多く集まっている腎臓の機能を低下させます。では食パンやロールパンなどのただの白いパンならいいかというと、それらもやはり要注意。精白された小麦粉を使用した白いパンは食後血糖値を上げやすく、腎臓の負担になります」
パンを食べるなら血糖値が上がりにくい全粒粉のものがおすすめだという。
血糖値を上げるものといえば甘いもの。ケーキや団子は糖質だらけなので避けたいが、甘くないせんべいやポテトチップスも避けたほうが無難。
「ポテトチップスなどのスナック菓子は塩分が多く、せんべいは甘くなくても原料がお米なので糖質が多く、血糖値を上げてしまいます。食べるならほんの少量にするか、週に1回などと決めて食べるようにするといいと思います」
最後に、腎機能を悪化させる“飲み物”についてご紹介。
「フルーツジュースがじつは要注意。小さい紙パック1本に糖質が25グラム(角砂糖6個分)近く入っている場合もあるので、血糖値の急上昇を招きます。また、野菜ジュースにも意外と糖分が多く含まれています。たとえ100%の野菜ジュースでもなかには糖質が20グラム近く入っているものも。フルーツや野菜はジュースではなく、そのものを食べるようにしてください」
なにかと忙しい12月。缶コーヒーや栄養ドリンクを眠気覚ましに飲んでいるという人もいるかもしれないが、缶コーヒーにも砂糖が多く入っており、甘いものだと角砂糖3個分ほど、微糖タイプでも約1個分入っていると言われている。
「砂糖は血糖値を上昇させて血管を傷つけるので、腎臓を守るためには無糖タイプを選ぶようにしてください。また、栄養ドリンクにも意外と糖分が多く入っていますので、なるべく避けたほうがいいと思います。私もまず飲みません」
食事やおやつは365日、毎日の習慣。食材選びを少し意識するだけで腎臓の機能を守ることができる。要注意な食材とは上手につきあっていきたい。
なお、腎臓の機能を悪化させる食材もあれば、その一方で、腎機能のために積極的に食べたい食材もある。そういった食材については『週刊女性PRIME』内にある『《人工透析を回避せよ》腎臓を“若返らせる”食材を名医が伝授、高血糖・高血圧の人は今日から実践!』記事をお読みください。
上月正博先生◎東北大学名誉教授。山形県立保健医療大学理事長・学長、医学博士、日本腎臓学会功労会員、総合内科専門医、腎臓専門医、高血圧専門医、リハビリテーション科専門医。心臓や腎臓などの内部障害のリハビリテーションを専門とする。
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