※写真はイメージです

 毎年、11月下旬から3月にかけて流行するインフルエンザ。2025年は例年より早くお盆過ぎから患者が見られ、9月末ごろから増加中だ。

「年末まではA型インフルエンザ(H1N1亜型)が流行し、年明け以降はA型(H3N2亜型・〈香港型〉)とB型が流行すると予測されます。ということは、ワンシーズンに2回以上かかる危険が高いということになります」

 そう話すのは、クリニックフォアの古田みのり医師。

 流行シーズンが早まっている背景には、(1)新型コロナ対策の緩和でマスクや手洗いなどの予防意識が低下、(2)旅行者の増加によるウイルス感染機会の増加、(3)コロナ禍の影響で、インフルエンザの免疫が十分に得られていない、などが考えられる。

「高齢者や基礎疾患のある人は、特に注意してほしいですね」(古田先生、以下同)

まだまだ警戒は必要、新型コロナ感染症

「新型コロナの患者数も、インフルエンザほどではありませんが、増加中です。今、主流となっているNB.1.8.1株(ニンバス)は、オミクロン株から派生した変異株。感染力がやや上がっているものの、重症化や致死率が高くなっているというデータはありません」

 2つの感染症の予防や対策は同じで、次のとおり。

(1)手洗い・手指の消毒

 帰宅時、食事の前、トイレ後など、石けんで30秒程度ていねいに洗う。

(2)マスクの活用

 混雑した場所、体調がすぐれないときのマスクの着用。

(3)加湿と換気

 ウイルスの弱点は湿潤と高温。暖房と加湿器で室内の気温と湿度を上げ、換気の際は対角線上にある2つの窓を開けて空気を入れ替える。

(4)ワクチン接種

 重症化を防ぐには、やはりワクチンは有効。コロナワクチンは、65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人は1回あたり数千円程度で接種できる(自治体による)。

「いずれも、高熱ではなくてもすぐに医療機関を受診してください。年末年始にかけて、気を緩めずに予防に取り組んでほしいと思います」

感染症ウイルスの種類と特徴は?

インフルエンザはA型、B型が入れ替わり、広く長く流行

 インフルエンザにはA型、B型、C型があり、現在は、A型の「H1N1亜型」と「H3N2亜型(香港型)」、B型の「山形」と「ビクトリア」の系統が主流となっている。C型は一度感染すると免疫がつくため、大きな流行は起きないとされる。

 H1N1亜型は全年齢で感染が見られ、急な高熱や関節痛など典型的な症状が現れる。 

 H3N2亜型は高齢者で重症化しやすく、咳や痰などの呼吸器症状が強く出やすい。

 B型は冬の終わりから春にかけて広がりやすい。発熱は比較的穏やかで、子どもの感染が多く予想される。

 A型は変異しやすく、同じシーズンでも複数の型が入れ替わることもあり、注意が必要だ。

※写真はイメージです

新型コロナ・ニンバスの特徴は激しい喉の痛み

 コロナが大流行していた2020〜2023年に比べると感染者数は減っているが、終息はしていない。現在流行っている「NB.1.8.1株(ニンバス)」は、今年1月に発見され、世界的な広がりを見せている。日本では5月ごろから感染者が見られるようになり、現在の主流となっている。

 激しい喉の痛みが特徴だが、発熱や咳など、一般的な風邪に似た症状となっている。以前のコロナに見られた味覚障害などの後遺症は少ないといわれている。

普通の風邪と、どうやって見分ければよい?

熱がなくても、まずは受診して検査を!

 秋から春にかけては、インフルエンザや新型コロナのほかに一般的な風邪の流行もあり、初期症状だけでは区別がつきにくい。

 それぞれの症状の特徴は次のとおりなので、参考に。

〈インフルエンザ〉

・38℃以上の発熱

・強い倦怠感

・関節痛、筋肉痛

・吐き気や下痢などの胃腸系の症状が現れることも

・急激に発症する

・味覚、嗅覚障害は少ない

新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真(国立感染症研究所より)

〈新型コロナ〉

・「カミソリを飲み込んだような」「ガラスが刺さっているような」と表現される喉の痛み

・鼻水やくしゃみなど、アレルギーのような症状

・味覚、嗅覚障害はほとんど見られない

・その他(発熱、悪寒、咳、倦怠感、筋肉痛)

〈一般的な風邪〉

・主な症状は鼻水、くしゃみ

・喉の痛みは比較的軽度

・通常は、すぐに高熱にはならない

・全身症状はあまりない

インフルエンザ、新型コロナの外出禁止期間は?

