ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)公式サイトより

 12月2日放送の火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第9話。来週の最終回に向けて海老原勝男(竹内涼真)と鮎美(夏帆)の関係が気になる中、浮き彫りになったのは、職場の働きづらさと価値観の断絶だった。<※ネタバレあり>

“思いやりのおにぎり”はNG

 同作は、“料理は女が作って当たり前!”な亭主関白思考の勝男(竹内)が、恋人の鮎美(夏帆)との別れを機に、自分自身を見つめ直す成長&再生のコメディーだ。

「今回は新プロジェクトのリーダーに抜擢された勝男が、同僚の柳沢(濱尾ノリタカ)とタッグを組むことになるのですが、事あるごとに衝突してしまいます」(芸能ジャーナリスト、以下同)

 たとえば、こんな場面だ。

「勝男は店舗アンケートについて柳沢に『ユーザーの直接の意見が抜けている』と指摘。柳沢は『店舗に電話したがつながらなかった』と返答し、『数字があれば十分』と反発。勝男が『市場の声が要だから答えてくれた方の想いは無駄にしたくない』と答えると、柳沢はプライベートを優先させたいのでしょう、鳴っていたスマホをいじりながら生返事をしていました」

 軋轢は続いた。

「アンケート100人分では不十分として、勝男が現場確認を求めると柳沢は『いまどきそんなやり方してませんよ』と強く反発。さらに柳沢は『俺がどれだけ時間かけた資料か考えましたか?』と質問。勝男が『より良いものにするために……』と言いかけると、柳沢は『そうやってより良いものとか言って、人の苦労なんて想像してないんですよ』と遮っていました」

 上司の高田(平原テツ)は勝男に「飲みにでも誘ってみたら?」と助言。そこで勝男が柳沢を誘うと「それ、強制ですか?」「仕事ってことですか?」と拒否。後日、おにぎりを握って「良かったら食べて」とやさしく勧めると、思わぬ事態へ。

「高田に呼ばれた勝男は、柳沢からパワハラの訴えを起こされたことを知ります。『無理やり飲みに誘った』『おにぎりを強要した』との内容に、勝男は『無理やりじゃない』『いやいやいやいやいや。そんなことはしてないですよ』と困惑するも、高田は『すまん。そもそも俺が“飲みにでも誘えば?”って言ったばっかりに』と頭を下げ、出勤停止を言い渡したのです」

 そして高田は静かに呟く。

「難しいよなぁ。価値観ってさ、いつの間にか変わってる。それについていくだけで必死でさ……」

 労働問題に詳しいライターはこう話す。

最近の若者、特にZ世代は、コンプライアンス意識が非常に高い。感じた側が『これはハラスメントだ!』とカードを切ると、もはや相手に拒否権はありません。昭和世代の『信頼構築のための飲み』や『思いやりのおにぎり』も、今は『強制』『押しつけ』と解釈される時代です。

 怖いのは、上司たちも新しい価値観についていくだけで精一杯になり、トラブル回避を優先するあまり、本来の部下を育てる役割を果たしていない点。ただ誰が悪いわけではなく、時代が変わってしまったということ。哀しい令和の現実を描いたドラマだとも言えます」

 SNS上でも《おにハラなんて悲しすぎる》《どうやってコミュニケーションをとれっていうんだ》と嘆きの声が。アップデートは簡単ではないのだ。