2004年に「プレーオフ」としてパ・リーグでスタートし、2007年にはセ・リーグでも導入された「クライマックスシリーズ(以下、CS)」。以後、ルールや名称変更を経て元スタイルに落ち着いたCSだが、その“あり方”が見直されそうだ。
早ければ2026年シーズンから新方式が採用されるとのことだが、日本プロ野球機構(NPB)の中村勝彦事務局長は「いろんな意見が出ている」と、現段階では議論されてる最中で決定案は出ていないようだ。
そんな中、12月2日配信の『スポニチアネックス』が検討段階の一案を報じている。ファイナルステージで優勝チームに与えられていた「1勝」のアドバンテージを「2勝」として、「4勝」の勝ち上がり制を「5勝制」にするというもの。
また、評論家やファンの間でも議論されるCS進出圏内の2位、3位のチームの勝率が5割を切った際にも出場権を与えるべきかだが、「CS不参加」とする案は出ておらず、むしろ現行制度の継続を訴える球団もあるのだとか。
2025年シーズンのセ・リーグは、阪神タイガースが2位の横浜DeNAベイスターズに13ゲーム差をつけて優勝。パ・リーグでは、1位の福岡ソフトバンクホークスと2位の北海道日本ハムファイターズとは4.5差ながら、3位のオリックスバファローズとは13.5差と大差がついている。
結果として日本シリーズに進出したのは、阪神とソフトバンクと順位通りだったものの、例年以上に「CS廃止論」が叫ばれたのも無理はない。それでもNPB、そして各球団のトップが議論すらしないことに違和感も覚えるがーー
右肩上がりで高騰し続ける選手の年俸
「興行として成り立っている以上、改革はすれども廃止の選択はないでしょう」とは、スポーツマーケティング事情に詳しい野球ライターの話。
2025年での平均は4905万円と年々右肩上がりで高騰し続け、30年前と比較して約4倍にも跳ね上がっているプロ野球選手の平均年俸。高額サラリーを支払う球団や親会社の中には、チームが強くなるほどに資金のやり繰りで頭を悩ませるケースも。
「以前は、大きな収入源としてテレビ局からの放映権料がありましたが、近年はレギュラーシーズンでの試合中継は稀で減収しています。変わってサブスクリプションやネット配信による収入も増えていますが、やはり大部分を支えるのが球場に足を運んでくれるお客さんによる収益です」
チケット収入はもちろん、球場内での飲食、そしてグッズ販売やスポンサー料によって1試合で2億円もの収益を得るというプロ野球の試合。ただレギュラーシーズンでは土日祝日以外、平日の試合ではどうしても減収傾向にある。
「一方で、日本シリーズ進出をかけたCSは平日でも超満員で、特にホームゲームで迎えるチームはシーズンの2倍近くの収益を見込めるといいます。首脳陣や選手、ファンはヒリヒリしますが、つまり勝ち負けがもつれるほどに、試合数が多くなるほどに“旨み”が出るの仕組みです。
阪神が早々に優勝を決めた後も、横浜と巨人による2位、3位争いが白熱した試合になったのも、是が非でもファーストステージをホームで迎えたい“カネの事情”があるから。CSは限定グッズも制作しやすく売れますからね」(前出・ライター、以下同)
12球団のうちの半分がCSに進出できる
なるほど「日本シリーズ」はNPB主催であって、そこから両球団に分配されるが、CSは球団主催のために双方の取り分が大ききくなる。日本シリーズ進出をかけた真剣勝負でもあり、経営面でも廃止の選択肢はないビジネスでもあるわけだ。
「元々、メジャーリーグのポストシーズンを参考にしたCS制度ですが、アメリカンリーグとナショナルリーグの合計30球団に対して、日本はセパ12球団。うちの半分がCSに進出できてしまう現状もプレミアム感のなさ、そして開催日程やスケジュールも“廃止論”が根強く残る一因だと思います。
それにワールドシリーズ制覇こそシーズンの目標であるMLBに対し、リーグ優勝を掲げる球団が多いプロ野球において、ファンもCS、そして日本シリーズはどこか“おまけ感”を覚えるのかも。例えば日本一達成の暁には、MLBチャンピオンとの“世界一決定戦”が待っている、との新方式をまとめられたら選手にファン、経営面においても球団のモチベーションも向上するとは思いますが(笑)」
NPBにはCSを続ける以上は、是非とも選手やファンが納得するあり方を議論してもらいたい。