感染を広げないために自宅待機を推奨

 子どもがインフルエンザを発症した場合、「発症から+5日」+「発熱後2日」の両方が満たされるまで登校などはできない。

 職場の場合、出勤制限はないが、厚生労働省のガイドラインでは「発症後5日を経過し、かつ回復してから24時間以上経過していれば感染リスクは低い」とされる。

 新型コロナは5類感染症に分類されたため、現在、外出制限は廃止。だが、「発症後+5日間は外出を控え、かつ回復後丸1日は様子を見る」ことが推奨されている。

※画像はイメージです

発症からの経過時間によって治療効果は変わる

インフルエンザも新型コロナも、早期受診が鉄則!

 インフルエンザは、初期症状が現れてから12〜48時間以内に医療機関を受診したい。

 発症直後はウイルス量が少なく、陰性になりやすいが、発症から12時間以上だと検査の正確度が高まる。

 抗インフルエンザ薬(タミフル、ゾフルーザなど)の服用は、発症から48時間以内がもっとも効果的とされる。

 新型コロナでも、重症化しやすい高齢者や基礎疾患のある人、乳幼児などは早めに受診したい。治療薬には「抗ウイルス薬」「中和抗体薬」「免疫抑制薬」があり、重症度によって使い分けられる。薬を飲むタイミングは、症状が現れてから3〜5日以内など幅がある。

 現在は公費負担が終了し、治療薬は約5000〜1万5000円となっている(自己負担割合による)。

やっぱり、ワクチンは打つべき? コロナはどうする?

重症化を防ぐためにも、ワクチン接種は重要

 インフルエンザのワクチンは、今シーズン流行が予想されているウイルス株との相性もよく、重症化や感染拡大を防ぐためにもワクチンの接種は望まれる。

 新型コロナのワクチンは、オミクロン株の2つに対応した5製品を使用。現在、国内で流行するニンバスにも効果があるとされている。65歳以上の高齢者と60歳以上で基礎疾患のある人は、接種が推奨されており、国の助成がある。それ以外の人は原則全額自己負担(約1万5000円)となる。

インフルエンザには予防内服薬があると聞いたけど、どんなもの?

「絶対に感染を避けたい」ときの予防薬

 インフルエンザにかかった子どもなどを看病するとき、受験生や介護従事者、年末年始の帰省のタイミングなどでインフルエンザの発症を絶対避けたいというときに、事前に服用する「予防内服薬(抗インフルエンザ薬)」。

 効果は約10日間で、その間は感染を防いでくれる。ワクチンとの併用も可。

 ただし、自由診療のため通常の薬より高額。また、長期服用により副作用が出ることもあり、注意が必要。

一度感染したら抗体ができて、もう大丈夫なのでは?

ウイルスは変化するもの何回も感染する可能性あり

 インフルエンザや新型コロナに感染すると、体内に抗体がつくられるため、しばらくは同じ感染症にかかるリスクは確かに低くなる。

 ただ、ウイルスは変異したり、インフルエンザはシーズン前半はA型、後半はB型と型が変わるため、何度も感染するリスクはある。

またワクチンを接種していても、ワクチンが対応していない型のウイルスが体内に入れば、感染してしまう。

 マスクや手洗いなどの基本となる感染対策で、常に予防したい。

古田みのり先生 群馬大学医学部を卒業後、臨床研修を経て群馬大学医学部附属病院脳神経内科に入局。神経変性疾患を中心とした診療・研究に従事。その後、プライマリケアに興味を持ち、現在はクリニックフォアで主に総合内科、皮膚科のプライマリケアを行っている。
教えてくれたのは…古田みのり先生 群馬大学医学部を卒業後、臨床研修を経て群馬大学医学部附属病院脳神経内科に入局。神経変性疾患を中心とした診療・研究に従事。その後、プライマリケアに興味を持ち、現在はクリニックフォアで主に総合内科、皮膚科のプライマリケアを行っている。

取材・文/佐久間真弓