※写真はイメージです

 夜中にふくらはぎが急につって、痛みで飛び起きた経験はないだろうか。

こむら返りは筋肉の誤作動

こむら返りは主にふくらはぎに多く起こりますが、足の裏やふともも、胸など、どこにでも発生します。実は身体の不調サインである可能性も」と語るのは整形外科医の北城雅照先生。

 こむら返りが起こる原因は「筋肉の誤作動」。

 骨格に付いて身体を動かす骨格筋には、筋肉の伸び縮みをコントロールする「筋紡錘(ぼうすい)」と「腱(けん)紡錘」という2つの働きがあり、これらが筋肉の伸び縮みを調整している。しかし何らかの理由でこの腱紡錘が誤作動を起こし、筋肉が縮みすぎてしまう。

 その結果、筋肉内の血管が圧迫されて血流が悪化。筋肉に必要な酸素が行き届かなくなると、酸素不足という緊急事態を知らせるためのプロスタグランジンという物質が大量に放出される……あの痛みの原因はこの物質だ。

「筋肉の収縮には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムといった電解質が関係しています。これらのバランスが崩れると、筋肉が異常に収縮し、けいれんを起こすのです。特に、運動などで汗をかいたあとや、夜間の脱水時は要注意です」(北城先生、以下同)

 中高年の女性がこむら返りを訴えるケースは少なくない。閉経による女性ホルモンの減少で血流が滞りやすく、筋肉量も減少しやすい。加齢によっても腱紡錘のセンサーは衰える。また、ダイエットによるタンパク質不足、冷えや運動不足も拍車をかける。

肋骨歩きでつり知らずの身体に

 こむら返りを繰り返す背景には、思わぬ病気が隠れていることもある。

よく足がつり、足のしびれや腰痛があるなら脊柱管狭窄(きょうさく)症や椎間板ヘルニアの可能性があります。単に頻繁に足がつるだけなら、女性の場合、貧血や初期の糖尿病、甲状腺機能低下症の有無を疑います。腎臓や肝臓に問題があるケースもあります

 では、どうすればこむら返りを防げるのか。

 シンプルに言うと「血流の改善」。そのために北城先生が日々実践してほしいと提唱するのが「肋骨(ろっこつ)立ち」だ。肋骨を引き上げるように意識して立ったり、歩くだけでいい。

「骨盤を後傾したまま立つと、太ももの後ろが常に緊張状態になり、ふくらはぎの血流が悪化、こむら返りが起こりやすくなります。骨盤を立てるイメージがわきにくいようなら、胸を前に出し、頭の真上から糸で吊られるような感覚で立ってみてください。

 こうして肋骨を引き上げるように歩くと、姿勢が自然に整い、ふくらはぎを正しく使えるようになります。その結果、血流が改善し、筋肉への酸素供給もスムーズになって、こむら返りの予防につながります」

 1日30分、いつもより歩幅を大きめにして運動量を上げて歩くことを習慣づけられたら理想的だそう。

 毎日歩くのが難しい人には北城先生考案の「こむら返りリセット法」がおすすめ。30秒程度の曲げ伸ばしで足首をやわらかくし、ふくらはぎだけでなく全身の血流がアップし、こむら返りの予防に。空いた時間にこまめに実践しよう。

突然の痛みにはかかとプッシュ

 急に足がつってしまった場合は、どうする?

慌てて患部をもむのは逆効果。ますます血行が圧迫されて痛みが増します。かかととふくらはぎはつながっているので、かかとを刺激することでふくらはぎの筋肉の過収縮がおさまります

 床に座り、かかとを押し込むようにして、つった足の甲をすねの方向に曲げる。そしてリラックスできるよう呼吸を落ち着かせていると、痛みが和らいでいく。

 こむら返り対策には食事も重要。カルシウムやマグネシウムといったミネラルの補給はもちろん、筋肉をつくるタンパク質を毎日しっかりとることが望ましい。納豆や豆腐、ツナ缶、ヨーグルトなど手軽なものを毎食1品付け足すイメージでOK。

「こむら返り対策は、すなわち血流対策。血の巡りがよくなると、健康寿命も延ばせるので、ぜひ継続してください」

水分とミネラル補給に最適!冬もおすすめは「麦茶」
「脱水」も、こむら返りを起こす大きな要因のひとつ。冬でも就寝中にはひと晩でコップ1杯分の発汗をするので、寝る前には必ずコップ1杯の水を。ただしカフェイン入りのお茶やコーヒーは利尿作用で脱水が加速し、夜間のトイレ回数も増えて睡眠の質を落とすので×。「水分とミネラルが同時にとれる麦茶がおすすめ」(北城先生)

「こむら返り」リセット法

 毎日続ければ予防に

こむら返りリセット法

手順(やり方)
 椅子に深く座り、片方の足を少し浮かせる。足首の関節を限界まで手前に曲げてから伸ばす。

効果と解説
 足首を曲げる、伸ばすを「限界まで」やることで腱紡錘にしっかり刺激が入り、センサーが正常化する。ただし動きを止めると“つり”も誘発しやすいので、動かし続けること!

《POINT》
(1)5秒かけて足首の関節を手前に限界まで曲げる
(2)限界に達したら動きを止めず、また5秒かけて限界まで伸ばす。
 左右それぞれ3回ずつ行い1セット。片足30秒ずつ、両足でたった1分でOK!

「かかとプッシュ法」

 突然のこむら返りに対策を!

かかとプッシュ法

手順(やり方)
(1)上体を起こし、こむら返りが起きた側の膝をしっかり抱える
(2)つった側と反対の手でつった足のかかとをつかむ
(3)かかとをぐいっと押し込むようにして、足首を曲げるように動かす
(4)こむら返りがおさまるまで(2)→(3)を繰り返す

《POINT》(3)のイメージがつかみにくい人は、土踏まずのあたりを握り、足の甲をすねに近づけるようにして足首の関節を曲げるとよい

北城雅照先生●整形外科医として医療法人社団円徳を牽引。再生医療やリハビリテーションに力を入れ、最新の医療技術を取り入れた治療を提供する。SNSでも積極的に発信中。

教えてくれたのは……北城雅照先生●整形外科医として医療法人社団円徳を牽引。再生医療やリハビリテーションに力を入れ、最新の医療技術を取り入れた治療を提供する。SNSでも積極的に発信中。著書に『足の名医がついにたどりついた こむら返りと手足のつりリセット法』(アスコム)がある。

北城先生の著書『足の名医がついにたどりついたこむら返りと手足のつりリセット法』(アスコム)※画像をクリックするとAmazonの商品ページにジャンプします。

取材・文/冨田ひろみ