木村拓哉

 木村拓哉が“1900円フリース"を着用したことで一躍脚光を浴びたのが、大手衣料品メーカーの『ワークマン』。

武井壮がアンバサダーに就任

きっかけは11月20日放送の『秋山ロケの地図』(テレビ東京系)で、番組ホストのロバート秋山竜次と千葉県九十九里町をロケで回ったのが木村拓哉でした。キムタクのゲスト出演は自身が番組の熱心なファンと公言していたことから、スタッフからのラブコールで実現したそうです。実に約10年ぶりのテレ東出演ということで放送前から話題になっていました」(テレビ誌関係者)

 木村拓哉が訪問した乗馬クラブで借用したのが同社の定価1900円のフリース「ダイヤフリース裏アルミ」(廃盤)と判明し、ネットが反応。「木村が着たことで廉価なフリースがハイブランドものに見える」などギャップの大きさがたちまち話題になり、放送後、フリマアプリでの転売が話題になったほか、同社のフリース商品の売り上げが3倍増になったというのだ

 同社は、夏物の販売好調のほか、武井壮がアンバサダーに就任した疲労回復を促すリカバリーウエア『MEDIHEAL(メディヒール)』が予想以上に売れ行き好調なことから、11月10日に2026年3月期の業績予想を上方修正している。

「2025−2026年秋冬だけでリカバリーウエア関連商品の販売目標を200万着としていましたが、フタを開けたら販売開始の9月から10月末の2か月ですでに当初予想を大きく上回る約160万着、28億円ほど売り上げています。同社のリカバリーウエアはシャツ、パンツが1900円、上下で3800円と、上下で1万円を超える競合商品に比べて廉価なため、価格優位性で他社を圧倒しています」(経済ジャーナリスト、以下同)

キムタク効果でブランドイメージがアップ

 今期、同社はリカバリーウエアのほかにもう一つ売れ筋商品をプッシュしているという。

『ワークマン45年ぶりの本気』と題した今年の秋冬新製品発表会で重点商品として発表されたのはリカバリーウエアのほかに、昨年16万点が完売した“着る断熱材"という触れ込みの『XShelter(エックスシェルター)』です。エックスシェルターは9月からの1週間で3万点の先行予約があったと公表されています。昨年は品薄の影響で転売ヤーが横行した反省から、通常売れ筋でも2倍程度の増産しかしてこなかったところ大増産をかけたといいます」

 2026年3月期業績予想は営業総収入が前回予想の1471億円から1550億円、営業利益が同260億円から282億円に上方修正しているが、ある市場関係者はさらなる上振れの可能性を示唆する。

注目を集めた木村拓哉着用のフリース(『秋山ロケの地図』公式Xより)

「リカバリーウエア関連商品だけで9月から10月で28億円を売り上げています。初速の数字より多少落ち着くとしても11月から3月までの5か月で単月10億円を売り上げたとしたら、単純計算で50億円のプラスになります。さらに好調の冬物のほかにエックスシェルターの販売増、キムタク効果で『機能性フリースといえば、ワークマン』というブランドイメージが定着してきている影響を考えても、もう少し上振れてもよさそうな印象です

 “やる気ワクワク、ワークマン”で知られるCMに歌手の吉幾三が長年出演していた(1989年−2016年)同社は、作業服専門のイメージが強かったが、大きく転換したのが2020年のこと。女性を取り込むべく新業態の「#ワークマン女子」を都心を中心に展開。コロナ禍でもキャンプブームの追い風もあり、着実に業績を伸ばしていった。だが、ワークマン女子は女性に限定しすぎたことで失速し、5年ほどで「Workman Colors」に店舗名を変更している。

 その後、猛暑対策や機能性商品の強化で業績の伸長が見込まれる中、偶然もたらされたキムタク特需は同社にとって福音となるか。